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『虎に翼』第27回 悪法に縛られて

「当たり前だと思っていた法律が、習慣、価値観が、間違っていると分かっていても受け入れられない、変えられないのが人間だ。それでもそれを我々は引き剥がし溶かし、少しずつでも上塗りしていくしかない」――そう穂高が語ります。当たり前だと思っていた法律が、間違っていることもある。そんな人と法の関わり、進歩していくことの困難と重要性を説いています。
 そこに重なる学ぶ寅子たちの姿。穂高の教えを胸に、学生たちは卒業してゆきます。
 この言葉が響くような、悪法に苦しめられる人の姿が今日は見られます。

寅子は雲野のもとで働きだす

 寅子は卒業後、共亜事件で世話になった雲野弁護士の事務所に就職しました。寅子は持ち前の大声で挨拶します。寅子は普通に大声を出しているけれど、この低く大きな声は周囲から色々言われかねないものでもありますね。私は好きだけど。
 さて、寅子は何をすればいいのか?
 ろくに指示もされないため、雲野に何をすればよいのか尋ねます。とりあえずお茶を淹れろと言われる寅子でした。寅子ほどの逸材でもお茶汲みをさせられる。日本の闇です。雲野は寅子を門前払いしなかっただけでも十分に先進的で、寛大です。それでもこうだ。これは穂高にしてもそういうところはあって、男性の限界点として見えてくるところではあるのです。
 これを自覚しているか、していないかは大きい。このドラマは問題提起している。ちゃんと家事労働やケアワークの重要性と面倒さ、それを押し付ける傲慢さを出してきています。

香淑は竹もとで働く

 竹もとでは皆が勉強会をしています。
 寅子はまだよいと思えるのが、同級生の香淑は竹もとで住み込みで働くしかない点にあります。住居も仕事も、彼女はずっと見つかりにくかったことでしょう。この竹もとの夫妻がとびきり善人であることは、彼女を見下さず、仕事を終えて勉強するように促すことからわかります。
 でも香淑は、そううながされてもあとで皿を洗うと言っています。彼女は世話になりっぱなしでは悪いという意識がずっと見えている。そのへんが傲慢であえてそれを見せないよね。気づいているのかわからない寅子とは違うのです。よねも語っていたけれども、相対的にみれば日本人最下層出身のよねからしても、香淑は下になってしまう。日本人であれば受けられる当たり前の恩恵が、朝鮮から来た彼女にはないのです。
 

花岡は桂場と働く

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