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【詩】青蛙のうた【なん歌】

青蛙のうた

黒雲きらめく星ぼし喰らい 天は我が物と横たわる
大地が轟き君が現れ 白銀の尾優雅に靡かせて 葉脈のよう駆け抜けた
生きている 僕ら生きている 雨が踊る音のなか
青蛙は雷に恋をした

ぐえこぎこぎこくるるぎこぐえこぎこがこぎいこぎこきゅるるぐえこぎいこがこ
ウシガエルヌマガエルウシウシヌマヌマダルマヌマダルマアマアオアマアマアオ
天まで届けと連なった 蛙たちのてっぺんに立ち
頭上たかあくたかく 蓮の葉ささげ
しかし雷やって来ない 朝露の首飾り目もくれない

ぐえこぎこぎこくるるぎこぐえこぎこがこぎいこぎこきゅるるぐえこぎいこがこ
ウシガエルヌマガエルウシウシヌマヌマダルマヌマダルマアマアオアマアマアオ
来る日も来る日も蛙たち 仲間のために連なった
なぜならばかがつくほど正直で 愚かしいほど純粋な
青蛙がみな好きだったから

そうして雷あらわれぬまま 季節は流れ 秋になり
蛙たちは樹になった 雷の棲む天届く 大きな大きな樹になった
おもいきり伸ばした掌のよう 尖った葉っぱの大きな樹
楓と呼ばれたがそうじゃない 世界にひとつの大きな樹

冬のこと ふいに目覚めた黒雲が オリオン座をひと呑みし
草木たちを揶揄いに 大地の側まで降りて来た

ぐえこぎこぎこくるるぎこぐえこぎこがこぎいこぎこきゅるるぐえこぎいこがこ
ウシガエルヌマガエルウシウシヌマヌマダルマヌマダルマアマアオアマアマアオ

今日はたのしい お祭りだ 無礼講でどんちゃん騒ぎ
雨が葉を打ち鳴らし 風が幹を乱れ弾き
葉は落ち幹折れ満身創痍で 大樹は嵐のなか踊り続けた

にわかまばゆい静寂が荒れた大地を包み込み 乱暴者は消え去った
大樹のてっぺん やおら灯った鮮やかな光
雷は呼んでいた 鋭い声で青蛙を
一筋の光を差し伸べ 呼んでいた 大樹に眠る愛しいたましいを

ぐえこぎこぎこくるるぎこぐえこぎこがこぎいこぎこきゅるるぐえこぎいこがこ
ウシガエルヌマガエルウシウシヌマヌマダルマヌマダルマアマアオアマアマアオ

のらりくらり春が目覚め 大樹へ灯る白い花
はらはら散るたび ぷしゃんぽしゃん泡玉産まれ
陽光の祝福浴びながら 天へゆっくり舞い上がる
ぱしゃん ぴしゃん 弾けたら 世界へ光の粒が降り
銀の蛙は澄んだ夜空を またたきながら泳いでく——

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