令和3年司法試験・商法設問2・基本知識

令和3年司法試験・商法設問2・基本知識
【会社と人物】
A=甲社代表取締役
C=Aの父親、甲社の元代表取締役
D=Aの祖母、Cの母親
【時系列―番号は問題文に沿う】
8、甲社設立時の株主と株式数はC=10万株、D=20万株、仕入れ先企業・丙社=10万株。
平成24年6月の定時株主総会の決議で10万株(本件株式)が発行、名義人はA
9、Aは、Cの要請で甲社を継ぐことに。大学卒業後、就職した会社をやめ、甲社に入社。前記8の株主総会でAを甲社取締役に選任し、本件株式をAに発行することにした。本件株式の手続はCの指示の基づいて甲社総務部が進め、Aの記名押印もAが総務部に預けていた印章を総務部用いた。払込金額2000万円はCが出す。
10、本件株式の剰余金配当はC名義の銀行預金振り込まれ、議決権行使もCが行った。Cは平成27年6月、取締役を退任し、以後、Aが代表取締役に就任したが、本件株式の事務は以前と同様な取扱いがなされた。
11、Cは本件連帯保証契約の事を知り、Aに代表取締役を退任し、Cが就任することを要求したが、Aは拒否した。そこでCは本件株式の株主の地位はCに帰属すると主張したが、Aは自己に帰属すると主張した。
【設問2】
CがAに対して本件株式にかかる株主の地位の確認を求める訴えを起こす。Cの主張と当否を論ぜよ。
【基礎知識】
1、新株の第三者割当て
(募集事項の決定)
199条
1項=株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式(当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式をいう。以下この節において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。
一 募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び数。以下この節において同じ。)
二 募集株式の払込金額(募集株式一株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいう。以下この節において同じ。)又はその算定方法
三 金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額
四 募集株式と引換えにする金銭の払込み又は前号の財産の給付の期日又はその期間
五 株式を発行するときは、増加する資本金及び資本準備金に関する事項
2項=前項各号に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
3項=第一項第二号の払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、前項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
4項=種類株式発行会社において、第一項第一号の募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該種類の株式に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
第5=募集事項は、第一項の募集ごとに、均等に定めなければならない。
語呂1→いきいき(199)と募集株式発行
309条
(株主総会の決議)
1項=株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
2項=前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
五 199条第二項、200条第一項、202条第三項第四号、204条第二項及び205条第二項の株主総会
3項以下略
語呂→株主総会騒ぐ(309)ことになっても、過半数で決着。
判例
★株式の株主の地位は名義人かそれとも実質的な出資者か
判例=最判昭和42年11月17日→旭洋物産株式発行事件
 被告・K会社は、昭和32年3月に募集株式を新規発行。原告・S氏は、新株の一部の株主であり、被告・K会社に発行を求めた。しかし、原告・S氏と訴外O氏は、合意の上、実質的にはO氏が、名義的には原告・S氏が、本件各株式の引受及び払込をなすこととした。そして、原告・S氏は、右の合意の趣旨に沿つて、単に名義のみを原告・S氏とする意思で、本件各株式の引受及び払込をし、且つ払込の資金は訴外O氏が出した。この経緯から被告・K会社は発行を拒否し、紛争に。
【要旨】 〔最高裁判所民事判例集〕
他人の承諾を得てその名義を用いて株式の引受がされた場合においては、名義貸与者ではなく、実質上の引受人が株主となるものと解すべきである。
以上

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?