国際協力の仕事2(開発コンサルタント)

4.さて、はたらいてみる。

ついに社会人。いままで大学でのうのうと研究をしていたこととくらべて、なにか偉くなった気分。東京の満員電車、いかにも社会人してます、というかんじだなぁなんて行った初日の出勤。配属もなんとなくは決まっていたものの、何をするかはよくわからない。これまで自分なりには鍛えてきたつもりだし、来るものはなんでもこなしてみせる、という気概と同時に、自分がやってきたものの延長線上の関係あることをしたいな、という気持ちも。そういう気合と期待と不安を胸に、会社に初出勤すると、なんと言い渡されたのは、道路の設計だった。

は?道路の設計?いままで環境やってきたと言ったじゃない?そりゃ、道路も環境と関係あるよ。だけど、道路事業といえば、無駄無駄っていっつもニュースになってるやつじゃないの?!ま、たしかに面接ではなんでもやりますといったとは思うけど、そりゃ言うよね。それくらい。

専攻とか見ません?とにかく不満と疑問だらけだった。とにかくとにかく嫌いな道路。しかもいままでやってきた科学的な知見が全く使えないじゃないか。なんだこりゃ。いきなり失敗かよ。。。となりのあいつは、環境したいといって、環境の部署に言ってるし。あぁ、ついてない。嫌いなことに自分の能力とエネルギーを費やすのか。。。?

その日のよるだったか、いつかの歓迎会。先輩社員には大学では何を研究していたか、なんかを聞かれる。

「環境です。」

すると、先輩社員。「は?なんでうちの部署なん?」

僕は答える。「わかりません。」

これ、だれもハッピーになってなくない?そして、誰からも歓迎された雰囲気もないまま、時間だけが過ぎていった。なんで、なんで、なんでこんなことに。。。自分の恨み癖はここに起因しているのかもしれない、と言うほど大きな落胆だった。自分は社会や大人というものを無条件に、いや、無邪気に自分よりも判断力があり、普通であればこうするだろうと信じていたのだ。普通なら専攻なりやってきたことを見て決めるだろうと。

今思い返してみても、大反省のポイント。自分の人生を人に委ねてしまった時点で、それに抗議する権利はこちらにはないのだ、とおもう。社会に受け入れる大人の側はその新しく入ってくる人間をどう使えばよいか、具体的にいえば、どんな仕事をやらせたいか、どんな仕事をさせたら自分が楽できるか、など、ある種自己利益の最大化のツールとして新入社員をみている部分もある。そのような大人の世界に対し、無邪気に、「はい、私をご自由にお使いください。」寄付かのように自分を差し出した自分。自分はこういうことができるんです、したいんですといえなかった自分。これが根本的な自分の弱点としてあり、いまもそれは続いている。

そして、新しく社会人を受け入れることになった今、自分はかつて自分が恨んだ大人のような視点も持ってしまっているのだろう。しかし、やはり、自分と同じように、大人というもの、社会というのの健全性を信じ切って社会に参加しようとする人もあるはずだ、とおもい、かつての自分が味わった、絶望感というか、人を無邪気に信用して渡っていけないかもしれないんだ、という気持ちにならないよう、自分はそういう新しい参加者に寄り添いたいと、新しい人がくるたびに思う。そして、その人たちが、思った部署に配属されている、とわかると、なんとなく安堵するような、でも自分もそうだったらよかったなという羨む気持ちの半々で迎え入れている。妬む気持ちが消えないというのが、人間としてまだまだなのですが。

それでも自分がなんとか、もっとも希望しない部署で勤め上げられた理由は何か。それは、就職の最終面接の時に最後に自己アピールをしてくださいと言われた時に、社長に言われたことば。それだけが支えだった。

僕は、「これと言ってアピールすることはないのですが、、、どんなことでも一生懸命やれるところと思いますのでよろしくお願いします。」といった。その直後、社長は僕に向かって、こう言った。

「君は笑顔が一番の強みだよ。今日はありがとう。」

希望でない部署に配属されても成果を出そうと思うことができ、それをやり遂げられたのも、社長のこの一言があったからだと思う。この一言があったからこそ、義理と感謝みたいなものが生まれ、信用できない社会にも何人かは信じても良い人がいるはず、僕は少しでもそういう人を見つけて生きていこう、そして、自分も誰かから相談してもらえたり、頼ってもらえたり、この人なら、と思ってもらえるような人になりたいな、と思った。

自分の専門分野や肩書きやそんなことではないことで、絶対成果だしてやる、専門外のことであっても、他の誰よりもできるようになってやる、と思うことができた一言だった。

そして、この一言は、自分はそのままでいいんだよ、と言ってくれているきがして、いつも背中を押してくれている気がする。自分が何か言うとき、するとき、まちがったとしても、わかってくれる人はいるはずだと思わせてくれた。社長、ありがとう。

仕事の話はまたつづきに。




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