白杯|アポロ賞六句(第四位)ジランケン
漱石の猫が最後に見た月か
ジランケン
歳時記を買った。
きれいな季語を見つけ
使いたくて一句作る。
秋の山野や庭で見る小鳥たちを
色鳥と言うそうだ。
嫌いだった季語が
面白くなってきている。
☆第一回みんなの俳句大会銀賞受賞
(伸びきった猫を迂回の藍浴衣)
◎講評
漱石の猫が最後に見た月か
今回大会では、選者五名がそれぞれ名無しの俳句リストを見て上位句を抽出した。
だれがどんな投句をしたかわからない状況だったが「もしかしたらこれはあの人かな」と思わされる句がいくつかあった。
しかしこれは予想が外れた。
猫への愛が句に良く反映されているが、前回作品の生活感とはギャップのある風格。
このままで見事に完成されているが、少し別のバージョンも作ってみよう。
漱石の猫も最後に見し月か
「猫が」を「猫も」に、「見た」を「見し」に変えると意味と雰囲気がずいぶん変わる。
より良い推敲の余地があるかどうか考えてみると、原句の風味の秘密を覗ける。楽しい。
どんな月も、この世を去っていくものが最後に見た月だ。
しかしこの当然の理屈、普通に生きている限りいちいち考えたりしないし、気付きもしない。
作者の鋭敏なアンテナが、世界の小さな真実を捕えた。
手に入れた素材は、これまで地道に培った句力で、みごとな作品に仕立て上げられた。
夏目漱石と彼の愛した猫へのリスペクト。
そして単なる月、この夜空に唯一無二の美。
和心を読者と共有しようとする姿勢が見えた気がした。文人の誇りを感じた。
出会えて良かった!ありがと🙌
ラブあんどピース🏆
アポロ
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