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地歴うんちく判例学習・民法1=公序良俗違反(1)

地歴うんちく判例学習・民法1=公序良俗違反(1)
最判昭和61年11月20日(判例百選Ⅰ-12)
【キーワード】
大学受験で人気教授の愛人への遺産分与事案
【地歴うんちく】
 『世界史の傾向と対策』(旺文社)という本をご存じだろうか。終戦後、新制大学の発足を受けて、受験参考書を刊行していた旺文社が、大学受験の参考書として「傾向と対策」シリーズを発刊した。当時の高校生の多くがこのシリーズで勉強していた。『世界史の傾向と対策』はその中の一つで、人気本。その本を執筆したのが、世界史を専門とするT・N元東大教授。
 そのT・N元東大教授は、昭和50年(1975年)10月25日、67歳で亡くなった。その遺言書に、約6年間にわたり半同棲状態だった愛人に全財産の3分の1を遺贈する旨が書いてあったことから、大騒動に。奥さんと娘さんの2人が、この遺言は公序良俗に反し無効として訴えた。
 最高裁は、①財産分与の目的が、不倫関係の継続ではなく、約6年間、同棲した愛人の生活保全であること②妻、娘にも財産の3分の1を残している③娘は既に成人しているなどの理由で、公序良俗に反しないとした。
 当時の新聞も、この判決を「愛人への遺産分与一定限度認める」などと大々的に報道した。
【暗記ポイント】
・受験参考書で有名になった元東大教授の愛人に対する財産分与
・最高裁は、事案の事情を具体的に検討し、公序良俗に違反しないと判断
【最高裁判例集から】
【文献種別】 判決/最高裁判所第一小法廷(上告審)
【裁判年月日】 昭和61年11月20日
【事件番号】 昭和61年(オ)第946号
【事件名】 遺言無効確認等請求事件
【審級関係】 第一審 27490158
東京地方裁判所 昭和56年(ワ)第15467号
昭和59年12月19日 判決
控訴審 27803139
東京高等裁判所 昭和59年(ネ)第3409号
昭和61年 2月27日 判決
【判示事項】 〔最高裁判所民事判例集〕
不倫な関係にある女性に対する包括遺贈が公序良俗に反しないとされた事例
【要旨】 〔最高裁判所民事判例集〕
妻子のある男性がいわば半同棲の関係にある女性に対し遺産の三分の一を包括遺贈した場合であつても、右遺贈が、妻との婚姻の実体をある程度失つた状態のもとで右の関係が約6年間継続したのちに、不倫な関係の維持継続を目的とせず、専ら同女の生活を保全するためにされたものであり、当該遺言において相続人である妻子も遺産の各三分の一を取得するものとされていて、右遺贈により相続人の生活の基盤が脅かされるものとはいえないなど判示の事情があるときは、右遺贈は公序良俗に反するものとはいえない。
【裁判結果】 棄却
【上訴等】 確定

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