マカレル

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分かりません

ドクター阿修羅と六ヶ月ぶりの再会。マイクでドクターが夫の名を呼ぶ。待合からいざ診察室へ。夫、椅子から立ち上がるのに一度で上がりきらず腰を小さくバウンドさせている。「ゆっくりね」と声をかけ、奥の診察室に目をやると先生に立ち上がる気配あり。小走りで診察室を覗いて「ゆっくりですけど歩いてきますからちょっとお待ちを」                ドクター「え!」           わたし「歩いてきます。杖と装具つけてますけど」やはりひどい出血だったのかと改めて思う。 脳神経外科

    • たぶん回峰行

      地上60階で働いている。一昨年、ふと思いつきで出勤した日にちを数えてみたことがある。何度数えても数は違ったけれど、おおよそ千日だった。 千日を少し越えた頃のこと。ご褒美みたいなことがあった。一見好ましいことではない。自分の脳の中を見た。能の舞台のように神経の柱が天井と舞台を支えていた。いや、見たその時にはオリンポスの神殿みたいだと思ったのだ。下方からは満月が(これは小脳なのだが)舞台や神殿をキラキラと照らしていた。 人間の脳の中には、神を祀る台座があるのだという。「あるの

      • 清掃員である

        エレベーターのパネルとボタンを念入りと言われている。化学雑巾で60の凹凸をぐりぐりする。60の丸の中なんかにコロナがコロニーを作りそうだ。拭き終わった途端上昇して63階でとまる。住人の東さんが乗り込んできて「下いい?」と言いながら手を潜り込ませて60を押す。今日外暑い?暑いですね。60階到着。ここに住んでる人が地上に出るにはこれとまた別の、エントランスの外にあるエレベーターに乗らなければならない。59階から下に何があるのかまだよく知らない。1階から10階までが病院であることは

      分かりません