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小澤征爾さんとの遭遇【回想】

以前は冬になるとよく家族でスキーに行っていた。家内と2人の頃は長野や東北、子供が幼い頃は北海道へ行くことが多かった。「私をスキーに連れてって」の舞台となったゲレンデの志賀高原へも神戸からシュプール号に乗って出掛けた。

映画のロケ地は焼額のゲレンデで若い人たちが多く賑やかな印象があるが、泊まったのはそのもう一つ奥の奥志賀高原。ゲレンデは繋がっていて行き来ができるので、どこに泊まってもあちらこちらのゲレンデを楽しむことができたのはとても良かった。

奥志賀高原では奥志賀高原ホテルに宿泊した。スキーから帰ってくると、大きな暖炉を囲んで休憩ができるようなクラシックなスタイルでとても落ち着いたホテルだった。当時は屋内プールがあったので、スキー後に水着持参で泳いでいた。他には誰もいなかったように思う。すると、何故か服を着たままの小澤征爾さんがホテルの従業員らしき人とプールサイドを歩いていた。少し離れたプールの中からでも、小澤さんはひと目ですぐにその人と分かる独特な雰囲気があった。

夕食時にホテルのレストランで、スタッフに「小澤さんもこちらでお食事をされるのですか?」と聞いてみたところ、「別室をご使用されます。」との返事だった。実は同じ時に見かけた千葉真一さん一行は我々と同じ空間で食事をされていたので、小澤征爾さんは同じ著名人でも別格なのだという印象を持った。

クラシックに特に興味があるわけでもない凡人が、世界的に有名なマエストロにたまたま冬のスキーリゾートで遭遇したというだけ話である。ただ、泳ぐ様子もない服を着たままのマエストロが、何故あの時わざわざ屋内プールのプールサイドを歩いていたのかは、いまだに謎のままである。

小澤さんのご逝去の報に触れて、人生の一瞬を横切った昔のエピソードが思い出された。小澤征爾さんのご冥福をお祈りします。

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