見出し画像

BtoB SaaSプロダクトにおける価値と価格の違い@プライシングナイト #1

こんばんは。プロダクトマネージャーをやっているみやながです。

SaaSプロダクトにおいてプライシングは常にケアが必要で悩ましいトピックである。

プライシングはSaaSプロダクトの収益構造を大きく左右させる。

安い価格設定にすればアカウント数が求められ、新規獲得やCSコストが膨らむ。高単価にすればそれだけの価値を示し続けなければならないし、競合が多い領域では価格競争の観点で獲得に不利に働くことになることも。

また、一度決めた料金テーブルでサービスが走り出すとそう簡単に料金変更もできないため、生半可な決断で開始することもできない。

プライシングを学ぶイベント「プライシングナイト」開催

先日、BtoB SaaSプライシングを学ぶイベント「プライシングナイト #1 」に参加した。

イベントでは中々見たことのないテーマを取り扱っていることと登壇者の湊さんのブログの愛読者だったこともあり、参加した。

大変有意義なイベントだったので、参加ログと所感を述べる。

イベント概要

BtoB x SaaSプロダクト x プライシング というかなりフィルターのかかったイベントであったため、理論的な話から実践的な話までかなり濃い内容だった。

そしてプライシングを気にするプレイヤーということでCEOや事業長レベルの参加者が多く集まっていたのは印象的である。

イベント構成

・ショートプレゼン: Saasのプライシングの考え方(基本編)

・ショートプレゼン: 事業運営視点でのプライシングの苦悩

・ディスカッション&質疑応答

理論編→実践編→(ディスカッションで)さらに実践編 と基礎から応用まで学べる大変満足度の高い内容だった。

ショートプレゼン: Saasのプライシングの考え方(基本編)

セールスフォース・ベンチャーズ 湊さんのプレゼン。

まずは理論編。

価値≠価格を認識する

(スライドが多少見づらくて申し訳ないが)価格交換価値であり、価値使用価値ということである。

そして、実際に人が判断するのに大きく影響するのは使用価値の方であるという。

ただし、BtoBでは客観的な側面が多少強くなるらしい。(似たようなツールと比較しながら導入選定する行動やROIから導入意思を決定させたりなど)

その他にもプライシングを考える4ステップについて説明していた。

・ターゲットと自社の短期的な戦略ゴールを明確化
・ポジショニングの設定
・運用体制の設定
・プライシングの設定と検証

最初の2ステップで目標を描き、後半2ステップでリソースや検証ということで理想と現実の距離感をつめていくところなど絶妙にステップ化されている。

詳細は過去に湊さんがブログにしているのでぜひ一読すると理解が深まるだろう。

(実際、弊社プロダクトのプライシング設計にもこのブログを参考にさせていただいた。)


ショートプレゼン: 事業運営視点でのプライシングの苦悩

アライドアーキテクツ 村岡さんのプレゼン。

実践編。

Letro というUGCに特化したマーケティング業務におけるBtoB SaaSにCPOのポジションから関わっている。

ACV(年間平均契約金額)が約2.5倍にするまでの道のりを話してくださった。

以前のプロダクトではとにかく価格競争に悩まされたという。(交換価値)

あげく、以前のプライシングは「死の谷」にがっつり入っていたようである。

※死の谷とは: プロダクトの価格帯が中途半端(ACV $5000〜$30,000)になることで、ACVと対象顧客がフィットせず売上の伸びが頭打ちとなり成長が止まる、またはビジネスモデルが破綻している状態を指す。

プライシングを再考するにあたり、大事にしたのはUVPの再定義だったそうだ。

「顧客にとってサプリメントではなく薬になること」という独特な言い回しで表現であったが、顧客に価値を最大限感じてもらった上でなくてはならない存在として認識してもらうことが重要であるということだった。

サプリメント:nice to have プラスアルファになるもの

薬:must have ないと死活問題になるもの

UVPを再定義し、Vision Sellingはじめプロダクトの見せ方を大きく改善することでプロダクト自体が持つ機能はさほど変えずにACVを高める結果に至ったらしい。

価値を正しく理解してもらうことの重要性を感じた。

ディスカッション(モデレータ: 空 松村さん

参加者はみな積極的で30近い質問が上がっていた。

その中で上がっていた質問をいくつかピックアップする。

安い料金テーブルでスタートしてしまった場合にどうやって上げていくがよいか?

・基本は価値を上げることでしか価格を上げる。

・価値を上げるのは機能追加だけではない。アライドアーキテクツの例にあるリブランディング、導入事例、成功事例を軸に価値を示すこともできる。

アーリーフェーズのプライシング設計はどうするのがよいか?

・最初の10〜15社は検証に用いる。そこまではFixしない。

・成功事例を作るフェーズなのでプライシングに重きを置きすぎない。マーケティングとして割り切って導入にフォーカスすることも大事。

・一方、本来目標としてる価格帯をテストすることも大事。

・日本ではなぜか価格のA/Bテストをしないことが多い。海外では頻繁に行う。

最後に

以上、BtoB SaaSプロダクトにおけるプライシングについて触れてきた。

価値と価格の違いを認識した上で検証を繰り返し、価値と価格の距離感を常に意識しながら事業運営することがポイントとなるようである。

そして価値を示すのは必ずしも機能だけではない。Vision、UVPなどプロダクトの世界観を適切に伝えることも導入側にとって価値となりそれが価格としての理解につながる。

これら視点を踏まえて適切なプライシングを考えていきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?