4年前に起業してエンジェル投資家に出資いただいた会社を畳みました
タイトルの通りですが、2022年をもってトークンハウスを運営する株式会社22を畳みました。
もともとは「月額5000円で世界一周できる世界をつくる」というキャッチコピーで、独自トークンを活用した海外シェアハウスの運営を2018年8月からスタートしたのですが、最大4拠点まで展開した後に、コロナの影響もあり海外シェアハウスは全て閉鎖し、2020年11月からは広島県の尾道市でシェアハウスを運営しつつ、オンラインコミュニティを中心に運営を継続していました。
今回、会社を畳む判断をしたのは「それが最適解だと思ったから」です。
正直、会社としての成長は追えておらず、直近2年は「いかにコミュニティを永続的に残していけるか」という観点で運営を進めていました。
その中で、「コミュニティを持続させていくために法人である必要はない」という結論に至りました。
当初、思い描いていた状況とは程遠いですし、期待してくださった株主やメンバーの方には申し訳ない気持ちもありますが、個人的には今回の経験を糧に次の挑戦に向けて歩みを進めていきたい気持ちのほうが強いです。
今回の選択に関して、株主にも納得いただき次の挑戦に向けて応援いただいてる状態で、参加メンバーにもこれからの運営に関して納得いただき、すでに自律的に運営が持続している状態です。
前置きが長くなりましたが、今回「なぜnoteを書くことにしたか」というと、自身の振り返りとあわせて「これから起業する人の参考になればいいなと思ったから」です。
僕たちの場合は最初からEXITを期待されていたわけでもなく特殊な形での起業だったので、あまり参考にならないかもしれませんが、1つの事例として書き残していきたいと思います。
▼失敗の原因を振り返る
そもそも会社が潰れる理由は大きく分けると以下2つです。
1.資金繰りの問題
2.経営陣の判断
1の場合は「お金が足りなくて倒産せざるを得ない」というパターン。
2の場合は「経営陣が判断して会社を畳む」というパターン。
会社を畳む時は多くの場合が1のパターンだと思いますが、
今回の僕たちは2のパターンでした。
これは、どういう時に起こるかというと2つの観点があります。
1.事業の問題
2.人の問題
1でいうと「事業が思うようにいかず、V字回復の見込みもないので、首が回らなくなる前に会社を畳む」というパターン。
2でいうと「経営陣が分裂し、事業の継続が難しくなったので、後から揉めないように会社を畳む」というパターン。
今回の僕たちは1のパターンです。
せっかくなので「事業が思うようにいかなかった理由」を「事業/人」「内部要因/外部要因」の4つの事象で簡単に整理してみます。
こうやって整理してみると「うまくいかなくて当然」と思えます。
そもそもの出発点が「売上を伸ばさなくても、小さい経済圏をつくり、その中でトークンを循環させれば、成立するのでは?」だったので、「会社として、どう売上を伸ばしていくか」という視点は最初からありませんでした。
最初に掲げた「売上を伸ばさなくても、小さい経済圏をつくり、その中でトークンを循環させれば、成立するのでは?」という実験の振り返りをすると
「トークンを循環させるのは難しすぎる…!」でした。
トークンハウスがやろうとしていたことは『価値観のあうメンバーだけをコミュニティに入れて、その中でのやり取りにトークンを使用する』というものでしたが、一言でいうと「トークン自体の価値を高めること」がうまくいきませんでした。
「コミュニティ内の小さい経済圏であれば、コントロールしやすいのでは?」と思ってましたが、むしろ「ネットワーク効果がなければ価値は高くならない」ということに気づき、そこからは規模のジレンマが発生しました。
トークンの価値を高めるためには、もっと使う人を増やし、使える場所を増やし、使う機会を日常的につくり、使いやすくし、使いたいと思えるものにする必要がある。
のですが、そもそも開発力も資金力もなかったので「価値観があう人たちのみを招待する」というルールで人数を一定制限しながら、既存ツールを使用しカバーできない部分は、メンバーの善意を信じるというアナログなルールで運用していました。
その結果、僕たちは規模を捨てて「より良いコミュニティを育てる」という方向に舵を切りました。
もとのビジョンが「あったかい居場所を世界中につくる」というものだったので、トークンエコノミーもあくまで手段の1つだと。
なので、トークンが機能しなくても、シェアハウスがなくても、価値観のあう利害関係のないメンバーが有機的につながるコミュニティを目指すのが最優先だと思ったんですね。
このあたりから、「会社の存続」と「コミュニティの持続性」を切り離して考えるようになっていきました。
というような背景があり、「会社を成長させていく」というモチベーションではなく「いかにコミュニティを長く残していけるか」という思考になり、会社を畳むことになりました。
現在は『トークンハウスコミュニティ』として、Discord上に存在しており、完全無料の招待制で30名ほどのメンバーとワイワイしています。
「あったかい居場所が世界中にもっと増えたらいいよね〜」という穏やかな価値観を持っている方は大歓迎なので参加希望の方はツイッターからDMください。
(どうしても入りたい!という熱量の方だけでお願いします🙇♂️)
なので、会社を畳むことを後悔はしていないのですが、「次やるときは、ここに気をつけよう」という点がみえてきたので、それを次にシェアしていきたいと思います。
▼失敗しないため気をつけるべきこと
1.ビジネスモデルをシンプルにする
2.インセンティブ設計を甘くみない
3.ゴールを明確にする
今回の経験で特に感じたのは上記の3つです。
簡単に解説していきます。
1.ビジネスモデルをシンプルにする
これは超重要です。
ビジネスモデルをシンプルにするということは、
センターピンをみつけやすい
第三者が説明しやすい
仮説検証をまわしやすい
という3つのメリットがあります。
トークンハウスでいうと「オンラインコミュニティに月額費を払って参加する→トークンがもらえる→トークンを使ってシェアハウスに泊まれたりする→コミュニティ内でトークンを稼げたりする」みたいなビジネスモデルで、「トークンの価値が高まればメンバーも増えて、メンバーが増えればトークンの価値も高まる」というイメージだったんですが、この肝となる「トークンの価値を高める」というのは、1つの経済圏を作り出すようなもので、そこの戦略を完全に甘くみてました。
経済圏をつくるってのは、初手でやれることではありません。
例えば楽天なら、ECを抑えて、証券、銀行、クレカを抑えて、QR決済やモバイルなど展開しているように。
メルカリなら、フリマを抑えてからQR決済を攻めているように。
まずは1つC向けのサービスで生活に溶け込んだうえで、決済を攻めていくのが常套です。
それを資金力も開発力もない企業が、いきなり経済圏を作ろうとするのは無謀すぎました。ただでさえ限られたリソースの中で、やることが1つに絞れないとジリ貧です。
また、第三者に説明しにくいサービスは口コミを獲得しづらいので拡散されにくいです。これもC向けのサービスにおいては致命的です。
2.インセンティブ設計を甘くみない
特にこれから起業する人に気をつけてほしいです。
僕たちは「おかねは稼がない、おかね以外を稼ぐ会社にする」というスタンスでスタートしていたので、売上はコミュニティに還元しながら、役員報酬は最低限の金額で、それも途中からはゼロにして運営してました。
当然、僕たちにも生活があるので、トークンハウスだけでは食っていけず、最初からWワークで取り組んでました。
調子が良いときは、それでも問題なかったのですが、まちがいなく優先順位は下がります。
本業のほうが忙しくなったり、問題が起きると、そっちが優先されます。
そして、それが「仕方ないこと」になってしまいます。
お金のために事業をおこすわけではなくても、「フルコミットしたくても、お金が理由で出来ない状態になってしまう」というリスクは織り込んで考えるべきでした。
上記は運営側のインセンティブ設計ですが、もちろん参加メンバー側のインセンティブ設計も超重要です。
細かく話せばキリがありませんが、基本的に「善意に頼る」というのは最終手段であって基本設計に組み込むのは甘かったなと。
メンバーの善意に甘えて、ボランティアのような状況が続いてしまうと持続性が著しく下がります。
3.ゴールを明確にする
これは特に出資を受ける方に気をつけてほしいです。
僕たちは「エンジェル投資」という形で5名の投資家の方から出資いただき、事業をスタートさせましたが、昨今はクラウドファンディングで資金調達して事業をスタートするパターンも増えていると思います。
多かれ少なかれ、『他人様からいただいたお金を使って事業をする』ということには変わりないので、責任の所在は明らかにしておくべきだと思います。
僕たちは出資時に「おかねは稼がない、おかね以外の価値を稼ぐ会社にする」という話をしていて、「ようわからんけど、なんか面白そうやし頑張れ!」というスタンスで出資いただいてました。
なので、出口戦略は初めからなく、金銭的なリターンを求められないという稀なケースでした。
投資家の方々の寛大な心に感謝するしかないのですが、そういう背景でスタートさせていただいたので、株主と揉めることなく今回の着地に至りました。
会社としてはこれで一旦終了しますが、トークンハウス自体はこれで終わりだとは思っておらず、コミュニティ自体は永続的に残るよう自律した運営体制で続いています。
初期から一貫して「価値観のあう人だけ招待する」ということを貫いていたので、今も残っているメンバーは、家族のような存在になっています。
血のつながりもなく、年齢も職業も居住地もバラバラだし、オフラインでは一度も会ったことのない人もいるのに、家族のような心理的安全性がある関係性はプライスレスだと思うので、永続的に残していきたいと思っています。
▼これから起業する人へ
会社をつくること自体は、何も難しくありませんし、ただの形式なので特別な意味もないと思ってます。
実際、僕も今回畳むことになった株式会社22とは別で、個人の会社を1社持っています。社員もいないので、今は個人事業主みたいな感じですが、今後その会社で何か新しい事業をおこしていくかもしれません。
もしくは、新会社を設立して、色んな方を巻き込んで、新たな挑戦を仕掛けていくかもしれません。
つまり、会社をつくるかどうかは、あくまで手段の1つなので、そこまでこだわる必要はないと思います。
起業が目的になってしまうと本末転倒です。
ただ、なるべく早いうちに失敗しておかないと、失敗できない体質になってしまうので、これもまた危険です。
生きている限り、いつからでも挑戦していけるので、成功や失敗に囚われすぎず、一歩踏み出すことが大事だなと思ってます。(自戒を込めて)
これから起業する人にとって、少しでも参考になるものがあれば嬉しいです。
▼宣伝
最後に1つ宣伝をさせてください。
コーチングについてです。
2020年からZaPASSでコーチングを学び、現在はZaPASS認定プロフェッショナルコーチとして、コーチングを提供しております。
僕のコーチングは経験学習モデルに基づいた「行動促進タイプ」のコーチングでして、「1ヶ月の振り返りから深堀っていき、学びを言語化していくことで、次のアクションプランを決めていく」という流れで、毎月定点観測していくのを基本としております。
ただ単にアクションプランを決めていくというよりは、その奥にある内面の変化に着目しながら深い内省につなげていくというイメージです。
『挑戦する人生の伴走者でありたい』という願いを持ってコーチングをやっているので、ビジネスに関するテーマだけでなく、クライアントの人生に向き合って伴走させていただいてます。
コーチングはコーチが一方通行に何かを教える時間ではないので「とりあえず試しに受けてみようか」という受け身のスタンスでは何も生まれません。
なので、最低3ヶ月〜の契約になりまして、体験セッションも現在は基本的にやっておりません。
僕のことについては色んな場で発信しているので、下記の記事を読んでいただいて、ビビッとくるものがあれば、その時にご連絡いただけると嬉しいです!
1人1人の人生と向き合うため、提供できる人数には限りがありますので、ご了承いただけますと幸いです。
▼参考記事
今なにかに挑戦している人や、これから挑戦していきたいと思っている人であれば、誰でも大歓迎ですので、よろしくお願いいたします。
※「コーチング関係なく話してみたい!」という方もウェルカムです!
ツイッターのDMからご連絡いただけると嬉しいです。
普段カンボジアのカフェで1杯3ドルのコーヒーを飲みながらnoteを書いてます😌受け取ったサポートは全てコーヒー代に充てさせて頂いてます。いつもサポートして頂いてる方に感謝です🙇♂️