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古材について とくにアメリカ古材のはなし

 DIYでも人気の素材「古材」。一口に古材と言ってもいろいろな種類があります。最近はホームセンターでも購入できる杉の「足場板」なんかはお馴染みかもしれません。リーズナブルで内装や家具などでよく目にします。日本の古材であれば高価ですが古民家から出てくる栗や欅などの古材なども大変いい雰囲気があります。
 また、ちょっと前に流行っていたインダストリアル系の家具などにはインドネシアなど東南アジアの「チーク」の古材がよく使われていました。そして僕がバイヤー時代にメインで買い付けていたアメリカの古材「リクレイムドウッド」も店舗やオフィスの内装や什器の素材として人気があります。

古材大国アメリカ

ヤードと呼ばれる古材置き場 @Oregon

 ここ日本では一般的に古くて味のある木材であれば「古材」とひとくくりにされている風潮がありますが、古材大国のアメリカではカテゴリーがあり、それぞれの価値や価格がわかりやすく仕分けされています。ざっくり分けると下記のような形です。

  • リクレイムドウッド 戦前の建物から再利用可能なよう丁寧に解体した木材

  • リサイクルウッド 足場板やパレット

  • スクラップウッド 再製材が不可能な木材

 中でもリクレイムドウッドは、「歴史」「サイズ」「材種」などで価値と価格が大きく変わります。


歴史を楽しむ

 10年ほど前にNYのコニーアイランドのボードウォーク(ウッドデッキ)が交換されることになり、その長年使用された板を求め全米の古材業者が殺到しました。木材自体はそこまで古いものではないですが歴史あるコニーアイランドのネームバリューが価値を相当上げたためです。
 これも10年ほど前、エジソンが自宅兼研究所として使用していたニュージャージにある建物が解体されるという噂が業者間に流れ、海を渡り我々の耳の入ってきたときには興奮したものです。さすがにアメリカの歴史は壊される事なく噂で終わり、これはこれでホッとしたものです。
歴史がわかると価値が上がるということで最近はどこの場所の何年代の建物だったのかを明確に示す業者も少なくないようです。


値段が高い理由

1800年代後半に建てられた住宅の解体現場。この年代から中央のレンガの中にはセントラルヒーティングが施されている。 @Ohio

 リクレイムドウッドは一軒家から巨大な倉庫まで構造で使われている木材を指します。それなので「梁、柱、壁、床」など用途に応じて製材された形の違う材料になります。
 日本ではユンボでバキバキと家屋を壊す光景を目にしますが、再利用するためには上の方から手荒に壊さず丁寧に分解していきます。床もサネ(凸凹)が壊れないようにキレイに剥がしていきます。
 以前、訪れたケンタッキーのバーボンウィスキーの貯蔵庫を解体する際は建物があまりにも巨大で左側から解体し始めると、軽くなった左側に重しを足してから右側を解体し始めるといった大変困難な作業をしていました。また、材料には釘がたくさん入っているので製材前にそれを全て抜かなければなりません。このように手間が掛かる分、アメリカの古材は値段が高いわけです。日本ではそれを輸入するのでなおさらです。


雰囲気を作り出すもの

ハンドヒューンと呼ばれる手斧で表面を削られた梁材

経年変化もさることながら、古いものほど製材方法や道具、機械も古くなりノコギリや手斧の跡が味わい深い表情を作り出しています。扱っていた古材は古いもので1800年代後半のものが多く、この頃の製材所は主には深い山の中にあったため、主には川の流れを利用した「水車」を動力にして製材機を動かしていました。その後、下流に流すことで移動も容易だったので一石二鳥です。以外にも戦前まで水力を使って製材しているところが多かったそうです。
 ちなみに製材所を英語でMillと呼びますが、水車や風車の動力は元々小麦粉をひく=Millためのものだったことから、そのまま製材所をMillと呼んでいるようです。


地域と材種

バーバンクにあるダグラスファーが使われている店舗

 国土の広いアメリカは生えている樹種も西と東では大きく変わります。それなので建物から出てくる材種も、その土地で生えているものが多く使われています。
 例えば西海岸では、建物にはダグラスファー(米松)が多く使われています。赤みがかった材でオレゴンやシアトルで製材されたものがロサンゼルスの方まで使われています。柔らかい材種なので加工性に優れているので古材でも再製材が容易です。
 逆に東海岸のニューヨークあたりになるとホワイトパインやヘムロック。色は白っぽく黄色味を帯びたようなダグラスファーと全く異なる雰囲気です。西海岸に比べ歴史が古いので材料も古いものが多く出てきます。
 また、中西部だとオークがよく出てきたり、南部ですとロングリーフパインが使われていたりと、要するに自産自消だったんですね。その昔、移動手段も限られていたので重い木材を遠くに移動させるのも大変だったのでなるべくその地で使おうということだったのでしょう。
 その土地の雰囲気(スタイル)を出したければ、デザイン云々よりもそこで使われていた材料を使うのが手っ取り早いかと思います。西海岸スタイルならダグラスファー、ブルックリンスタイルならホワイトパインと。昨今の海外風の〇〇スタイルに違和感を感じるのは素材使いのちぐはぐさにあると思うのは僕だけでしょうか。

アメリカ古材を使ってみる

アメリカの古材で作った店舗 @Local Crew 埼玉県春日部

 ということで現地の雰囲気を出したいのであれば間違いなく本物の材料を使うことをオススメします。仕上がりが断然違いますので。ちょっとしたDIYでも使ってみると雰囲気が大分変わりますのでお試しください。
 アメリカ古材に興味のある方は下記のお店などで入手できるのでお問い合わせしてみてください。それでは。
Bullet Japan(兵庫)
Gallup(東京)
Richmond Antiques(埼玉)

ダグラスファーの古材を使用したDIY作品




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