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フォントサイズの単位のお話

フォントの単位についてよく知っておくことはデザインをする上で非常に大事なことである。だがその前に、まず「フォントサイズ」とはどこからどこまでの大きさのことなのか整理しておこう。

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<和文フォントの場合>
日本語のフォントは「仮想ボディ」と呼ばれる正方形の枠の中にデザインされている。故に大きさは、上図の矢印の距離、つまり正方形の1辺の長さを指す。

<欧文フォントの場合>
アルファベットは日本語と異なり、以下の5本の線を基準にして作られている。

① アクセント記号を入れるための線で、決まった名称はない。
アセンダーライン...大文字の高さを決める線。大文字のMの大きさが基になっている。
xハイトライン...小文字の高さを決める線。小文字のxの大きさが基になっている。
ベースライン...大文字、小文字の「床」を指す。ほとんどの文字はここから上に作られる。
ディセンダーライン...小文字のgやj、pなどのベースラインよりも下に飛び出る文字はここが底になる。

ちなみに線と線の間の空間にも名前があり、①②間は「内部レディング」、②③間は「アセンダー」、③④間は「xハイト」、④⑤間は「ディセンダー」と呼ばれる。

アルファベットの大きさは上図の②〜⑤までの距離を指す。したがって和文と欧文のフォントが同じ大きさでも違って見えるのは当然である。

※ 以下、数学的な内容を含みます。

Pt(ポイント)

Ptを理解するためにはinch(インチ)を理解しておく必要がある。

1 inch = 25.4 mm。

ディスプレイに用いる場合はその対角線の長さを指す。

なので、Mac book pro で13インチを使っている人はこの式を使えば、
13 inch = 25.4 * 13 = 330.2 mmとわかる。
よって、Mac book pro 13インチの対角線の長さは33cmということになる。
33cmのものを測りたいけど定規がないときは Mac book pro 13インチを使えば良いだろう。ちなみに15インチは約38cm。

また、

1 ptは1 inch( = 25.4 mm)を72分の1した絶対的なサイズのことである。
1 pt = 1 / 72 inch。

Wordの初期設定では10.5 pt。Illustratorでは12 pt。
また上記より、1 pt = 25.4 / 72 mm ≒ 0.3528 mm。

ところで、我々が普段ポイントと読んでいるのは、正式名称ではDTPポイントのことである。
DTPとはDesk Top on Publishing の略で、デスクトップ上で組版を行う作業のことを言う。現代のグラフィックデザインはこれが主流となっている。
 
実はPt (ポイント)には「DTPポイント」「アメリカンポイント」「ディドポイント」「フルエニポイント」の4種類が存在する。
これらは成立した時期や国が異なり、当然大きさも違っている。DTPポイントについては先ほど説明した通り、 1 pt = 1 / 72 inch ≒ 0.3528 mm。

アメリカンポイントは「ジョンソンパイカの 1 / 12 」と定められている。ここでパイカについて説明する。


パイカ(pc)

欧文活字の大きさを表す単位で、日本ではあまり馴染みがないが、

1 pc = 1 / 6 inch = 12 pt。

ポイントと同じくインチを基準とした絶対的なサイズである。イラレの初期設定は1 pc。

ジョンソンパイカとは「83パイカを350 mm とする」ことが定義とされている。つまり、これに従うと、
1 pc = 350 / 83 mm ≒ 4.2168 mm。

したがって、アメリカンポイントはジョンソンパイカの 1 / 12 なので、
1アメリカンポイント= 4.2168 / 12 mm ≒ 0.3514 mm。

ディドポイント、フルエニポイントについては全く使わないので詳細については割愛するが、前者はフランスで考案された世界で2番目に古いポイントシステムで、1ディドポイント ≒ 0.3759 mm。後者もフランスで考案されたポイントシステムで、こちらは世界最古のものとなっている。1フルエニポイント ≒ 0.3478 mm。

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Px(ピクセル)

1pxは1画素、または1dotのことである。慣習としてモニター上ではピクセル、印刷物にはドットを用いる。pxのサイズはppi(dpi)によって変わる(ppi=pixel per inch / dpi= dot per inch)。

一般的にAdobeのソフトなどで出力できる、スクリーンの解像度は72 ppiで、これは1 inchに72個のピクセル(画素)が入っていることを意味する。
つまり72 ppiのスクリーン上では 1 px = 1 / 72 inch。

では一般的に 1 pt = 1 px が成り立つのか?と言われればそうではない。
実はMacbook pro 13インチ は 113 ppi、WindowsOSは 96 ppi の解像度を持つので、解像度をnとして一般化すると、

1 inch = n px
 ⇔ 1 / 72 inch = n / 72 px (∵ 両辺を72で割った)
 ⇔ 1 pt = n / 72 px 
 ⇔ 1 px = 72 / n pt (∵ 両辺に72/nをかけた)
1 pt = 25.4 / 72 mm なので、
1 px = (72 / n) * (25.4 / 72)
 = 25.4 / n mm

これを基に計算すると、Mac book proの場合、1 pt ≒ 1.57 px
同様にWindowsOSでは、1 pt ≒ 1.33 px

つまり、pxは見る画面の大きさによって変わる、相対的なサイズのことをいう。したがって、

1 px = 72 / (解像度) pt = 25.4 / (解像度) mm 

が成り立つ。

ただし、Illustrator上ではアートボード上の解像度は一定なので 1 pt = 1 px が成り立つ。また印刷物には pt、Webやアプリのデザインにはpx、と使い分けるのが無難だろう。


級(Q)・歯(H)・号

級は写植における日本独自の文字サイズで、

1級=0.25 mm。

1 mm の4分の1の大きさなのでQuarter(4分の1)の頭文字を取って級と呼ばれるようになった。単にQと書くこともある。

歯(H)は和文写植機の歯車の送り量に由来する。 これは歯車の歯の1つの大きさを表し、文字サイズと同じシステムで働く。つまり1歯 = 0.25 mmである。

写植時代の文化を踏襲するのであれば、文字サイズは級、文字送りは歯を用いるのがマナーと言える。

1 Q (級)= 1 歯 (H)= 0.25 mm ≒  0.71 pt。


対して号は写植よりもさらに昔、活版印刷の時代に使われていた単位である。活版印刷は、直方体の鉛に掘られた文字を並べそれをスタンプのように押し出す印刷方法なので、打てる文字の大きさは決まっている。

大きさは初号〜八号の9種類あり、初号、一号、三号の大きさはそれぞれ約42pt、約27.5pt、約16ptである。

・初号、二号、五号、七号
・一号、四号
・三号、六号、八号
のそれぞれについては公比 1 / 2 の等比数列が成り立つので、初項さえわかっていればあとは数列の計算で出せるというシステムになっている。

ちなみにWordの初期設定が10.5ptなのは、日本で公文書の作成に使われていたフォントのサイズが5号で、これがおよそ10.5ptであることに起因する。この大きさは1962年にJISで「フォントの暫定的な基準」として定められている。


em・ex

CSSの font-sizeによく使われる。基準となる文字に対してどれだけ大きくするかという相対的なサイズのことである。
12 pt = 1 em であり、14級 = 1 em でもある。つまり 1 em = 100 % と考えたら良い。

冒頭で前述した通り、日本語のフォントはすべて正方形の仮想ボディの中に収まるよう設計されるが、アルファベットは文字によってそれが正方形の場合もあれば長方形の場合もある。そこで最も正方形に近い大文字のMを基準と定めた。emのeはラテン語でmをemと表記することからきている。

また、exは小文字のxを囲む正方形を基準とし、Mの半分の大きさである。つまり、1 em = 0.5 ex である。

GoogleはWebページのフォントサイズの基準を16pxと推奨している。この大きさでfont-sizeの値を2emにすると、32pxで表示される。


まとめ

■ 1 inch = 25.4 mm。ディスプレイのインチは斜めの長さを指す。

■ ptはインチを基準とした絶対的なサイズ。DTPポイントとも言う。1 pt = 1 / 72 inch ≒ 0.3528 mm。

■ アメリカンポイントはアメリカで考案された、ポイントシステムの一つ。1アメリカンポイント = 350 mm / 83 pc / 12 ≒ 0.3514 mm。

■ pcも同様に、インチを基準とした絶対的なサイズで、1 pc = 1 / 6 inch = 12 pt ≒ 4.2 mm。

■ pxは見る画面の解像度によって変わる相対的なサイズ。1 px = 72 / (解像度) pt = 25.4 / (解像度) mm。

■ 級(Q)と歯(H)はどちらも日本独自で定められた絶対的なサイズ。1 級(Q) = 1 歯(H) = 0.25 mm。

■ 号は9種類しか存在しない絶対的なサイズ。初号 = 約42pt、五号 = 約10.5pt。

■ em、exは基準となる文字の大きさに対する比率。14 ptの活字での1 emは 14 ptである。1 em = 0.5 ex。


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