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逆噴射小説大賞2019感想戦その3

 逆噴射小説大賞の13~18本目のライナーノーツでございます。(1~6本目はこちら、7~12本目はこちら)。21日現在ちょうど書きだめのストックが尽き、ただし構想は投稿期間最終日分まで完成しているという状況。なので、5本目の投稿作は残る10作の中から1本選ぶことになりますね。構想時点で既にある程度決めているのですが、書いてみたら微妙になったり、想像以上におもしろくなったりするので色々読めません。殺し合え俺の作品たち。

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【191019】パワポ探偵の明白な解決(没作-10)

 探偵思考実験小説。どう見てもふざけてますけれど、実は今まで一番真面目です。つまり、探偵は推理能力だけでは、解決装置としては働かないということです。推理をうまく伝えられない口下手な名探偵は解決編を開くことはできない。では、推理能力を持つAとその推理をうまく伝えるプレゼン能力を持つBがいた場合、それはどちらが名探偵と言えるのか?言い換えれば、名探偵の定義は、思考と言葉いずれに重きが置かれているのかという問題であり、麻耶先生の『名探偵 木更津悠也』『化石少女』からの連想でもあります。ただ、このテーマを扱いながら、パワポ解決編を装飾に留まらず必然性をもって推理小説内に落とし込むことが可能かと言うと……正直、私には手だけが思いつきませんね。続きが書けないという点、また、これ単体でややオチてしまっているという点で没になりました。余談ですが、投稿後にtwitterで「パワポ探偵」で検索をかけたら、形になった作品こそなかったものの、同様のアイデアを放出している人が散見されたので、そういう意味でも没にしてよかったかなと。あとなぜかVtuberの方に関する話題がすげえひっかっかりました。

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【191020】錆の島(没作-11)

 暗黒商売SF。元々は翌日に投稿した「リョコウバト~」と合わせて一つの作品だったのですが(島の上空を飛び回る機械の鳥から、毒の錆び汁が垂れてくる設定だった)、要素が非常に多く設定の羅列になってしまいましたので二つに分割してダイエットさせました。また、書きながら最も構想と内容が乖離していった作品でもありまして、当初は、錆び雨によって急に死がもたらされる世界で普通に楽しく暮らしてる子供たちの話を子供たち視点で書くつもりだったのですが(リスペクト元は星新一の短編「処刑」です)、書いているとなぜかどこからともなくおっちゃんが表れ、誰だこいつ……?と困惑しながら書き続けたところ、こういう形にまとまりました。当初が「リョコウバト~」に寄った内容だったので、二段階変身したことになりますね。没にした理由は純粋に他の作品との比武の結果です。標高が低かった。

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【191021】リョコウバト殺すべし(投稿作-4)

 バードハントファンタジー。暗ぇ!二日続けて!今回の投稿作、今のところ全部内容が暗いですね。なんたることだ。当初、四本目の投稿作には24日投稿の「ミルクランチ~」を出す予定だったのですが、比武の結果標高が高かったので投稿枠獲得権はこちらに譲られました。ただ、「ミルクランチ~」は21日現在で構想しかないので五本目の投稿予定作を押しのける可能性もありますね。殺し合え。前述の通り元々は「錆の島」と合わせて一つだったので、いずれも舞台が島となっています。リスペクト元は、内容は真逆ですが『オーデュボンの祈り』、あとやはり結構真逆だとは思うのですが『ニンジャスレイヤー』ですね。なお、ファンタジー世界なので、作中で登場してる鳥はリョコウバトではないです。タイトルはイメージ。たぶん、もっとデカい鳥だと思う。

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【191022】ディストピア松の湯(没作-12)

 スーパー銭湯サイバーパンク。没理由なんて語るまでもありません。現実の方が断然スゲェからです。こんなの荒唐無稽でも何でもないからな。ほぼ実話ですよ実話。円形の岩盤浴コーナーは中央に発行する地球の巨大模型が据えられ自転し、電灯のオンオフにより一時間サイクルで仮想の〈朝〉〈昼〉〈夜〉を繰り返すし、ヨーロッパコーナーにはアトランティス風呂なる奇怪な洞窟風呂があるし、アジアコーナーでは古代の壁画に埋め込まれた無数のTVで永遠にわかさ生活のブルーベリーアイのCMが流れてるし、ロウリュウでは金属製逆さピラミッドが天井が降りてきて気の狂ったような映像と音楽と共に熱波をふりまくんですよ。バレンタインにチョコロウリュウとか言いだしたときは正気を疑ったし、アイスロウリュウと称して氷を一欠け渡されただけだった時は気が狂うかと思った。全人類はスパワールドに行け。関西人の悪ノリが金の力によって具現化された新今宮に顕現せしサイバーパンクを体験しろ。

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【191023】極楽直通軌道エレベータの殺人(没作-13)

『蜘蛛の糸』×『冷たい方程式』×『刑事コロンボ』。あの世ミステリまさかの二本目。没理由は明白で、どうにも説明臭かったことと、あと要素の詰め込みすぎですね。『蜘蛛の糸』×『冷たい方程式』のアイデアはマイ作品の中でも屈指のアイデアだと思うので、コロンボ要素は取り除いてよかったかもしれません。でも、この作品の出発点は刑事コロンボ『殺しの序曲』の英題である、The Bye-Bye Sky High IQ Murder Caseから得たインスピレーションなんで……。刑事コロンボ、邦題も抜群にいいんですが、英題(現題)もすげえセンスがよいので眺めるだけで創作欲がビシバシ刺激されますよ。Old Fashioned Murderとか、Lady in Waitingとか、Negative Reactionとかね。かっこいい。

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【191024】ミルクランチ家の女たち(没作-14)

 和洋折衷ライトファンタジー。自画自賛していいですか?めっちゃおもしろいですね。今回、要素を詰め込み過ぎて、設定のプレゼンとなってしまった没作が多い中、本作は要素を多く含みながらも喉につっかかる部分がなく、余計な力みのない素直な出力に成功していると思います。しっかり「お話」になっている感。非常に満足のできる出来であり、続きを書いてみたいですね。投稿期間の序盤にこれができていたら、間違いなく投稿作にしていたんですが……(たとえば、『時間外25:00』よりは断然こっちがいいと思います)。没になった理由は単純で、最終ウィークのストック作品に敗北したからですね。過酷。リスペクト元は色々混じりすぎててよくわかりません。映像的なイメージは『京騒戯画』あたりかな……。