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唯一無二の体験ができるマラソン大会に参加した

ランニングを始めて10年くらい経つ。そこそこ走れるようになってからというもの、マラソン大会に出るのが楽しくなっていくつか参加してみた。

その中でもっとも驚いたマラソン大会があるので、その話をしたい。

その大会は南魚沼グルメマラソンである。グルメというだけあって、大会の参加賞はお茶碗である。マラソン大会の参加賞というと、だいたいTシャツであり、ランニング愛好者の洋服ダンスの中には大量のマラソン大会Tシャツが眠っていると思う。お茶碗とはだいぶ個性を出してきている。

お茶碗がもらえるマラソン大会はきっと全世界探してもここだけである。そしてお茶碗はもらえるだけではない。走った後、お茶碗を持って所定の場所に行くと、南魚沼産の炊き立てのコシヒカリのご飯を入れてくれるのである。

地元のおばちゃん達が山盛りにご飯を入れてくれて、「おつかれさま!」と声をかけてくれる。ご飯を片手に行くのは、会場内にある屋台である。ここには山盛りのご飯のお供となるおかずがたくさん売っている。

好きなおかずを買って、山盛りのご飯を平らげるのである。私が特に気に入ったのは、「きりざい」という新潟の郷土料理で、たくあん、野沢菜、きゅうり、にんじんなどが細かく刻まれていて、それに納豆が混ざっているというおかずである。

これがあればどんどんご飯が進んでいく。ご飯はおかわり自由なので、お茶碗を所定の場所に持っていけばいくらでも入れてくれる。ご飯の量は「ちょっとでいいです」と言っても、おばちゃん達はサービス精神旺盛なので、かなりの量を入れてくれる。


この大会の唯一無二な点は、マラソンのコースに給水所だけでなく、給酒所があることである。新潟の名産である八海山の酒造会社の方達がゴールまで1キロをきったところあたりで、給酒所を開いて待っていてくれる。

そして酒造会社の方達は「はっかいさーん!はっかいさーん!ゴールの前にははっかいさーん!」と叫び声をあげて、ランナーにお酒を勧めてくれるのである。南魚沼グルメマラソンは、ハーフマラソンの大会であるが、20キロ以上走ってきて飲む八海山は格別であった。

そして走り終わってご飯をたくさん食べたら、大会のフィナーレである。医師でシンガーソングライターでもある主催者の方が、友達であるという松任谷正隆さんとともにステージにあがる。

そして松任谷正隆さんの奥さんである、松任谷由実さんの代表曲である「春よ来い」を演奏する。そして、ランナー達にも一緒に歌うようにとの熱い促しがある。

マラソン大会に参加して、歌うことを求められることはあまりない。ランナー達は、完走後でテンションが上がっていることもあり、涙を浮かべんばかりに「春よ来い」を熱唱するのである。

しかし、南魚沼魚沼グルメマラソンが行われるのは、初夏の6月上旬である。春はちょっと前に過ぎ去ったばかりで、春の恵みを十分に享受した満足感に浸っている時期である。
もう春を求めるなんて欲張りすぎる。

こうして謎の高揚感と満腹感を胸に帰路につく。大会会場から上越新幹線の浦佐駅が徒歩圏内なので、遠方からの参加もしやすいのがとてもいいところである。

こんな個性的な大会が多くなれば、ランニングの楽しみも増えると思う。今年は残念ながら中止になってしまったが、また参加したい。

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