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『虎に翼』第41回 日帝が敗けても、人生はつづく

 昭和20年(1945年)、3月10日――東京大空襲です。上野にあるカフェー燈火では、よねと増野は空襲から逃げようとしています。
 焼夷弾が落ちる音が響き、よねがその様子を見ています。

よねと増野の「戦災死」

 よねは好きです。そりゃ死んで欲しくない。しかし状況的に助かっているわけがないと思います。
 これも東京大空襲の伝承不足かもしれないと思うのですが、あの絶望的な大規模空襲は日本でも、世界でも、認識が甘いと思わざるを得ません。原爆だったらピカーッと光ってドーンと響くという証言は有名です。けれども東京大空襲はそこまででもない。
 よねのいた上野のあたりは火の海と化した。生存は厳しい。

 戦争や災害では弱者から犠牲になります。
 梅子や涼子は疎開しているだろうと想像ができる。しかし、身寄りのないよねにはそんなことはできない。結婚も弁護士になる道もよねは選ばなかった。社会的に弱いよねが、ここで生き延びたら戦争の持つ残酷さがむしろ薄れる気がします。
 よねの生存を願う声は理解できます。しかし、それをネットニュースで取り上げたりするのは、正直なんだか被災者への侮辱にすら思えます。
 『なつぞら』のヒロインは、この空襲を生き延びた戦災孤児です。しかし夫が素晴らしい人物で、社内でも理解者がおり順調に出世できたことから「苦労知らずのバカ女」と罵倒する声がSNSにあり、それを切り取った記事ができあがりました。主演女優叩きもあわせ、数字が取れると判断した上でああした記事を作ったのでしょう。
 『半分、青い。』の主要人物の被災死は、実際にあった実情を反映したにもかかわらず、「こんなバカな死に方は被災者への侮辱」と叩く声がネットにあがりました。あの震災を教訓にしたからこそ、あの人物の選択が甘かったと私たちは理解できる。「事後諸葛亮」というネットスラングの状態です。
 『ちむどんどん』の沖縄戦描写が退屈でつまらんという声もありましたっけ。
 PVが稼げるとなると、そういう人の死までもてあそぶ記事ができあがる。それってどうなんでしょう。

直道の「玉砕」

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