無職転生 感想 異世界転生設定をシナリオに活かしきっている超秀作
無職転生〜異世界行ったら本気出す〜
というアニメを見ました!
これは…面白い。。。
ただ…タイトルどうしてこうしたんだっ勿体ねー!絶対タイトルで敬遠されてるだろ!と思ってしまうレベル。だって明らかに駄作の臭いがすごくない?
しかも内容と全然イメージ違うんだよ!タイトルって大事だよ!!
実は、異世界ものがあまり好きでない私なんです。理由は異世界転生という設定の時点である程度の展開が読めてしまうから。また、ハーレム展開になりやすいから。私は女なので、なろう系やラノベ原作でありがちな、ハーレム展開はあまり好きではないのですよ。
しかし無職転生は、ストーリー、テンポ、作画すべてにおいてかなり高レベル。アニメとしての完成度も高いし、脚本もすごくいいのできっと原作もかなり面白いのでしょう。ハーレムも極端ではないし(タイトルほどコテコテのラノベっぽくない展開なんですよね〜。)伏線やギミック、謎の貼り方も素晴らしいです。
あえていうならばキャラクターは弱いかな。しかし、私好みですね。私はキャラクター設定をコテコテに固めてくるよりも、真理や行動でキャラクターを描いてくる方が好きなので。
ざっくりあらすじ。
いじめが原因でヒキニートとなった40男性が交通事故で死亡→異世界で意識を持ったまま赤ちゃんとして転生→魔法使える世界ということで40の知能を活かし魔法を鍛錬しそこそこ強くなる→魔法災害に巻き込まれ知らない土地に飛ばされ、家族と再会するための旅に出る
ポイントは、40の思考がありつつ、赤ちゃんからスタートということ。前世ヒキニートの記憶もあるわけです。つまり、人生をチート使ってやり直している状態なんだけど、ヒキニートだった根性は成長していないままなんですね。
この物語が面白いのは、ヒキニートっていう根本のダメな部分っていうのは全然変わっていなくて、異世界転生をチートで行ったにもかかわらず、うまくいかないこともあるってところです。本人がヒキニート根性を改めない限り、乗り越えられない壁が出てくるんですね。
つまり、物語のメッセージ性が非常に明確であるというところが素晴らしいと思います。
さらに面白いのが、謎の貼り方。
異世界でヒロインを救う!(SAO)王様になる!(ノーゲームノーライフ、転スラ)とか明確な目標がないまま、主人公はただ転生します。
で、ラッキーチートじゃん!ってことで人生始まるわけですよね。
じゃあ物語として何がしたいんだ?この話の目的はなんなんだ?ってなるんですけど、それが有耶無耶のまま、アニメ前半部の話が進んでいきます。
でもだんだん(アニメ中盤〜)異世界が思ったよりも素晴らしい世界ではなく、魔力災害や、貴族の権力抗争、がありそうだぞ?という雰囲気が出てくるんですね。
そして後半!ついに問題が顕著化します。異世界の歪められた歴史と、主人公の前に現れ助言をしていく「人神」。そしてその存在をなぜか知っていて、敵対視する強者(竜なんとか…)
で、ここまでくると、異世界ってなんか問題を孕んでいてそれを解決する=主人公なんだな。転生したのはそのためなんだな。とやっとわかるんですよ。
それでね、あーうまいな、と思ったのが、転生させて世界(他人)を救うヒーローとなる予定の主人公の前世(意識)は「ヒキニート」だってこと。作者の主張したいヒキニートの人間的成長を非常に描きやすい設定なのがわかりますか?
ヒキニートってことは他人(親)に助けられ、自分は世界から逃げていたわけですよ。
それがどうです?異世界では他人を助け、世界に向き合うわけです。
いくら転生チートとはいえ、主人公の精神的成長なしにして事は成し遂げられないでしょう。
うーん、設定がいいね。異世界の使い方が本当秀逸。異世界でなければならなかった理由の納得感が半端ないんです。
作者は相当賢いでしょうね。
全体の感想はこんなもんなんですが、私が感動した場面の話を少し。
ロキシー(主人公ルディの魔法の師匠)が村を出て、魔法使いの旅人として放浪している理由の説明の話があるんです。けっこう終盤の方ね。ロキシーの登場はアニメ序盤。にもかかわらず、この説明会は終盤です。長い伏線回収ですよね。
この、無職転生は非常に良く作られていますが「泣くような事はないだろうなー」と私は思っていました。
しかし、私はロキシーの話で泣きました。
ロキシーが出身の村を出て一人で旅しているのは、ロキシーの一族はテレパシーが使える一族(魔族?)です。しかしロキシーは子供の時からテレパシーが使えず口で会話するしか意思疎通ができなかったのです!(そんなの序盤で全然わからないんです。なぜならロキシーの出身村とは遠く離れた大陸のルディの家庭教師として現れるから、ロキシー一族のことを、視聴者も、ルディも全然知らないからです)
村はいつも静かで、周りみんな、両親ですらテレパスで会話しているのに自分だけはそれができない。両親はもちろんロキシーのことを責めたりしないし、言語を教えて意思疎通するのですが、ロキシーと同年代の子供たち、そしてその親からの異物を見るような視線に耐えられずロキシーは村を出るんですね。
私はこれはうまく書いている、と思いました。
つまり現実世界に置き換えればロキシーは発達障害のようなものなんですね。みんな当たり前にできることができないわけですから。しかしボォーッとこのアニメを見ていてもピンとくる人は少ない。このロキシーの過去話で暗喩的に示されている事は、今あまり表立って取り上げてはならない深い問題だと思います。
しかし現実世界を生きる私たちはもちろんテレパスを使えないから、これを、障害だとまでは認識せず、ロキシーがかわいそうだと思う程度です。しかしちゃんと見ていれば言いたい事はわかる。
そして私が涙したのは、その苦悩をわかってあげられずなんと声をかけていいのかわからない親の描写でした。
そしてロキシーは、障害を持った自分を子供に持つせいで両親までもが差別されているのではないかと危惧してもっと辛くなるんですね。
自分が生きていることは両親に対して迷惑なのではないかとまで思うのです。
実際ロキシーの両親はそんな事は全く思っていない。
けれど、両者はスレ違い、ロキシーは両親に迷惑をかけないように村を出る。両親はロキシーの苦悩をわかってあげられない負い目から引き止められない。
このすれ違いとても切ないなって思います。
両親の気持ちは、例えば友人と同じ大学を受験して自分だけ受かった時、相手になんと声をかければいいのかわからないのと似てますよね。受かってしまった自分の立場では、何を言っても慰めにならないかもしれないから。
最後には、ロキシーは久しぶりに実家に戻って、両親は自分を疎ましく思っていないとわかり、仲直りすることができます。
この、一見普通のすれ違いエピソードですがよく考えると深く難しい問題をうまく煙に巻くように間接的に訴えてきているんですよね。
素晴らしいとしか、いえません。エモい、ってやつです。
ボーッと見ていても、なんだか言いたい事はわかる、けど本質のところにボカシが入っている。みたいなとても芸術的、かつアニメという媒体を活かしきった表現力。
このロキシーの過去話はなんだか自然と涙が湧き出てくるように泣いてしまいました。
そして私がこの作者、好きだなーと思ったのが、メインヒロインが年上であること!
ハーレム系あるあるの、ロリ・妹・年下に安易に逃げなかったこと!
つーかこれに関しては作者と私の好みが一致しただけでしょうけども。
あとね、ヒロインからしたら「完璧」に見える年下のルディに対し(そりゃそうなんだけどね、チートしてるから)年上であるにも関わらず愛している男と平等レベルに達していないから距離を置く、という女心の描写がなかなか人間心理の理解が深いなと感じました。気高い考えですよね。むしろ男らしいまである。
そしてそれに対し安易に「捨てられた」と感じてしまうヒキニートというシナリオはとても秀逸です。人間心理に関しては齢40歳の経験がありますが、元はヒキニート、つまり、恋愛経験ゼロのDTなのが、うまく障害になっています!設定がシナリオに活きている、とはこのこと。ルディはつまり正真正銘、40年以上拗らせてきた童貞卒業した相手に捨てられた(と勘違いする)わけですから、落ち込みヒキニートマインドに戻る…というのはめちゃくみゃ説得力のある流れ。うーまーい!
作者相当頭いいよね。
2期あるようなのでかなり期待して待ちます!
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