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創作おとぎ話 うさかめサイコロジー 運動会篇<連続3日掲載:中篇>

前回までのお話) 動物村では秋に毎年運動会を実施している。その名は『オウリンピック』。運動好きのウサギ一族はスタジアムの建設を買って出た。いろいろ問題はあったもののスタジアムは完成し、何とか運動会当日の朝を迎えることができた。
 

 
青く高い空にいわし雲の応援団がにぎわいを見せる中、動物村の運動会『オウリンピック』の始まりを告げる号砲が鳴り響きました。
 
選手宣誓は、内向型のカメ。
人前で話すことが苦手なので、昨晩からずっと緊張しっぱなし。
フィールドに設置された台に向かって一歩、また一歩とゆっくり歩いていきますが、もはや感覚がありません。
心臓はドキドキ、口は乾いて、額には冷や汗がにじんでいます。
来賓席の前を通ると、学校の先生が座っていて、頑張れのポーズを必死に送ってくれています。
 
さあ、宣誓の台に上がりました。
ちらっと横目で来賓席の方を見ると、先生と目が合いました。
よし!言うしかない!
 
「せんせい!・・・・トイレに行ってもいいですか?」
 
カメは手を挙げて、宣誓で先生に呼びかけました。

 
【ワンポイント心理学】
緊張や不安があると気がつかないうちに呼吸が浅くなってしまう。特に息を吐く時間が短くなっており、そんなときは腹式呼吸で、ゆっくりしっかり息を吐き切り、ゆっくり吸って、またしっかり吐き切って・・・。意識を呼吸に集中して何回か繰り返すと気持ちが落ち着く。
 
 
トイレから戻ったカメが無事宣誓を終えると、競技が始まりました。
 
最初の種目は、「つなひき」。
 
力自慢を揃えたゴリラチームと犬ぞり経験者を揃えたイヌチームが対決します。
予想ではゴリラチームの圧勝ではないかと言われています。
ゴリラたちも、どこか余裕の表情。
対するイヌたちは、綱の先をそりに結び付け、全員で一気にそりを引こうという作戦。
 
用意・・・・・・・・・・・・・・バン!
 
と、ピストルが鳴るやいなや犬ぞりが一気にスタートダッシュ!
ゴリラたちの手から綱がスルスルと抜けていきます。
 
イヌチームの勝利!
 
ゴリラチームはお互いの顔を見合わせ、手を抜いたのは誰だと言わんばかりです。
 
「これは、“社会的手抜き”というやつじゃな」
審判のフクロウがつぶやきました。

 
【ワンポイント心理学】
一人ひとりは怪力自慢のゴリラたち。自分しかいない1対1の戦いではそれぞれ圧勝していたかもしれませんが、集団でのチーム戦となったとき、他の人もいるから大丈夫だろうとの心理が働き、各自一人のときよりパフォーマンスが落ちることがある。これを「社会的手抜き」という。
 
 
最強のゴリラチームが敗れるという大波乱に、会場は大盛り上がりです。
勝ったイヌチームには「王林」が贈られました。
 
続いての競技は、「うさぎ跳び」です。
優勝候補のウサギチームがウォーミングアップを始めました。
ぴょんぴょん飛び回るウサギたち、調子はすごぶるよさそうです。
 
しかし、そこには予想外の結果が待ち受けていました。


(明日につづく)


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