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境界線

その日は確かに不思議だった。
小脇温め担当の小さな湯たんぽがなぜだか朝にはいつになく余所余所しかった。

100円ショップの湯たんぽに期待をしていいものか、そんなもんよと指先で笑っておいた方が傷付かずにすむのかの中間で私はゆらゆらとゆれていた。
私の期待とあきらめをちょうど裏切るように毎晩彼(か、彼女)は小脇から肩あたりを温めながら眠るまで、ちゃんと見届けてくれた。
うれしい裏切りだった。
その裏切りに私はどんどん甘えていった。
弄ぶように毎晩私は彼(か、彼女)を右へ左へ移動させて快楽の夜をすごした。

ふと目を覚まし、そっと手を伸ばした。
なぜだかいつもより彼(か、彼女)の態度は少し冷たかった。
その夜私は、少しだけ境界線をはみ出した。

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