あなたはドラマの背景が、映像と舞台とで違うって気づいてましたか

【四半世紀のアイドルファンが想うこと★V6★ vol.143】


テレビドラマは、ネットでもたくさん見れるようになって、エンタメ好きとしては至福の時代だ。
ただ、もしドラマの映像の背景が、全て真っ白で何もなかったとしたら、いくら脚本や役者さんの演技が素晴らしくても、結構見るのはしんどそうだ。

今回は、そんなドラマの背景について、映像と舞台とでの背景の作り込みについて考えてみた。

ドラマや映画など、映像によるストーリーものは、背景についてはリアリティのある作り込みが必要だ。
例えば、お仕事ドラマや学園ドラマでは、職場や学校の教室について、机、椅子、棚、壁や天井に至るまで、そのドラマに沿った、存在すると思わせる(もしくはリアルの範囲内で夢のある)背景として伝わる必要がある。
時代もののドラマも、時代考証に沿って背景を作り込んで私達に見せてくれる。
現代ものでも時代ものでも、そうでないとリアリティが削がれて、ドラマの内容が頭に入っていかない。

それとまた違うかなと思うのが、舞台だ。というのは、演出として組み込まれていれば、背景が舞台の最初から最後まで、ものすごくシンプルで、場合によってはずっと同じ背景でもありだというのが舞台だ。

今まで見た舞台で、特にシンプルなものは野田秀樹さんの舞台に多かった。「赤鬼」という舞台は、色んなバージョンがあるが、あるバージョンでは、舞台中央に帆のない船があるだけだった。また昨年のバージョンでは狭い劇場で観客席がぐるっと舞台を囲む形だったからか、背景らしい背景もなかった。

映像ドラマで背景がほとんどなかったら「え?」となってしまいそうだが、舞台ではそれがかえってこちらのイマジネーションを掻き立ててくれるのが、媒体の違いとして面白い。

三宅健くんも、今までたくさんの舞台に出演しているが、もっとも背景がシンプルだったのが、最初の舞台で野田秀樹さん作のものだった(2000年「二万七千光年の旅 -世紀末の少年-」)。演出は別の方だったが、背景は、仕切りというか壁というか、それも何とは特定されてないものがあるくらいだった。

野田秀樹さんの舞台はどれも色々と解釈できるものだから、かえって背景で場面を特定されない方が、こちらのイマジネーションが刺激され広がっていく。そしてそれがとても心地よい。

もちろん、これでもかという豪華で緻密な背景がある舞台もとても面白い。そういった舞台は、フルオーケストラだったりで音楽も豪華、衣装も豪華、ストーリーも波乱万丈、舞台を観ている時は夢の中にいられる空間だ。そして劇場を出てくるときはひととき夢の中に浸っていられる。オペラ(高価なので数えるほどしか行けてないが)や宝塚はそういった非日常空間に浸れるとても貴重な機会だ。
逆に、これだけ豪華な夢の空間を展開できるのも舞台ならではかもしれない。

こうやって整理してみると、映像の背景はリアルで、例えば室内の背景でドラマならではの綺麗なものとしててもリアルの枠をはみ出さない(もちろん豪華な世界観のドラマはまた別で)。舞台の背景は、超シンプルから超豪華まで思いっきり幅がある。

私は映像も舞台も両方大好きだし、もちろんどちらが優れているとかは全く思ってない。両方とも別媒体として存分に楽しませてもらっている。

ただもし舞台の背景が、映像と同様にリアルなものなのだが、例えば、家の部屋の場面での背景が普通に部屋のもので、場面が職場に切り変わるとまた背景が普通に職場だったりするものなどを思い出し考えてみた。要するに、予想される背景が、場面の切り替えのままに普通に切り替わる場合である。個人的には、イマジネーションが湧きにくく感じることが多かった。

映像と舞台の背景の違いってなんだろうと考えてみると、まず映像では、顔のアップやシーン全体を撮るなど、俳優さんへカメラを近づけるか遠くから撮るか、ズームは自由自在に変えられる。また、同じ背景の場面であっても、カット割りも、主役、共演者、全体など、秒単位でどんどん切り替えて撮って視聴者に見せることができる。

他方、舞台では、どの席に座るかは全くのチケット運であり、一度座ったらずーっと同じ席で観なければならない。観客の都合でアップとかカットとか変えられない。なので、もし背景が、例えば普段見ているどこかにある部屋の背景のままだと、その場面はずっと同じ視点で見なければならない。あくまでも極端な言い方だが、自分の家で過ごしているのとあまり変わらない感覚に陥り、イマジネーションが湧きにくくなるのではと考えた。

だから逆にすごくシンプルな背景では、役者の方の演じる内容によって、今はこんな背景かなとこちらで勝手に想像ができる。同じ席に座っていても、頭の中では想像力で色んな場面が切り替わっている。
もしくはすごく豪華で何度も切り替わる背景は、劇場の空間全体を豪快にして観客を支配してくれるので、同じ席に座っていても、夢のような体験を与えてくれる。

同じドラマでも、映像か舞台かの媒体によって、背景から受ける印象も違ってくるのが面白い。表現って色んな可能性がありますね。


それではまたよい一日を。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?