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蜜蜂はなぜ大量死したのか〈Ⅲ〉

 彷蜃斎こと、平野芳信です。1000ビューを越えたタイミングで、本名を名乗ることにしました。

 さて、『ハチはなぜ大量死したのか』を読んで、一番ショッキングだったのは「CCD(蜂群崩壊症候群)」と呼ばれる蜜蜂の大量失踪とその後の大量死の原因が、〈Ⅱ〉で述べた如く、「ネオニコチノイド系農薬」の単独因ではないという点でしょう。

 前提として、抑えておかねばならないことがあります。〈Ⅰ〉で述べたように、地球上の25万種の植物うち、蜜蜂が24万9900種の受粉を担っているわけですが、この独占的優位はある意味では蜜蜂が人間を利用したともいえるのです。いわばそこにはWINWINの関係が成立していたのです。
 しかしながら、ひとたび、この独占的優位が人間の経済活動に大々的に活用され始めると様相が一変したのです。その最たるものが、北アメリカ大陸のアーモンド栽培における受粉昆虫として蜜蜂の登用に認められるのです。

 アーモンドは桃の近縁種(確かに、桃の種はアーモンドにそっくりですね)で、 共通の祖先は中央アジアに生まれ、桃は東に向かって湿気のある低地に適応し、アーモンドは西に向かって乾燥した丘陵地に適応をしました。
 2000年代からアーモンド栽培は健康志向ブームに呼応して巨大産業化したようで、蜜蜂が巣箱毎レンタルされはじめました。出張を繰り返しているようなものでしょうね。アーモンド産業の巨大化にともなって、レンタル料が高騰していったのはいうまでもありません。つまり、蜜蜂の酷使がはじまったのです。

 もともとの天敵であったダニにくわえ、過剰労働によるストレスの増大は栄養失調率と病気の罹患率の高め、それを防ぐために抗生物質の投与を招きました。すなわち、抗生物質は蜜蜂たちの腸内細菌(いわゆる善玉菌)を死滅させました。そこに、「ネオニコチノイド系農薬」の洗礼が訪れたのです。


 考えてみれば、これは我々人類が陥っている状況と酷似していると思いませんか。先の狂牛病にしろ、CCDにしろ、「動的平衡」(詳しくは『動的平衡ー福岡伸一「もう牛も食べても安心か」の衝撃ー(1)〜(5)を参照してください。)を逸脱せしめた人間の過度の介入の結果です。

 聖書的にいえば、「貪るな」という戒めを破った結果は、必ずブーメランのように戻ってくるでしょう。「沈黙の春」どころか「沈黙の秋」は目の前に迫っているのかもしれません。

 

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