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八百億兆万の神の国

俺、北大路ノボルは京都で学生をやっている。叡電をちょっと行った辺りに住んでいて、神が見える。今はラーメン屋『極鶏』で、『鴨川デルタの出町柳側の河川敷の石のサイズと角のトガリ具合を調整する神』を前にしている。

「そないな顔せんと、話くらい聞いとくれやす。北大路はん」
無視してラーメンを食う俺に鴨石が食い下がる。無駄に長い烏帽子が視界にちらついて食事の邪魔だ。箸で額を突いたら大げさに吹っ飛び、殺生や殺生やと転がるのを、カウンターに座った『一乗寺の食べログ3.5以上のラーメン屋のガスコンロの点火装置の火花を起こす神』が鬱陶しそうに睨んだ。

有史数千年、神も人間同様増え続けている。というか誰かがいると言えばそこに神が生まれるわけで、人間以上にガンガン増えていく。そのくせ人間と違って神は死なないので面倒なことになる。西洋人はさっさと一神教というソリューションに気づいたが、日本では相変わらず「トイレの神様」とかを流行らせて、万単位で便所神を増やしている有様だ。神は何かしらの役目にありつかないと、信心が得られず飢えて祟り始める。役目を細かく切り分け融通してる内に、権能が意味不明なほど細かく区切られて、もはや野良猫ほどの力もない奴ばかりになったのだ。

「ほんまに後生どす。あんさんに見放されたら、あてはもう祟るしかあらしまへん」
「どうせろくな御利益も無いくせに、泣き落としばっかりしやがって。飯がマズくなるから黙ってろ」
ヨヨヨとか抜かしながら袖口で目を押さえて鴨石が引き下がったのを見て、俺は極鶏のスープを掬った。麺にさせばレンゲが直立するほどの濃度にして、喉に絡まらずにスルリと胃に染み渡るうま味。極上である。スープを飲み干して丼を置くと、鴨石が膝立ちでにじり寄ってきた。

「そんで、今回のお話いうんは……」「あー、聞くだけな」
生まれてこの方、この力で得をしたことなんてまるで無い。全く面倒ごとばかりだ。

【続く】

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