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俳句、自選自解

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自分の創作物を見ていただくのは「ナンカチガウ」と思いつつ、おだてられて始めてしまいました。
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2023年8月の記事一覧

俳句、自選自解005(十一面観音)

俳句、自選自解005(十一面観音)

十一面観音菩薩稲光つねたまじめ

雲行きがあやしいな、とは思っていたが、ついに夕立に降り籠められた。本尊、十一面観音菩薩がおさめられた建物内は暗く、ざーという雨音だけが響く。

ぴかっ!

突然、眼前に浮かび上がる巨大な立像。
その残像は、ただ見るよりもずっと鮮烈に、私の網膜に焼きついた。

俳句、自選自解004(斬首)

俳句、自選自解004(斬首)

向日葵の後の始末の斬首かなつねたまじめ

校舎でひまわりを育てるのが好きだ。結婚前は休みの日にも水やりをしにいくなど、実にまめまめしく世話をした。日に日に成長するのが楽しく、子どもたちより背の高いひまわりに育つと、教室から出てみんなで写真を撮る。

盛りを過ぎると、ひまわりは急速に力をなくし頭を垂れる。育てた者として、無言で後始末を行うと、季節はすでに秋であった。

なお、ひまわりによくつく害虫は

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俳句、自選自解003(黒葡萄)

俳句、自選自解003(黒葡萄)

黒葡萄皿と一点のみ接すつねたまじめ

正岡子規が、そして高浜虚子が重要視した客観写生を、中学生の私は「見たままを言葉にするって、当たり前やん」と思っていた。

見たままを言葉に。

部活から帰ると、うちには似つかわしくもない巨峰が、白い大皿に無造作に載っている。人からもらったのだな。一粒一粒が濃い紫で、果粉が洗ったあとの水滴を弾いている。重量感がある。みずみずしくておいしそうだ。香りはしない。口に

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