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ニコヨンの額 一句鑑賞003 石原由貴子

 一句鑑賞第3回は『鷹』同人・石原由貴子の一句を鑑賞します。

ニコヨンの額の傷や焚火照る
            石原 由貴子

『鷹』2019年2月号初出

 今や令和の世となり、日雇労働者を意味する「ニコヨン」の呼称はとんと聞かれなくなった。

 道路工事か何か、突貫作業の現場であろうか。深夜に暖をとる焚火の炎が、労働者の貌を、額に刻まれた古傷を、闇の中に浮かび上がらせる。

 私たちは彼を識らない。だが、目を閉じれば、脂ぎった日灼け顔に深い皺を湛えた彼の表情までをも想い浮かべることができる。
 時代を超えたリアリズムに、力強さと迫力を感じた。(了)

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