見出し画像

2023年1月11日と18日の2回に分けて割包と潤餅について、片倉佳史さんと対談しました。

割包 (koah-pau コアパウ) / 別名:虎咬豬 (hóo-kā-ti ホォカァティ)

 割包 (koah-pau コアパウ) は水と中力粉と酵母、砂糖、サラダ油などを混ぜ、捏ねて、引き伸ばし、生地を作り、小分けにし、細長い楕円形に整形して、それを二つ折りに重ねたものを蒸して作った白い蒸しパンに豚バラ肉の醤油煮込みと鹹菜 (kiâm-chhài) とピーナツの粉 ( 土豆仁麩 thôo- tāu-jîn-hu) と砂糖を混ぜたもの、芫荽 (iân-suinn コリアンダー) を挟んだ食品です。

 レストランや屋台で注文する時には豚肉は脂身の多い部分=肥肉 (puî-bah) がいいか、脂身の少ない部分=瘦肉 (sán-bah) / 赤肉 (chhiah-bah)がいいか選べます。店によってはお客さんの更に細かい指示に答えてくれるところもあります。ちなみに僕は脂身がすごく多い肉が好きです。脂身を完全に避けると硬くてパサパサした肉の場合があります。

 虎が豚肉を咥えているように見えるので、虎咬豬 (hóo-kā-ti ホォカァティ) という別名もあります。

 割包 (koah-pau コアパウ) 潤餅捲 (lūn-piánn-kauh ルンピアカウッ=生春 巻き) と共に、旧暦(農暦)の正月前、土地公 (thóo-tē-kong 土地の守護神で財をもたらす神) を一年の最後に拝む行事である尾牙 (bóe-gê ボエゲェ) の時(農暦12月16日)に準備されます。
 
 パンの形が虎の口に似ていて、財布にも似ています。そして虎 (hóo)福 (hok)の台湾語発音が似ていることから、一年間に起きた悪い出来事を全部食べて、悪い運気を消し、来年は順調に物事が進み、財と幸せを噛み続る事ができる、大儲けができるという願いが込められています。また商売をしている人は商売上、善意の嘘をつくことがあります。一年間ついてきた善意の嘘は全部食べて飲み込んでしまうという意味もあるそうです。

 また、現代社会では企業などの忘年会も尾牙 (bóe-gê ボエゲェ) という名称で表現しています。

 僕は26年前、台北生活を始めたばかりの半年間は台湾人家庭にホームステイだったんですが、ちょうど旧暦のお正月期間をその家庭で体験しました。その家庭は元々台湾南部の嘉義 (Ka-gī)の出身の人たちで した。嘉義 (Ka-gī)の風習なのかはよくわかりませんが、農暦の大晦日の日に大量の割包 (koah-pau コアパウ) 潤餅捲 (lūn-piánn-kauh ルンピアカウッ) を準備していたのが、強く印象に残っています。

割包 (koah-pau コアパウ)
割包 (koah-pau コアパウ)

 潤餅捲 (lūn-piánn-kauh ルンピアカウッ/ jūn-piánn-kauh / lūn-piánn) は台湾式の生春巻きです。lūn=ルンの漢字表記のkauh=カウッの漢字表記のは当て字です。もともとnńg-piánn =ヌンピア=軟らかい餅と言っていたのがルンピアに訛ってしまい、” 潤 ” という字が当てられるようになったという説もあるようです。シンガポールにも類似した食品がありますが、薄い皮を使うので、薄餅 (po'h-piánn ポッピア) と呼ばれています。kauh=カウッは巻き込むという意味で、左側に、右側に(きょう)と書く、当て字を使う人もいます。

 潤餅捲 (lūn-piánn-kauh)の皮は水と強力粉と塩をかき混ぜて、ドロドロの液状にしたものをフライパンやホットプレートに薄く塗りつけ、焼いて作ります。この皮の大きさも台湾北部と南部では違い、南部の方が少し大きいようです。皮はできたものを市場でも変えるし、ネットで業者から買うこともできます。最近では1枚あたり6元ぐらいのようです。皮で包む食材も地域や家庭、作る人によって若干違います。北部では干し豆腐、炒めた卵、ピーナツの粉と砂糖を混ぜたもの、干し大根、モヤシやキャベツを湯がいたもの、そして以前の対談でも紹介した紅燒肉 (âng-sio-bah 赤い酒粕を混ぜた衣をつけて揚げた豚肉)を包むのが一般的のようです。最近、自宅近所の屋台で買ったものには、モヤシやキャベツを湯がいたもの、干し大根、干し豆腐、ニンジン、炒めた卵、ピーナツの粉と砂糖を混ぜたもの、紅燒肉 (âng-sio-bah)、肉酥 (bah-soo 肉でんぶ)、黒胡麻、芫荽 (iân- suinn コリアンダー) が入っていました。
 
 中部ではカラシナの漬物を入れたり、南部では腸詰をいれたり、醤油で煮込んだ豚肉を入れた り、油麵 (iû-mī かんすい入りの黄色い台湾麵) を入れたりします。

 妻のお母さんは南部出身なので、 自宅で潤餅捲 (lūn-piánn-kauh) を自分で作る時は炒めた油麵 (iû-mī)を入れます。妻の実家では旧暦の大晦日(二九暝 jī-káu-mê)にも潤餅捲 (lūn-piánn-kauh) の皮を用意することがあるんですが、その時は各自、油麵 (iû-mī かんすい入りの黄色い台湾麵) の焼きそばを入れて巻いたり、他の野菜の炒め物を入れたり、自分の好きなおかずを入れて食べます。焼きそば入りの潤餅捲 (lūn-piánn-kauh) はなんだか日本の焼きそばパンみたいな食感になります。

 潤餅捲 (lūn-piánn-kauh) は一般的に清明節(お墓を綺麗にして、祖先を拝む行事)に用意される食品で、農作物の豊作を願いますが、北部の商売人は旧暦の正月前、土地公 (thóo-tē-kong 土地の守護神で財をもたらす神) を一年の最後に拝む行事、尾牙 (bóe-gê ボエゲェ) の時(農暦 12 月 16 日)にも用意します。北部の人はこの尾牙 (bóe-gê ボエゲェ) の時、潤餅捲 (lūn-piánn-kauh)を用意して、土地公 (thóo-tē-kong 土地の守護神で財をもたらす神)を拝むことで幸福を願うそうです。

潤餅捲 (lūn-piánn-kauh)
潤餅捲 (lūn-piánn-kauh)
潤餅捲 (lūn-piánn-kauh)
潤餅捲 (lūn-piánn-kauh)の断面
焼きそばを潤餅捲 (lūn-piánn-kauh)の皮にのせたところ。下の写真は潤餅捲 (lūn-piánn-kauh)の屋台。赤い肉片は紅燒肉 (âng-sio-bah 赤い酒粕を混ぜた衣をつけて揚げた豚肉)
潤餅捲 (lūn-piánn-kauh)の皮を焼いているところ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?