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ワックス塗料についてDIYerが知ること

 DIYで使う塗料で昨今人気があるのが「ワックス」。以前はホームセンターで購入できる物はイギリス製の「ブライワックス」ぐらいしか目にしませんでしたが、今では国内メーカーさんのワックスもよく見かけるようになりました。国内のワックスもイギリスのと同じく色味も豊富で、お値段が少し安いのでDIYerにとってはありがたい限りです。
 DIYでワックスをよく使うようになったのは、ここ20年ぐらいでしょうか。しかし、SNSなどでのDIYerを見る限り「他の塗料との違い」「本来の使い方」などをあまり知らない方がいらっしゃるようです。なのでここで効果的な使い方や注意点などについて解説していきたいと思います。
 国内のメーカーのワックスは、イギリスのワックスと同じようなペーストタイプで使用方法もほとんど同じだと思います。しかし成分は違うようなので今回は、バイヤー時代に取り扱っていたイギリス製のブライワックスを主軸にお話させて頂きます。

ワックスとは

 ワックスはペースト状の塗料で木材に塗り磨きあげることで「ウレタン」や「オイルステイン」と異なる木の「質感」を活かした「艶」を出してくれます。ウレタンほど強い塗膜を作るわけではなく、オイルステインほど木にしっかりと染み込むわけではないので、木を保護するという「機能的」な面よりも雰囲気が良いという「情緒的」な面が強い塗料です。もともとイギリスではワックスは「キャビネット」のような「使う家具」というより「魅せる家具」に使うために発明されました。なので「艶」を重視するのも頷けます。また、他の塗料と圧倒的に違うのは「乾燥時間」。塗ってからそこそこで磨き上げて完成。ウレタンやオイルのように、長い時間乾くのを待たなくて良いのも人気の一つかもしれません。

使い方

まず下地に「水性ステイン」を塗ってみる

 最近のワックスは色の種類が豊富なのでワックスのみで仕上げる方が多いかと思います。しかし、その昔ワックスは透明のものだけでした。色味をつけたい場合には、「水性ステイン」で木材に色付けしてからワックスで艶を出すのが基本の塗り方でした。
 戦後になってからワックス自体にも色が付き、それに伴い「水性ステイン」の色も豊富になり「水性ステイン」と「ワックス」の掛け合わせで希望に近い色を表現することが可能になりました。
 ワックスを使ったことがある方はわかるかもしれませんが「新しい木」特に「白っぽい木」に塗ると思ったほど色が入らないと思った方もいるのではないでしょうか。ワックス単体での「着色」の能力はそこまで高くはありません。なのでご希望の色味を出したいのであれば、ぜひ「水性ステイン」と「ワックス」の組み合わせで仕上げてみてください。
 「水性ステイン」と限定するのには、たまにワトコなどのオイルステイン」を下地に塗られている方を目にしますが、これはやめたほうが良いでしょう。なぜならワックスも「油性」ですので、塗ったオイルが新鮮なうちは混ざり合ってしまいワックスの「光沢」が出にくくなってしまうからです。

サンディングシーラーを塗ってさらに光らせる

 ちなみにこれはおまけでいいのですが、海外では仕上がりをさらに良くするためにステインとワックスの間に水性の「サンディングシーラー」という下塗り塗料を塗ります。ワックスに限らずウレタン塗装の際にも使う塗料です。ワックスは水性ステインを塗った後でも木部に若干量染み込みます。しかし「サンディングシーラー」を塗ることで、ワックスは木部に染み込まないので、塗った全てが表面で艶に変わります。ちょうど「車のワックスがけ」をイメージしてもらうとわかりやすいかと思います。
 この「サンディングシーラー」昔は「シェラック」というカイガラムシからとった成分で作っていました。高価なものですが「シェラックサンディングシーラー」は入手可能ですのでチャンスが有ればお試しください。

ワックスを塗る

 ワックスを塗る道具に目の細かい「スチールウール」が推奨されていますが、正直塗り難いと個人的には感じます。塗りやすさから言えば「スポンジ」をよく使っていましたが、しばらく経つと有機溶剤によってボロボロになります。それなら適度な大きさの切った「布」で塗るのが一番塗りやすいかなと思います。
 ワックスの成分は各社それぞれだと思います。オリジナルのブライワックスに限っては有機溶剤のトルエンが半分ぐらいで、あとは「蜜蝋」「カルナバワックス」「顔料」などです。「蜜蝋」が入っていると言って、素手で塗られる方がいらっしゃるのを見ましたがやめたほうがよいです。手が荒れます。有機溶剤は揮発するため乾燥も早くかつ仕上がりもキレイです(なので換気の良いところで作業しましょう)。トルエンが入っていないものはミネラルスピリットが代用されていたりするので、揮発しにくいので少し長めに乾燥させてから磨くと良いかと思います。
 磨き終わってから「ムラ」が気になりワックスを再塗装すると、すでに塗られたワックスを溶かして余計にムラを作ってしまう事があるので注意してください。再塗装はワックスが抜けて乾いた頃にするといいでしょう。
 最後に最も注意してほしいのは、「油性塗料」全般に言えることなのですが、使い終わったスポンジでも布は必ず「水に付けて廃棄」してください。そのまましておくと酸化反応によって「自然発火」する恐れがあります。気温が高かったり、直射日光が当たるところでは間違っても置きっぱなしにはしないでください。

ワックスを磨く

 磨き方ですが、これも多くのDIYをやられている方のSNSで見かけるのですが、ワックスを磨き上げる時に最初から「布」のようなウェスで磨く方がいますが、折角塗ったワックスを取ってしまうのでやめたほうが良いでしょう。ワックス磨きは「靴磨き」に似ています。最初に磨くときはパームヤシの「たわし」がオススメです。表面にしっかりと定着させるように優しく磨き込み、最後に乾いた「布」を使って表面を軽く磨きます。これをやるだけで光沢の出方が全く違います。

まとめ

 すでに申し上げたようにワックスには「耐久性」は期待できません。
まず「熱」に弱い。テーブルの天板をワックスで仕上げたものの、熱いカップを置いて底の「跡」ができた経験がある方もいるかと思います。カップの跡も味だと思えればなんてことないんですが。
 また、ワックスは「摩擦」に弱い。塗ったときには木部に少し染み込みむ程度で、あとのほとんどは木部上面に残ります。その成分は「蜜蝋」などのやわらいものが多いので、引っ掻いたり擦ったりすれば取れてしまいます。時間が経てばある程固まりはしますが、ウレタンなどのような硬さにはなりません。濃いめのワックスで仕上げたテーブルに肘をついたりすると洋服に色がついたりすることがあります。
 以前、大手のセレクトショップの商品棚を濃い目のワックスで仕上げた為に、商品に「色移り」させてしまい大量の商品を買い取った失敗を経験しております。スニーカーのソール、ワイシャツなど商品を取り出す際の「摩擦」で起こる「色移り」です。また、特に塗ってすぐは塗料が揮発していて、それによる「色移り」もあるのでお気をつけください。
 またウレタンなどでコーティングすれば「色移り」がなくなると思われますが、一度ワックスを塗った木材にウレタンなどのコーティング材は定着しません。地盤がゆるゆるなところに家を建てるが如く、塗って乾いたところからパリパリと剥がれてきます。店舗什器の仕上げに「ワックス」(特に濃色)は適材適所ではなかったと大変勉強になった若き頃の大失敗でした。何卒お仕事で使われる際はご留意ください。
 ネガティブな要素はあるにせよ、そこも楽しめるのがワックスです。ワックスの性質を理解してDIYを楽しんでください。メンテナンスを繰り返し、結果長く使って愛着をもたせてくれる実に優秀な塗料です。まだ使ったことがない方はぜひお試しください。


 


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