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無理しない、なんて無理。

こどもが産まれたばかりのとき、「無理しないでね」と言う夫の劣悪さについて友達と話したことがある。

産まれたばかりの子は、24時間体制で手がかかる。乳母もいない一般家庭では「無理をしなければ」育てることはできない。

そんな大前提がある中で「無理しないでね」という発言の意図とは。

「僕は、無理しないでね、と心優しいアドバイスしましたからね、あとで何かあっても、僕に当たらないでくださいね」という予防線を張っているだけなのだ。本当に無理をしてほしくないのだったら、己が無理をして、子育てや家事のいくつかを代わるしか方法はない。それをせずに「無理をしないでね」という声かけだけして免罪符を得ようとするとは、なんたる悪行。

もし夫本人にそう言ったら、違う違うと否定しただろうけれど、「自分は何もしたくないけど、妻にも無理をしてほしくない」という矛盾についてちゃんと考えていないから、こんな発言になるんじゃないですか、と詰め寄りたい。

産後クライシスの話はさておき、「無理をしない」ということは、本当に難しいことだと思う。

勤め人であれば、目の前に仕事があればやるしかない。私のような子育て中の主婦であれば、無理をしなければどんどん自堕落になり、不健康になり、こどもの勉強だとか発育環境も荒れていく。

起きたくないけど起きるし、やりたくないけどやる。

人生は、無理なのだ。

夫の弁護を一応しておくと、2人目、3人目とこどもが増え、さらに2人目に障害があることもわかり、私がそれらの困難さに身も心もどんどん削られていく過程で、夫は育児と家事にだんだん参加するようになった。家事も育児もあまり得意な方ではないと思うのだが、自分なりのやり方で精一杯やってくれている。

それはそれでとても助かって感謝しているのだが、夫は勤め人である。仕事がものすごく忙しい時期などは、休日は寝て過ごしたいだろうと思う。私が元気いっぱいだったら、「お父さんは疲れているから寝かせておいてあげようね」と言えるのだが、残念なことに、私が風前の灯火なので、今の夫は「無理をして」土日も頑張っている。

障害のある2番目、ニンタは6歳だけれど、知能も運動能力も3歳くらいだと思われる。3番目のミコはまさに3歳。3歳の双子を育てたことはないが、たぶん、3歳の双子くらいには大変なんだろうと思う。ニンタは障害児一時預かりなどを利用できるので、もしかしたら元気一杯の3歳双子育児よりも、助かっている場面があるのかもしれない。

それでも無理なのだ。無理の連続だ。こどもの遊びにつきあい、三食作って食べさせ、薬を飲ませ、トイレ歯磨き入浴など身の回りのことをケアし、家の片付けや掃除洗濯皿洗いをするだけのことが。

こどもたちは、遊んで散らかして泣いてケンカして飽きてぐずって、をエンドレスで繰り返す。許されるならば、今すぐここで気を失いたい、と何度も思う。

もう、家族全員で白旗をあげるしかないんじゃないだろうか。夫はプライドも高いし弱音も吐かないので、絶対にそんなことは許さないと思うが、頼りない妻と手のかかるこどもを抱えて、どこまで耐えられるのか?と、自分が原因の一端にありながら、心配になる。

家族全員で白旗をあげる、ということは、どんな方法があるんだろうか。仕事をやめて一家で田舎に移り住み、自給自足?…いや、それは今よりもっと過酷な気がする。とすると、一家離散。こどもは施設や親戚にひきとられ、夫は一人暮らし。私も今から就職活動だ。

白旗をあげても、ぜんぜん救われない。

そういえば、「ホームレス中学生」という本が売れた時、作者である芸人さんが「今日でうちは解散!」と急におとうさんが宣言して逃げてしまったことから始まった、と話していたっけ。

逃げたって何にもならないのだけど、とにかく逃げたかったんだろうな、と、今はちょっとそのときのおとうさんの気持ちがわかる。

他の人が書いたnoteを見ていると、無理な人生に心底疲れ切ってしまっている人がたくさんいる。より良い世の中にしようと、先人達が改善に改善を重ねたはずなのに、まだこんなにさまよっている人がいるのはどうしてなんだろう。

世の中の仕組みにまだ不備があるのは、それはまあ、そうなんだろう。

でも、私はこういう世の中に産まれて、世界を変えるような力もないので、この環境で生きていくしかない。

気の持ちようで人生が変わるとか、今あるすべてに感謝して、ということができたらいいと思うけれど、それができるほど人生鍛錬もしてこなかった。

急に謙虚にも前向きにもなれないけど、まず、私にとって人生は無理なんだ、と事実を認めて…。開き直って生きていくしかない。

人生が無理な人はたくさんいる。私だけじゃない。いろいろ恵まれていることもあるだろうに、今ある目の前の幸せを感じられないなんて、贅沢で愚かなことだけど、だからって卑屈にならなくていい。

むしろ、私がスタンダード。小さなことにクヨクヨして、日常生活を送るだけで息切れしてしまうのが、凡人の証だ。

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