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『1日外出録ハンチョウ』 17巻 感想

概要

著者:上原 求、新井 和也
原作:萩原 天晴
協力:福本 伸行

初版発行:2023年
発行者:森田 浩章
発行所:株式会社 講談社

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発行者による作品情報

暗澹たる地の獄・・・・底の底・・・・
日々肉体労働を強いられながらも・・・・
1日外出券で悠々自適に暮らす大槻班長・・
憧れの推し俳優を目の前にし・・・・
話しかけまいかと悩むことがあれば・・・・
大好きなチキンカツに舌を巻き・・・・
好物に共感できる仲間を探すこともある・・!
酒に身を任せ記憶をなくしたあの夜には・・・・
反省と成長の冒険が待っていた・・・・!
日々発見が止まらない・・・・
オトナに楽しむ愉悦的スピンオフ・・第17巻!

Apple Books|上原求,新井和也,萩原天晴 & 福本伸行『1日外出録ハンチョウ (17)』

感想

今日を頑張った者にのみ・・・・明日が来る・・・・・・・・と
誰かが言っていたが・・
いつも頑張っているのなら・・・・
大丈夫・・・・・・!
たまにはサボっても・・
明日は来る・・・・!

 いきなりオマケの話からするのもなんですが、「特別編 1日休日録ミヤモト」を締めくくったこの言葉には胸を打たれました。『カイジ』本編で大槻班長が言った名言のセルフオマージュですが、今を生きる社会人の皆さんには響いた方も多いのではないでしょうか。
 たしかに人生は一度きり。でも、その中で最後の最後まで常に全力疾走なんてことができる人はそういない。人生の中にも波があって、"力をためるべき時""ゆっくりして英気を養う時"というのは必ずある。1日もそれと同じではないでしょうか。毎日毎日猛烈に頑張りまくっていたら、間違いなくガタが来ます。たまにはひたすらギアを緩めまくった日があっても責める人はいないはずです。"たまには"ですけど。
 ただし、この言葉に甘えていいのは「いつも頑張っている」人、というところは要注意です(そもそも「頑張っている」「頑張っていない」は自分が決めることではない、と僕は思うのですが)。

 話を本編に戻しましょう。
 今回はグルメ要素のあるエピソードが多め(7話中4話で"多め"というのもどうなんだろう)
 個人的に最も印象に残ったのは第132話「背伸」。班長の外出(監視は牧田さん)に牧田さんの次男・弘樹くんがご一緒するというエピソードです。
 大槻班長、イマジナリーファミリーの影響か、子供の心にお邪魔するのがなかなか上手い。というか班長、「オッサン」を自称する程度には年がいっているはずなのに、"新体験"に対する抵抗がほとんどないように感じますね。そういう心持ちが"遊び上手"につながっているのでしょうか。
 一方の弘樹くんも、「知り合いのおじさん(=大槻班長)のお出かけについていく」という"新体験"を十二分に満喫。彼から見た班長みたいな「自分の時間を悠々自適に生きている」って感じ(+ちょっとした悪知恵を教えてくれる)の大人は憧れますよね。変なしがらみがないっていうか、子供心に「経験に裏打ちされた深み・渋み」を感じられるというか。(ベースが福本作品であることを考えると「責任がない故に」というナレーションが肝なのかな?と勘ぐりもしますが…。)
 その晩、班長、牧田さんと一緒に宮本さんの家に泊まった弘樹くん。夜中に目が覚めて父親達の夜更かしに参加したりと、最後まで楽しい思い出になったようです。ちなみにこの時宮本さんが弘樹くんに出したガラナ(北海道のローカル炭酸飲料)、個人的に札幌暮らしでハマった飲食物の一つなので嬉しいと共に懐かしい気持ちになりました。宮本さんナイス!

 食べ物が絡まない話だと印象的だったのは第128話「古参」。大槻班長が偶然推し俳優に出会ってドギマギと言う話です。ここの班長の「ファン過ぎて逆に話しかけたくはない」という状態、次元の二三を問わず"推し"がいる僕としても共感の嵐でした。具体的に言うと「応援しているということは伝えたいけれど、それはそれとして、"推し"に自分の存在を認知されるのはちょっと怖い」みたいな感じです。それ故にテレパシーでエールを推しに届けようとするところも、結局話しかければよかったかも、こんなはずじゃないってシュンとなるところも、自分を見ているかのようでした。
 最終的に吾妻学(大槻の推し俳優)はハンカチを落としていったので、それを持って追いかけます。そして吾妻学に追いつき、大槻がかけた言葉は「頑張ってください・・・・!応援してます・・・・・・・・!」の一言のみ。人によってはいじらしく感じるかもしれませんが、個人的にはこれでよかったと思っています。短いからこそ伝わるものがあるというか、搾り出したような言葉だからこその"重み"があるというか…抽象的な表現ですが。

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