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台湾語の知識がないことからくる誤解

 90年代の台湾映画「少年吔,安啦!」のリマスター版が最近台湾で上映されたらしいが、ある日本人がこの映画を以前日本で見たことがあるようで、「あの映画の主人公の不良少年が抗争相手を銃で脅しながら言う”lin pe”の日本語字幕が「お前の親父」になってて笑ったの思い出しました」と、僕ならわかると思ってか、僕にツイートしてきた。”lin pe”を日本語にするなら「俺」とか「俺様」だと思う。恐らく、字幕の漢字表記が「恁爸」になっていて、それが英語に翻訳された時に「your father」になってしまって、それを日本側で「お前の親父」にされたんだと思う。あるいは、漢字表記の「恁爸」から直接日本語の「お前の親父」に翻訳されたのかもしれない。
 一時期、日本人の間で台湾の果物屋さんでのパイナップルやスイカの売り場で「自殺」と書いた札が掲げてあると話題になったが、その説明をネット上で「自殺は台湾語で自分で果物を切り分けること。だから果物を切ってもらわないで、丸ごと買うこと」と書いている日本人が多かった。これも台湾語を知らないから起こるいい加減な説明だ。果物屋さんで見かける「自殺」「他殺」の意味がわからず、身近な台湾人に聞いたら「あれは台湾語で、自殺は自分で切ることで、他殺はお店の人に切ってもらうことだよ!」みたいな説明しかされなかったから、「自殺」「他殺」そのものが果物を自分で切る、人に切ってもらうを表す台湾語だと勘違いしてしまう。あれは台湾語の「自分で切る」とか「他人が切る」という表現を漢字でどうやって書くか知らなくて、ちょっとふざけて「自殺」「他殺」と書いているんだと思う。台湾語で”殺す”を表す動詞「刣 thâi:タイ」には大きくて切りにくい果物を切り分けるという意味にも使える。たぶん刣という字を知らなくて、面白おかしくしたいこともあって、わざと「殺」という字を使っているのだろう。

 これらは日本人が中国語だけの知識で台湾語の知識はないという状況で起こる、いい加減な翻訳や説明の例。台湾人も日本人は台湾語が全くわからないと思っているから、日本人に聞かれたら台湾語発音は使わないで、中国語で説明したり、中国語の漢字表記で説明するから、中途半端な説明になってしまうし、日本人側も台湾語の正確な発音をいつまでも覚えないし、中途半端な理解のままになってしまう。

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