見出し画像

フィギュアスケートから学ぶ『学校教育進化』へのヒント

学校教育の変化が求められています。というより、進化するビッグチャンスが来ていると捉える方が適切かもしれません。

スポーツ界に目を向けると、ここ10年で目覚ましい進化を遂げたスポーツの1つにフィギュアスケートがあります。この記事では、フィギュアスケートがなぜこんなにも急速に進化したのか、そこから学校教育界は何を学べるのかを考察していきます。

フィギュアスケートの進化

羽生結弦選手、浅田真央選手ら日本人選手の世界での活躍もあり、国内で人気の高いスポーツであるフィギュアスケート。国内人気スポーツアンケートでは常にトップ争いをしているスポーツにも関わらず、あまりルールが知られておらず「マイナースポーツ」の域を脱せないという実情も抱えています。

フィギュアスケートは、音楽に合わせてジャンプやスピンなどのスキルを披露して、得点を重ねていく競技です。それぞれの技に「基礎点」があり、実施するだけで加点されます。さらに「出来ばえ点」が付くので、成功すれば加点、失敗すれば減点というシンプルな得点システムになっています。

また、競技は「ショートプログラム」と「フリースケーティング」の2つの演技の合計点で競われます。要するに「課題曲」と「自由曲」のようなものです。

ショートプログラム:指定された回数の技だけで演技する
フリースケーティング:より緩い回数制限で自由度の高い演技をする

このような条件の中でより高い得点を目指すには、より基礎点の高い技をより正確に決めることを追求していくスポーツになります。

次に、過去のオリンピックでの結果を比較してみます。

画像1

前述の通り、2010年のバンクーバーオリンピック以降、10年間でメダリストの得点が飛躍的に向上していることがわかります(ちなみに2010銅:高橋大輔選手、2014金・2018金:羽生結弦選手、2018銀:宇野昌磨選手です)。
なぜこんなに得点を積み重ねることができるようになったのでしょうか?

フィギュアスケート進化のワケ

答えは非常にシンプルです。
それは、「ジャンプスキルで勝負するようになったから」です。

フィギュアスケートにとって「ジャンプ」は生命線です。ジャンプが成功したら高得点が出る、転倒したら負けるというのは紛れもない事実であり、視聴者にも最もわかりやすい魅力の1つでしょう。フィギュアスケートには、踏切りの違いなどから6種類のジャンプがあり、それぞれに異なる基礎点が付けられています。さらに当然ながら同じ踏切りでも「3回転」か「4回転」かでは、まるで違う基礎点になっています。

実は、2006年や2010年のころのメダリストたちの間は、『4回転ジャンプを跳ぶか跳ばないか論争』というものがありました。

「4回転ジャンプは高得点が狙えるが失敗のリスクも大きい。ジャンプで得点を稼げないのは致命的だから、確実な3回転ジャンプで加点して、あとはスピンや表現力で勝負するか… でも彼が4回転を決めてしまったら到底追い付かない… 俺は跳ぶか、跳ばないか… 」

という駆け引きが起こっていたのです。実際2010年バンクーバー大会では、高橋大輔選手は4回転ジャンプに果敢に挑むも失敗し、銅メダルとなりました。一方でその時の金メダリストになったライサチェック選手は4回転を回避しての優勝だったのです。

これには様々な意見があったのですが、もちろん勝負の世界なので誰も反論はできません。したがってそれ以降、4回転を跳んで勝てば誰もが納得すると考え、新興勢力が続々と4回転ジャンプを習得していったのです。その中に日本の羽生選手や宇野選手もいました。

そうして10年経った今、「4回転を跳ぶか跳ばないか」が勝負の分かれ目だった競技が、「4回転を何種類跳べるか」という次元にまで来ています。すでに羽生選手も宇野選手も6種類のうち3種類のジャンプを実践で成功させています。海外のライバルには5種類習得している選手もいます。このような”ジャンプ合戦”が、得点を跳ね上げる結果につながったのです。

学校教育へのヒント

フィギュアスケートの進化の理由は「技術の進歩」だと述べてきました。これは正直あらゆる分野でこれまでも起こってきたことに違いありません。では、なぜフィギュアスケートはこのような大改革になったのでしょうか?

それは、勝敗に最も影響を及ぼす技術の進歩だったからです。

「ジャンプ」という勝敗に最も直結する技術が飛躍的に進歩したことにより、業界全体の流れが変わったのです。高橋大輔選手は当時「世界一のステップと表現力」を称されていました。しかし、ステップと表現力をいくら磨いても、ジャンプが失敗すれば負けてしまう世界です。ジャンプの重要性が再び見直されたとき、フィギュアスケートは大きな進化を遂げました。


では、学校教育における「ジャンプ」の位置には何が来るのでしょうか?

それは、「授業」です。
そして、「ジャンプの成功」は「子供が点数をとること」です。

学校教育が目指すべき目標は2つ、
①子供の「認知能力」の育成
②子供の「非認知能力」の育成

です。

近年「②非認知能力」の重要性が注目されています。コミュニケーションスキルやレジリエンスといったものです。ここをどのように育むか、教育界全体が工夫を凝らしているところだと思います。

しかし、自由競争社会で”勝敗”を決めるものは「①認知能力」です。受験、資格、就職…すべての『選抜システム』において、テストとなる課題の点数がよりよい者が勝ち残る社会で私たちは生きています。

つまり、フィギュアスケートに例えれば、

①「認知能力」 = ジャンプ
②「非認知能力」= スピン・ステップ・表現力

になるということです。非認知能力もなくてはならないスキルであることに間違いはないのですが、結局は認知能力(テストで点数をとれる力)の差が競争の結果を左右していることも紛れもない事実です。

2010年以降フィギュアスケートは、「ジャンプ」と「それ以外のスキル」どちらを重視するかという問いに「ジャンプ」という回答を選んだことで大躍進を遂げました。今の学校教育には、同じ問いが突き付けられていると思います。

非認知能力の重要性は全く否定しません。でもそれ以上に、認知能力の向上を上位目標にする流れができたときに、学校教育も進化できると思います。学力格差、学習の遅れが心配されている今だからこそ、活動の表面的な楽しさではなく、理解したか、定着したかを徹底的に追求することが必要なんだと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?