NECRO4:市役所へ行こう!(2)
【(1)より】
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臓腐市庁舎はとてつもなくデカい。そのデカさは市役所の権威の象徴だと訳知り顔でぬかす奴も多いが、きっと脳が腐っている。ある棟の4階から別の棟の4階を渡るのに12階と2階を経由する必要がある。隣の部屋に入るのに渡り廊下を全棟1周する必要がある。案内板の情報は度重なる配置変更に追いついていない。……市庁舎が象徴するものは、ガラクタを無計画に継ぎ接ぎしては、後付けで秩序だ管理だと整理整頓に大騒ぎをするいつもの間抜けぶりだ。部屋を1つ増やす度に、1,000を超える会議室の番号をいちいち頭からふりなおすバカ共のどこに権威がある?
「そんなの理想の職場じゃないか」と、この街の大体の奴は言う。「仕事は永遠の暇つぶし。複雑で、難解で、不合理で、手間はかかるほどにいい」。戯言だ。千年万年生き腐れただけの連中の屁理屈は、耳の垢にもなりやしない。永遠ごときで退屈を覚えるてめぇらの魂が下等なだけだ。魂のレイヤーに愛のレコードを刻むことが、この世のすべての意味と価値であることを理解していない。そして、そんな間抜けがここにも1人いて、同僚と何やらくっちゃべりながら紙束にせっせとパンチを打っている。『犯罪鏖殺課』の札が置かれたカウンターを俺が手の甲でゴンゴン叩くと、その間抜けはこちらを向き、眼鏡の奥の三白眼を丸くした。
「おや、ネクロさん。珍しい。地獄以来ですね」
メガネ野郎は前に会った時から何も変わっていなかった。喪服のようなスーツに、紅をさすネクタイ。針金のような体躯に対し、不釣り合いな大きさの両掌。その重さに引っ張られるように、やや傾いた姿勢。そして、眼鏡。所作の端々からにじみ出る几帳面さが癇に障る。
「迎え入れた犯罪者たちを引き渡しに来られましたか。素晴らしい心がけで助かりますが、その場合、担当は隣の犯罪封印課となりますのでそちらに届け出を……」
「そんなわけねぇだろうが」
メガネ野郎が所属する暗黒管理社会なんたら部は、俺の恋人12人を『犯罪者』呼ばわりして捕まえようとしている。この街に法律はないので、こいつらが勝手に言っているだけだ。そもそも、別部署とは言え部長のタマムシや市長のゲレンデまで犯罪者認定されているのはどういう了見なんだ。
「それについては我々の部長の独断でして、課員としてもなんとも答え難く……」
「知らねぇよ。雑談はいい。用事は1つだ。ハンコをよこせ」
メガネ野郎のまとう空気が、市役所職員らしく冷えついた。
「渡すと思いますか。部外者のあなたに」
「渡せ。てめぇは第3課長だったよな? 1から4まで耳を揃えて持って来い」
刺青のように濃く刻まれた目の下の隈が、神経質に震える。両掌が重量に任せてだらりと垂れる。それがメガネ野郎の臨戦態勢であることを俺は知っている。機先を制して得物を取り出そうとした時、『待て待て』とプラクタのしゃがれ声が割って入った。
『俺たちは〈様変わりのタマムシ〉の代理で来ている。〈燃料〉の件だ』
「でしょうね」
氷のような視線と声で、メガネ野郎はプラクタに応じた。
「答えは変わりません。遡りの押印は認めません。後閲処理を適切に行わなかった弊課の担当にも既に注意をし、再決裁の準備をさせています。我々に非がありますので、幹事会と委員会の再度の開催についてはこちらで音頭をとります」
『ははは、相変わらずお堅いことだ。ハンコをこちらに渡してくれたら、お前たちにもメリットがあると言ったらどうする?』
「メリット・デメリットの問題ではなく、これは規則です。また、外部のあなた方に内部書類を漏えいした件については、明確にコンプライアンス違反ですので、しかるべき部署に報告させて頂き……」
『決裁がとれれば、〈様変わりのタマムシ〉はネクロに黙って殺される』
メガネ野郎は言葉を止めた。奴だけじゃない。室内の職員共全員が、大好きな書類仕事の手を止めて、こちらを注視した。プラクタはその反応に満足げに鼻の穴を膨らませ、俺をにやついた目で見て、ウインクした。反射的に殺しかけたが、我慢する。
『対犯罪者部署のお前たちにとって、〈様変わりのタマムシ〉は悩みの種だろう。あんなバケモノ……ははは、何をどうやったところで捕まえられるわけがない。これはチャンスだと思わないか。小さい規則がなんだ。そんな些細なことよりも、『臓腐市の皆さまのより一層の安心と健康のために』あるべきなのが、お前たちの仕事だろう?』
「なるほど……一理ありますね……」
メガネ野郎は臨戦態勢を解き、腕を組んだ。凶器である両掌を鞘に納めた、ということだ。……まさかこんな低レベルな腹芸が通じるのか? 頭の悪い優等生と風紀委員の寄せ集めである市役所職員に? 馬鹿正直に24時間365日の無間労働を続けては過労死を繰り返すクソ真面目共に? そんなはずがない。
「ですが、規則は規則ですから」
そして、やはりそんなはずがなかった。右わき腹に重機が衝突した。女も含めて合計300kgオーバーの俺の肉体が、布きれのように天井まで吹き飛ばされた。破裂した臓腑をキイロから、へし折れた脊椎をミィから補填しながら、俺は俺を殴り飛ばした馬鹿力の職員に目をつける。メガネ野郎ではない。奴はまだ腕を組んでいる。その横にいるメガネ野郎の談笑相手。タッパはそれなりだが、筋肉量はない。異常なパワーは改造によるものか?
「プラクタァ!!」
俺は叫びながらユビキの骨を組み換え、左腕を延長してヒパティの首根っこを掴む。圧縮した血液を右わき腹の傷口から噴出し、空中で回転する。その勢いでデスクめがけてヒパティを投げ転がす。雑魚職員共が何人か轢き潰れるが、メガネ野郎と談笑野郎には躱される。構わない。目的は「壁」だ。ハンコごとどこかに吹き飛ばされたら、たまったもんじゃない。ジェット・ガス。ヒパティが姿勢を落とし、踏ん張ったのを見て、プラクタからお得意の放屁を垂れる。
爆音、そして異臭と共に部屋中の書類が舞い上がり、ホワイトアウトする。だが眼前を埋め尽くす色は白ではなく薄黒色だ。全ての書類に隅から隅までぎっちり字が書きこまれている。視界を確保できないまま、俺は着地する。小さな硬球を踏んづけた感触があり、姿勢を崩す。その瞬間、全身に銃弾が撃ち込まれたような衝撃が走り、転倒する。手をつく。硬球。立ち上がろうとする。硬球。いつの間にか、辺りの床には無数の玉が転がっていた。拾い上げると、それらは一斉に瞳孔を収縮させた。
「目玉……?」
ガン、と再び衝撃。今度の銃弾は額に打ち込まれた。ほじくるとそれも目玉だった。降りしきる書類の雪の隙間から射手の姿が見える。真っ黒なスーツを着たスタイルのいい女。脚に巻き付くほどに長い三つ編みが1本垂れ、その顔には目がついていない。代わりに大量の眼球をざらざらと床に向けて嘔吐し続けていた。その横にはスーツの埃をはらっているメガネ野郎と、ヒパティの首を片手でへし折っている談笑野郎。そしてもう1人、小柄な童顔の男が「前をならえ」して立っていた。
なぜプラクタの攻撃で吹き飛ばなかった? 答えはすぐにわかった。連中の前に、流線型のシールドができていた。シールドの色は白濁色で、粘液が固まってできたもののようだった。まるで精液だ。というか精液なのだろう。ガスの悪臭の中に、俺は生臭い匂いをかぎとる。こちらに向いた童顔野郎の指は、よく見ると全て陰茎になっており、先端からねたつく糸を引いている。
俺のうんざりした視線に気がつくと、童顔野郎は不快そうに目をそらした。そしてメガネ野郎を除く3人が、童顔野郎、三つ編み女、談笑野郎の順で空中に名刺を投射した。
「臓腐市役所 暗黒管理社会実現部 犯罪鏖殺第1課課長 フラスタ」
「臓腐市役所 暗黒管理社会実現部 犯罪鏖殺第2課課長 センシィ」
「臓腐市役所 暗黒管理社会実現部 犯罪鏖殺第4課課長 パラニド」
「私の名刺は以前にお見せしたので不要ですね?」
メガネ野郎が慇懃無礼にほざいた。両掌は既に床にだらりと垂れさがり、殺る気満々だ。アホ面下げてプラクタの軽口を聞いていた俺と違い、こいつらはハナからそのつもりで、俺の隙をうかがっていたのだ。何のために? 決まってる。奴らの仕事は犯罪者から市民を守ること。犯罪を鏖殺すること。俺の愛する女たちを捕まえること。そして、今、俺は4人の女と共にいる。後頭部に右腹に左腕に腰に。
ボタン、キイロ、ユビキ、ミィとハヤシ。
俺から、女を。
俺の女を。
絶叫し、はね起きる。喉からサイレンのように声が吹きあがる。奴らが示した悪意は俺に「別れ」を強烈に予感させた。別れを。女との別離を。それは底抜けの空洞だ。魂に開く空洞。怒りでも、恐怖でもない。ただ大きな、ぼっかりと開いた穴。その黒々とした縁がどろりと溶けて俺の魂に混じり、熱に変換されて肉体を強制的に動かす。そうして生みだされたエネルギーは、化け戻りとしての俺の本質であるヒトの形、そして自我すらもその場に取り残し、敵に向けて俺の不定形の肉体を突進させる。
三つ編み女が吐きこぼした眼球を慌てて俺の肉体に向けて投げつけた。弾丸は、どろどろに融解している肉体を突き抜ける途中で焼き溶け、効果を発揮しない。目がなく表情に乏しいのでわからないが、三つ編み女はそれに驚いたようだ。それが、奴の失敗だった。アメーバ状の怒涛となった俺の肉体は、精液のシールドを跳ねとばし、逃げ遅れた三つ編み女を飲み込むと、そのまま渦をまいた。坩堝に挽き損ね外にはみ出た三つ編み女の腕やつま先や髪の房が、びちゃびちゃと床に飛び散った。
遅れて到着したヒトの形と自我を受け取り、俺はねじを巻きながら、頭を作り、肩を作り、胸を作り、腹を作り、腰を作り、脚を作り、立ち上がった。耐え切れないほどに強烈な嘔吐感。愛する女たちが、自分たちの肉体に交じってきたよそ者に嫌悪を示している。すまない。許してくれ。すぐ追い出す。ああ、愛してもいない女の肉なんて、なんの価値もない。言葉通り、反吐が出る。
「返すぜ、てめぇの同僚」
俺は体内で挽き潰した三つ編み女の残骸を、メガネ野郎に噴きつけた。挽き残したハンコを舌の上に残し、べろべろと見せつけてやる。同僚でできた吐瀉物を頭から被ったメガネ野郎は、辟易した様子で胸ポケットからハンカチを取り出し、眼鏡にこびり付いた血と肉をぬぐう。
その隙を俺がつくと思ったのだろう、談笑野郎がこちらに飛びかかってきた。相手をする必要はない。さっき首をへし折られた間抜けが既に起き上がっているからだ。ぶっとい右腕が、ぬうと割り込み、談笑野郎の襟首をつかむ。
「さすがは、ヒパティ。さすがは、ネクロの頼れる仲間。さすがは〈ぶっとい右腕のヒパティ〉だ」
ヒパティは棒切れのように談笑野郎をかつぎあげると、自分の巨体ごと窓に叩きつけた。バックドロップ。ガラスを派手にまき散らしながら、室外へと身を躍らせる。方向的に落ちる先は中庭か?「ネクロ、任せて!」とドップラー効果で声色を変えながら、ヒパティが窓の向こうで叫んでいる。「こいつのハンコはヒパティが手に入れる!」
「バラけられると面倒だっつってるんだよ……なあ!」
白濁色の刃が喉元に滑り込んでくるのを、俺は顎で挟んで受け止めた。童顔野郎は、一瞬を虚を突かれた後、刃を精液に溶かして戻し、抑えられた右腕を引っこ抜く。対応が早い。だが遅い。俺は既にその顔面に突き刺すナイフを振りかぶっている。だがそれも遅い。爆音・燐光・異臭を放ち、すっ飛んできたプラクタの膝が、ナイフより早く童顔野郎の胴体部に突き刺さる。壁を4、5枚ぶち破り、糸引く精液だけを残して小柄な肉体が部屋から消える。
『さすがは、プラクタ。さすがは、ネクロの頼れる仲間。さすがは〈ぶっとい右腕の……違った、鼬のプラクタ〉だ』
宙でくるりと回転し、プラクタは片足で器用に着地した。右脚は、自身の蹴りの衝撃で根元からふっとんでいる。
「てめぇ、どういうつもりだ?」
プラクタは壁に開けた大穴に親指を向け、俺をにやついた目で見て、ウインクした。『任せろ。あいつのハンコは俺が手』今度は我慢しなかった。胸倉をぶち抜き臓腑ごと脊椎を掴んで、大穴に向けて投げつけた。肉と肉がぶつかる破壊音。童顔野郎に命中したか? 屁と精液。汚物対決だ。勝手にやってろ。
「……さて」
邪魔ものを始末し終えた俺は、待たせていた相手を振り返った。ご自慢の黒スーツは反吐と肉片でずぶどろだった。室内も、千切れ破れた書類が降り積もり、ねじ曲がったデスクと筆記具、そして吹き飛んだ職員共の屍肉でめちゃくちゃだった。だが、眼鏡は既に磨き上げられ、髪型も整えられている。ネクタイに緩みはなく、その針金のように細く真っ黒なシルエットに揺るぎはない。
「……やはり、もう一度、挨拶をしておきましょうか」
凍りついた声と共に、眼鏡の奥の三白眼が細まった。破れた窓から吹き込む外気で室温が下がる。奴は両手の指を組み合わせると、その甲をこちらに向け、左手から中3本の指をずるりと引き抜いた。それは、奴と初めてやりあった時と同じ構えだった。そして、その背後に投影された名刺も、その時のものと全く変わらなかった。
「臓腐市役所 暗黒管理社会実現部 犯罪鏖殺第3課課長 ネアバス」
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市庁舎3号棟174階第1112会議室。進行中だった屍材職員製造活用部の会議に割り込んだ乱暴者は、入室時にねじとった部屋のドアを紙でも丸めるように握りつぶし、部屋の隅に転がした。資料投影中のプロジェクターをはたき落とすと、ピチピチのスーツに収めた筋肉質の腰を机の上に下ろす。
「1ヶ月前に予約を入れておかないと、大体どこの会議室も使えない。丁度空いていたとは、まったく運がいいな!」
乱暴者はそう言って、室内にいるもう1人……特徴の薄い青年に目を向ける。青年は乱暴者の野太い声に顔をしかめながら、「散らかった」職員たちの死体に目をやると、諦めたようにため息を落とした。転がった椅子を立て、座る。
「相変わらずめちゃくちゃするよね、ウォリアさん」
ガハハハ、とコミックキャラクターじみた大音声で乱暴者は笑う。
「俺は部長だからな」
「それ関係ある?」
「あるに決まってるだろ。部長は偉い。偉いと大体のことは許される。本当に組織ってやつは、バカバカしくて愉快なもんだ」
「知らないよ。それより、母さんに会わせてくれるんじゃなかったの?」
別に会いたくもないけどさ、と青年は小声で付け足す。乱暴者は、顎を傾け、首に生えた髭をひき抜きながら、まあまあとなだめた。
「しょっちゅう行方不明の市長サマが、久しぶりにご出勤なされるっつうんだ。部長直々にその愛息子を下宿先までお迎えにあがり、感動のご対面をセッティングしてさしあげるのは当然ってもんだろう」
「僕をちゃんと守ってるって、母さんに見せるためだろ?」
「今回はちょっと違う」
乱暴者は、引き抜いた髭を机に植えながら、所内で進行中の〈燃料〉の計画を青年に話した。ずっとつまらなそうにしていた青年は、それを聞いて初めて目を輝かせた。母の庇護下にあり続ける無限の時が、ようやく終わるのかもしれない……とでも期待しているのか。青白い肌が、興奮でやや赤みがかっている。
「……いいね。僕も賛成だ」
「そりゃ心強い。〈燃料〉本人のご賛同が頂けるとは」
「で、質問は戻るけど、母さんは? そういう話なら早く会いたいな」
まだ来ていない、と乱暴者は説明した。そもそも決裁も終わっていない。タマムシとコマチの困った顔。愉快だ。特に前者。ネアバスたちに命じ、しばらくゴネさせてみたがおもしろいことになった。乱暴者は先ほど入った部下からの通信を思い出し、にんまりと笑みを浮かべる。〈死なずのネクロ〉。市長と同じ肩書を持つ、「よく死ぬ方の」〈死なず〉……。
バッタもんではあるが、あのタッパはなかなかだった、と乱暴者は目を細める。〈指忌町のユビキ〉を殺したときの〈死なずのネクロ〉のあの背丈、あの体重。ユビキは町1つ分のデカさだから、それより少し小柄だったあいつは大体十数kmか。俺と比べたらチビであることには違いないが、それでも、マシだ。随分マシだ。今は縮んじまったらしいが、まだ山椒の粒くらいには楽しませてくれるんじゃないか?
自身の肉体を拘束するスーツをぶるりと震わせ、乱暴者はゆっくりと立ち上がった。青年がいぶかしげに視線をむけているのがわかったが、それどころではない。手ごたえと歯ごたえ。求めるものは永遠に変わらない。乱暴者にとって、この世の全ては軽すぎて、やわらか過ぎた。
「さっき通信が入ってな……」
青年に目を合わせないまま、乱暴者は言った。どんよりと鈍く曇った眼から、果肉がはじけるように獰猛な光が漏れる。〈死なず〉を殴りつけた時の肉の堅さを期待して、拳の重量が上がる。
「市民がうちの部署で暴れているようだ……。俺のかわいい部下をいじめている……。助けにいかないとな……」
「えっ、じゃあ、僕は?」
「すぐ戻る」
「ちょっと待」
青年の返答を待たず、乱暴者は体重を数100tにまで引き上げ、「落下」し始めた。紙細工のように床を破りながら、自部署のある階を目指す。ある棟の4階から別の棟の4階を渡るのに12階と2階を経由する必要も、隣の部屋に入るのに渡り廊下を全棟1周する必要もなかった。その乱暴者にとって、壁も床も、そして規則も関係がなかった。独断専行と命令違反。それが許される部長と言う立場を乱暴者は持っていた。それを許されるために、部長という立場を手に入れた。役職に伴う責任の重さなど、自分の体重と比べてみたら羽毛程の重さもない。
魂のレイヤー内に折りたたまれたその肉体の全重量は、約6𥝱トン。臓腐市最大の不死者……暗黒管理社会実現部部長〈星のウォリア〉は、臓腐市の皆さまのより一層の安心のためにでも、健康のためにでもなく、いつも通り、ただ自分のために行動し始めた。