見出し画像

台湾料理の朝食店

 台北市内や新北市内の朝食店として、豆漿店(中華式朝食店)、西式早餐店(台湾式洋風朝食店)の他に目立つ存在は、主に菜市仔(chhài-chhī-á:ツァイチィアー)と呼ばれる伝統的な朝市の中やその付近、そして、廟やお寺の付近にある台湾料理系の朝食店(食堂や屋台の形態)である。元々は朝市に買い物に来た人や廟やお寺にお参りに来た人のために飲食店が集まったのであろう。営業時間はだいたい早朝6時前後から午後の1時頃までである。

台北で人気がある朝食店の入口
台北で人気がある朝食店の店内
朝市の中の朝食店

 こういう店では極めて台湾らしい食べ物が販売されている。台北市内や新北市内で台湾らしい食べ物が食べたければ、午前中にこの類の食堂や屋台へ行くのがいい。簡単な麺料理「切仔麵:chhe̍k-á-mī(チェッガミィ=薬味だけで具がほとんど入っていないシンプル麵)」「乾麵:ta-mī(タァミィ=汁無し和え麵)」などや「米粉湯:bí-hún- thng(ビィフントゥン=太ビーフン入りスープ)」 「粿仔條:kóe-á-tiâu(クエアティアウ=平たいライスヌードゥル)」などの料理、そしてその物配(mi̍h-phòe:ミィポエ=ご飯や麺類のお供にするおかず)として、茹でた豚の内臓類、肉類、青野菜などを販売する店が多いが、実は他にもいろいろな料理が朝食として販売されている。

切仔麵&三層肉(具なしスープ麵と茹でた豚バラ肉)
乾麵&肉羹(汁無し和え麵と豚肉のとろみスープ)
粿仔條&豬肺&番薯葉仔(平たいライスヌードゥルと豚の肺と薩摩芋の葉)
豬心麵(豚の心臓入りスープ麵)
朝食店で売られる豚の内臓
腰子と腰尺(豚の腎臓と脾臓)
生腸と豬肺(豚の子宮・卵管と肺)
頭骨肉(豚の頭部の肉)
紅燒肉(紅麹を使った豚バラ肉の揚げ物)

たとえば以下のようなものがある。
 涼麵(liâng-mī :リャンミィ=一般的に戦後に普及したと言われる、ゴマだれをかけた常温の中華麺)と台湾式味噌汁(日本文化の影響)を売る店や壽司(sú-sih:スゥシッ)、つまり日本の影響を受けた台湾式の巻き寿司、稲荷寿司の店、甜不辣(thiǎn-pú-lah:テンプゥラァッ=台湾式薩摩揚げを煮たもの)や 碗粿(oáⁿ-kóe:オァクエ=インディカ米の粉を溶いて液状にしたものを蒸したもの)などを売る店、そして肉糜(bah-môe:バァモエ)や鹹糜(kiâm-môe:キャムモエ)と呼ばれる肉や野菜の細かい具が入った塩味の効いたお粥、清粥(Chheng-môe:チイェンモエ)と呼ばれる具が入っていない白粥と物配(mi̍h-phòe:ミィポエ=お粥のお供になるおかず)を販売する店だったり、油飯(iû-pn̄g:イウプン=水に浸したもち米を豚肉やシイタケなどと炒め、味付けしてから蒸した台湾式おこわ)や 肉羹(bah-kiⁿ/ bah-keⁿ:バァキィ/バァケェ=豚肉のとろみスープ)の店などもよく見かける。

 肉羹とは蓮藕粉(liân-ngāu-hún:レンガウフン=レンコンの粉)、蕃薯粉(han-chî-hún:ハンチィフン=さつまいもの粉)、太白粉(thài-pe̍h-hún:タイペェフン=片栗粉)などを使ってとろみを効かせた豚肉入りスープだ。豚肉の表面に魚のすり身を巻き付け、加熱した(片栗粉などの衣をつけて加熱しただけのものもある)“つみれ”のようなものを入れてあるが、豚肉自体もミンチにし、魚のすり身も加えて加熱したものを使っている場合もあるし、すり身も衣もつけていない豚肉を使う店もある。そして、これらの豚肉の加工食材自体を「肉羹」という名称で呼んでいることも多い。

涼麵と台湾式味噌汁
壽司(台湾式巻き寿司と稲荷寿司)
甜不辣(薩摩揚げ類)
碗粿(米の粉を溶いたものの蒸しもの)と壽司(巻き寿司と稲荷寿司)
碗粿(米の粉を溶いたものの蒸し物)
肉糜(肉がゆ)と蚵仔酥(牡蠣フライ)
清糜と角豆・麵麶・素腰子(お粥、オクラ、グルテン加工食品類)
肉糜(肉がゆ)と紅燒肉(紅麹を使った豚肉の揚げ物)

 これら台湾らしい料理を提供する朝食店は、店によっては提供する料理の種類が非常に多いので、正午前に行って早めの昼食にすることもできる。しかし人気店である場合は、昼までに人気料理が売り切れてしまっていることも多いので、なるべく早い時間に行くことをお勧めする。

 興味深いことにこれらの飲食店は伝統的な市場や寺廟の近くにあることや戦前から台湾本土系の住民が多く住む地域にあることが多いからなのか、店員さんもお客さんも台湾語での会話が中心である。20歳代の若者やそれ以下の学生や子供、外国人に見られなかったら、店員さんや他のお客さんから台湾語で話しかけられることが多い。中国語が少し混ざってチャンポンになることはあっても、中国語のみで会話する光景はあまり見かけない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?