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避難したくなる避難所

大雨の災害が続いている。私も去年、これは避難しなければいけないのではないか?という大雨を経験した。結果的に無事だったのだが、近所では念の為、避難所で過ごしたという人も居て、また次も同じような災害があったらどうしようかと、今から頭を悩ませている。

1番ひっかかるのは、2番目の子、ニンタの食事だ。ニンタは持病があり、食事療法をしているので、炭水化物系をほとんど食べることができない。そのため、鯖缶やツナ缶、低糖質のレトルト食品などは常に備えてあるが、それで何日過ごすことができるのか、不安が残る。

近所の友達からの、「ガス電気が止まるといけないから、オニギリをたくさん作っておいたよ」というラインを読んで、そうだよなあ、と、ゆでたまごを作ったあの時の私。避難所で食料が配られても、オニギリやパンだと聞くと、ニンタのために、かなり大量の食料を持参する覚悟がなければいけない。

次に、小さいこども達が避難所でどれだけ耐えられるかも、自信がない。これは子育て中の人に共通した悩みで、家でさえ持て余す小さな子を、避難所に長時間居させるのは、親も子もストレスだ。

というわけで、あれだけテレビなどで早めの避難を、と言われているのに、私は「ギリギリまで待つ」という選択をしてしまった。その結果何もなかったのだが、もし何かあったら、もしあっという間に避難できないほどの雨量になったら、私は後悔しなかったのだろうか。

話が少しお花畑になるが、「避難したくなる避難所」だったらいいなあ、なんてことを考えた。クリスマスマーケットみたいに、いろんなお店が避難所にオープンして、食事もいろんなお弁当屋さんがあって、お財布ひとつで行けるとか。そうしたら、「やったー!避難勧告だー!」と、少し雨が強まっただけで、みんなワイワイと集まる恒例行事になる。

商売のプロが本気になったら、それもできるのかもしれないが、とりあえず私には実現する方法がわからない。災害を体験していない私が、こんなアホみたいな話をすること自体、不謹慎かもしれない。

でも、避難せずに助からなかった人は、その少し前まで平和な生活をしていたはずなのだ。私と同じように。平和な生活の中で、いつでもトイレに行ける、誰の視線も気にせずくつろげる、そんな日常を、さらっと手放して避難所に行ける人は、そう多くないのではないかと思った。

こういうご時世であるので、ニンタの非常食も学校で保管させてほしい、という申し出があった。ニンタは食事療法を中止しても、命に関わることはないと考えられるので、万が一のときはオニギリでもなんでも食べさせてください、とお伝えした上で、ありがたく申し出を受けることにした。低糖質のレトルト、缶詰、マヨネーズ、MCTオイルなど、常温保存ができるものを選んでいるところだ。

いつ、何が起こっても、本当におかしくない。

これだけ命の危機が迫っているのに、私という人間は本当に怠惰だなあ、と思う。「死にたくない、家族を守りたい」と、必死になれないのは、生き物としての機能がいくつか壊れている。

避難したくなる避難所は、クリスマスマーケットではなくて、私の日常生活にあるのだと思った。今の生活を守りたいと強く思えたら、どんなに過酷な場所だって避難できる。

私はぐるりと身の回りを見る。有名な一節を真似をして、じっと手も見る。家族は大切だけど、自分はそんなに大切ではない。

つべこべ言わずに避難すればいいのに、そこから始めるんですか、と我ながら呆れる。

少し危険な思考回路に入ってきたので、私はそうっとここから離れることにした。ネットで非常食を探して、頭をからっぽにして、その代わりに食料を詰め込む。

それが正しいことだと、みんなが言っていたから。

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