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京都ママチャリ旅 京都到着編

この「京都到着編」は、前昨「道中編」の続編となっております。まだ読まれていない方は前作からお読み下さい。それでは「京都到着編」お楽しみください。

注)この話は卵かけご飯の話ではありません。旅のお話です。



実家からママチャリを5時間漕ぎたおし、ようやく今回の旅の目的地である「カオサン京都」というゲストハウスへたどり着いたのだった。着いた時はもうすでに辺りはすっかりと暗くなり、街も夜のモードに入っていた。

すっかり疲れ果てた僕は晩御飯をコンビニの弁当か何かで済ませようと思ったが、「いや、記念すべき初旅の晩御飯をコンビニ弁当で済ませていいわけがない」と自分に鞭を打ち、次は晩御飯を探す旅に出たのだった。鞭をうったと言えど、僕はMではない。ドMだ。これだけは勘違いしないでほしい。

晩御飯を探す旅は案外すんなりエンドロールを迎えることになった。2,3分の旅だったと思う。目に入ったお好み焼き屋にダッシュで飛び込んだのだった。

お好み焼きを注文し、美味しく頂いていたところ、僕の隣に一人の外国人女性が座った。そして、僕と同じお好み焼きを注文したのだ。これは話しかけるチャンスだと思い、僕が今まで学校で習った全ての知識を一瞬で頭の中で復習し、一生懸命考えて文を作り、心臓をバクバクさせながら彼女に言い放った。「ディスオコノミヤーキイズベリーグッド」。

これが僕の人生初ナンパの記念すべき一言目だった。

そんな僕のカタコトの英語にも彼女は笑顔で対応してくれた。少し話をすると、どうやら彼女は台湾から一人で来ているらしかった。まだ海外に行ったことがなかった当時の僕は、「一人で海外ってすごいなぁ」と小学生でも言えるようなことを思ったのを覚えている。

彼女はこの後は清水寺に行くらしく、僕は宿に戻りたかったのでそこでさよならをした。初めてできた海外の友達は名前も知らない台湾人の彼女だった。あの時連絡先の一つでも聞いておけばよかったと今になって思う。僕と出会ってくれてありがとう。

宿に戻った僕は「次は誰と話そうか」と次の僕の話し相手を、まるでライオンが獲物を見つけるかのように探していた。そして、僕の近くに座って来たアラブ系の男性に声をかけた。「ウェアーアーユーフロム?」。少し英語で会話ができるようになった今思うと、挨拶もなしにいきなり「出身はどこ?」だなんて、、なんて失礼なやつなんだろうと思う。当時の僕にビンタをお見舞いしてやりたい。そんな失礼な僕に彼は笑顔でこう答えてくれた。

「#$%&’%&%#’&」。

そう、全く何を言ってるのかわからなかったのだ。どこか違う星の言語を話しているのかと思った。何もわからなかった僕は笑顔で頷いて、彼とは反対方向にあったテレビをまるで大好きな番組を見るかのように見たのだった。もうだめだと思った僕は彼に「シィーユー」とだけ伝えて自分のベッドに戻り、その日は寝ることにした。あの時話しかけた彼に謝って、もう一度お話をしたいと今では思う。

翌朝僕は7時頃に起きたと思う。お腹が空いていたので朝ご飯を食べようと思い、モーニングを提供している喫茶店をスマホで検索した。するとかなり評価が高い「伊右衛門サロン」という名のお店がヒットした。あまりよく分からなかったが、とにかくお腹が空いていたので行ってみることにした。

お店に着くとそこにはお店に入るための列が外まで並んでいた。お腹が空いていた僕は別の店に行こうかと思ったが、「朝からこんなに並んで食べたい何かがここにはあるのか」と謎の好奇心が芽生え、僕も並んでみることにした。まんまと店側の作戦にハマってしまったが、そんなことはどうでもいい。

20分ほど待って席に案内してもらった。僕は列に並んでいた時から何を頼むかはすでに決めていた。もちろん店一番の大人気メニューだ。朝からこれだけ列をつくるお店の自信作を食べ逃すわけにはいかないと思ったのだ。店員さんが親切に僕にメニューを持って来てくれた。しかし、すでに決めていた僕は「1番人気のものをください」とだけ伝えた。すると店員さんは「当店1番の人気の品はこちらです」とメニューを開いて、手で指してくれた。手で指されたメニューの文字をみて僕は驚きを隠せなかった。そこには「卵かけご飯セット」と書かれていたと思う。もう2年も前の話だ、いくら衝撃だったとはいえメニューに書いてあるセットの名前までは覚えていない。とにかく卵かけご飯セットだった。なぜ卵かけご飯セットに僕が驚いたのだろうと思った人は多いと思う。理由は2つある。

1つ目は、「朝から卵かけご飯にこれだけの人が並ぶ?」と思ったこと。

2つ目は、僕は卵かけご飯が大嫌いだったのだ。

しかし、「1番人気のものをください」とほとんどドヤ顔に近い顔で言った僕は、「やっぱり違うものにします」なんて口が裂けても言えなかった。あれほどドヤ顔をしたことを後悔した日はない。店員さんに「じゃあそれでお願いします」となるべく笑顔で伝え、店員さんは去って行った。もちろん笑顔なのは顔だけだ。心は後悔の嵐だ。

しばらく待つとお姉さんが注文した品を持って来てくれた。

僕は運ばれて来たものを見て卵以外のものを食べようかとも思ったが、そんなことはしていけない。なんたってこのセットのメインは’卵かけご飯’なのだから。僕は覚悟を決めて卵をご飯の上に落としかき混ぜた。醤油を数滴垂らし、ご飯を口に運ぶ。そしてそれらをまるで味のないガムを食べるかのように咀嚼する。

「ん、、、?美味しいぞ?」。何が起こっているのかよく分からなかった。確かに卵かけご飯の味がした。しかしそれは美味しかった。感動した。

僕はそれらを一気に食べ終え、ごちそうさまをして店を出ることにした。僕は世界中の卵かけご飯ラヴァーと伊右衛門サロンに謝罪をしたい。あれ以来卵かけご飯は食べていないのでよく分からないが、恐らく食べれるようになったと思う。

お腹も満たされ、心も満足な僕は自転車に跨がり、次の目的地へと向かうことにした。次の目的地は世界遺産のうちの一つ「二条城」。



この「京都到着編」で完結の予定でしたが、思っていたよりも長くなってしまったので急遽、次回作「京都散策編」を書くことにしました。次回作もぜひお楽しみにしてください。



おかげさまでいつも楽しくやらせてもらってます。ありがとうございます! これからもどうぞよろしくお願いします。