虚構日記「世界のブックデザイン2022-2023」
後輩ふたりを連れて、都内の博物館へ出かけた。
世界のブックデザイン2022-2023という企画展が本日のお目当てだった。先述しておこう、無料である。
広すぎない部屋に通されると、中には本がずらりと並んでいる。
厚さも大きさも手触りもひとつひとつ異なる、世界各国のブックデザインのコンテストで選ばれた精鋭の本たち。それらすべての本をぱらぱらとめくり、好きなだけ読むことができるのがこの企画展の大きな特徴だ。
場内は撮影禁止(それは著作権法からして当然だろう)だったため、その場でのメモを残すことしか出来なかったのだが興味深かった本があるため1冊紹介したいと思う。
中国で出版されている『豆腐』という本だ。
まずビジュアルが完璧だ。
もうこんなの豆腐だ。手触りまでもが。
全編中国語だから、なにを書いてあるかはわからなかったのだがたまに興味深い言葉が飛び込んでくる。
読めるぞ中国語。
その場では面白いって意味だと解釈したけどこの一文を見つけたことをあとで後輩に話したら「豆腐のビジュアル(面が白い)って事じゃないですか?」と言われ、時間差でなお面白を食らった。
そのほかにも「豆腐,吾之人生也!」という豆腐を賛美していると思われる文であったり、ひたすら京都の湯豆腐レポをしていると思われる文であったり、謎の豆腐的建築というキーワードが並ぶ文だったりがわたしの目を楽しませた。
読めないけど面白い。
きっと読めたらもっと面白いのだろう。
帰りは後輩と中華屋へ行った。
もちろん麻婆豆腐を食べるためであった。
大皿に出された麻婆豆腐をつつきながら後輩たちと企画展の感想を語り合う。
美術館は普段あまり人と行かないのだが、この企画展はなんとなくあの子たちが好きそうだと思い珍しくわたしから一緒に行かないかと声をかけた。満足げな表情で麻婆豆腐とサワーを楽しんでいる後輩たちを見ていたらこちらまで嬉しくなった。
またこの子たちとどこかに行きたいと感じながら、わたしは気の抜けきったビールを口にした。
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