嘘つき屋

おじいちゃん!」

わたしは、泣きながら叫んだ。

医師を見ると首を横にふった。

おじいちゃん‥。

「ありがとうございました。」

病院の廊下でわたしは若い夫婦からお金を渡された。

わたしは、それを受け取った。

「こちらこそ。」

とわたしは、孫を病院を出るまで演じた。

病院を出た直後、我流しもしずるにお金を渡した。

「素晴らしい演技だったよ。」

「そうですか?」

しもしずるは、わたしに半分、お金をわたしに渡してきた。

しもしずるは、某IT社長。

そこにたまたまいた契約社員のわたしに

「嘘つき屋しない?」

と聞いてきた。

「嘘つき屋?」

わたしは、契約を切られると思ってビクビクしていた。

「そう、嘘つき屋。結構、需要があるんだよね。」

しもしずるは、涼しい顔で答えた。

【悪徳資産家】

本当に茂之と結婚してくださるの?」

「はい。わたしでよければ。」

と、みなは答えた。

「一兆円、あなたの銀行口座に振り込んでおいたから。」

高部茂之。

資産家だが親族一同、不細工なのだ。

みなは、しもしずるの指示で家政婦として高部家に潜入した。

茂之は、不細工だが、心の優しい青年だった。

みなは、高部家を出ると良心が痛んだ。

「一兆円確かに受け取った。」

しもしずるが、みなを待っていた。

「あの、」

「バカ野郎!そんな顔をするな!これを聴け!」

としもしずるが、みなの耳にヘッドホンを強引に着けた。

【また、引っ掛かった。今度はどう自殺に見せかけて殺す?】

茂之の声だった。

悪徳資産家は、保険金殺人資産家だったのだ。

「一兆円ぐらい安い。何人殺されたか分からないくらいだ。」

ヘッドホンを外したみなは放心状態。

しもしずるは、みなを見て

「世間知らず。」

と吐き捨てるように呟いた。

その後、高部家は、しもしずるの密告により親族全員が逮捕された。

【約束】

俺は、幼い頃から1人だった。

施設で育ち誰とも口を利かなかった。

1人を除いて‥。

中学生から俺は不良になり知らない人間は居なかった。

いつの間にかヤクザになっていた。

しかし約束を思いだしヤクザを辞めて工場で働き始めた。

そこでも、誰とも口を利かなかった。

黙々と仕事をこなして金を貯めた。

約束の日は、すぐにきた。

しかし、約束の場所には俺の姿はなかった。

ヤクザに、刺されて死んだ。

気持ちだけ約束の場所にたどり着いた。

魂だけかもしれない。

彼女は、川沿いの花畑で待っていた。

唯一、俺が施設で話した女だった。

【ねぇ、施設出て10年後に会わない?】

【何で10年後?】

彼女は、笑って何も答えなかった。

「会いに来てくれたね。」

「あぁ‥。」

彼女も魂だけ来ていた。

彼女は、病気だった。

2人は手を繋いでキスをした。

「嘘じゃなかったんだな。」

「そう、嘘じゃない。」

彼女は、約束した次の日に死んでいた。

2人は空高く飛び消えた。

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