私はゴッホの人生を読んでいる

その人のnoteには「”バズり“と決別せよ、ゴッホであれ」という記事が固定されて一番前に表示されている。バズりと決別した人のnoteを、バズっていない主婦の私が紹介したところで、絶対にバズらない。そんな不毛な記事なのだけれど、「毎日気に入って読んでいるので、私のnoteで紹介しても良いですか」とコメントに書いたら、快諾していただけたので、書いている。

noteを始める時、たいていはゆるい自己紹介などを書いて、次の記事から自分の興味があることを語り出す、ということが多いと思う。私もそうだった。ところが、瀬戸際さんの場合、最初の自己紹介がピシリと計算された設定になっていて、私も「えっ!」とそこから毎日気になるようになって読むようになってしまった。(瀬戸際さんの初回記事は、一番下にリンクをはりました。興味のある方はそちらから)

瀬戸際さんは毎日更新している。noteに「毎日note」というジャンルがあるのは私もすぐに知ったけれど、フォローして毎日読むのだから、読むのがしんどくなるものだと困る。その点、瀬戸際さんの文章は読んでいて嫌なことがない。正直に正直に、自分がその日に書きたいことを書いているんだな、という飾り気のないところが良い。

正直と言えば、noteに関する感想も正直で、同じ時期にnoteを書き始めた私としても「あるある」「わかるわかる」と思ってしまうところがいい。

更新するたびに“バズったらどうしよう”などと勝手に期待して、そわそわして、静かな通知欄に落ち込んで、平凡な自分にがっかりしたりもした。
(書くことに“結果”って必要なんだろうか)

これは、まさに初期の私のことで、もちろん私の子育てブログがバズるはずもないのに、でも心の底にはそういう期待があったことを言い当てられているようで、恥ずかしい。

更には、noteを書き続けて、クオリティを保ち続けることの難しさも、サラサラと代弁してくれる。

最近気が付いたのだが、やろうやろうと思っていることをnoteに書くと比較的すぐに行動できるようになる。おそらく文字として可視化していくうちに“こんなくだらない事、いちいちnoteに書くまでもなくやれよ……”という己のフラストレーションが良い感じに溜まっていき、それを原動力として実行できるようになるのだろう。
(片付け、それは己とのたたかい)
こうして“わざわざ”書くことは、定期的に己の健康状態や生活リズムを振り返りたい時のしおり代わりにちょうどいい。事柄としては細々としすぎてnote通り越してもはやmemoといった感じではあるが……。
(眠れる部屋のニートはnoteに“ない”機能について思いを馳せる)

「note通り越してもはやmemo」というのは名言で、笑ってしまった。

そして、瀬戸際さんは時々、ショートショートとして創作のものを書くこともあって、それも湿度が低くてさらっとした、気持ちの良いものを書く。

また、ご本人も認めるように、多趣味で人生を楽しむ力にあふれていて、とても仕事を辞めて「人生の休憩中」であるとは思えない豊かな暮らし方をしている。

「仕事をやめてゲームばかりしている」という、私よりもずいぶん若いであろう人を、応援するような心配するような気持ちで読み始めていたのに、段々と「この人は、私よりも先に前へ進んで行く人なんだろうな」という確信のようなものを感じて、少し寂しくも思った。

私は子育て中の専業主婦で、一見家事育児をしているように見えるけれど、心が死んでしまっていて、労働は最低限。周囲の助けなしには生活することができない。こどもは1日経てば1日分成長するので、何か成果は出ているかもしれないけれど、私の人生は足踏みをしたままだ。早く前に進みたい。毎日自分の気持ちと格闘している。

そんな時に、瀬戸際さんが「頑張らないで」とnoteを書いてくれる。あるいは、「頑張らない自分」を飾り気なく書いてくれる。矛盾しているようだけれど、それは私にちょっと「頑張る」力をくれる。

毎日更新なので「今日は無理!」という内容の記事もあって、「え、奇遇ですね、私も今日は無理」などと思ったり、その後復活しているとほっとしたりする。

もうリアルタイムの朝ドラを見ているようなもので、この人の平和がずっと続きますようにと願わずにいられない。

私とは、年代も趣味嗜好も全く異なるであろう人の文章に出会って、なぜか応援までしているとは不思議なもので、そして、私はそういう世界をようやく楽しめるようになった。

大人になってから恐る恐るネットを使い始めた私は、ネットで何かを発信することが、とても怖い。瀬戸際さんに「記事を書いてもいいですか」とコメント欄で聞いたが、ネットで見ず知らずの人に話しかけるなどということは、生まれて初めてだ。

実社会で充実した生活を送っていれば、ネットと距離を置いて暮らしていても、何も問題ないかもしれないけれど、今の私はスマホを開くぐらいしか体力が残っていないので、とうとう重い扉を開けた。

面白いなあ、いい文章だなあ、頭のいい人だなあ、と、ただただ眺めさせてもらえるのは、noteを始めて良かったことの1つだ。

これからも、毎日届けられる文章、そして瀬戸際さんの人生の続きを楽しみにしている。



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