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『虎に翼』第37回 孤軍奮闘

 昭和17年(1942年)、戦時色が強まってゆきます。
 ここで小道具を見てしまいます。フォントが綺麗で、毛筆で描くのではなく、何らかのソフトを使っているのかとは思えますが、そうパッと見てわかるわけでもない。よい仕事です。旧字体だし、仮名遣いも面倒ですよね。
 そんな中、寅子は浮かない顔をしています。満智にしてやられたことを引きずっているのでしょう。結構引きずる方なんですね。

直言の軍需工場は順調…

 直言の工場は軍から仕事を受け、順調に稼働しています。笹山の寿司屋みたいに廃業しなくて済むからよいのか? そう単純なことでもありません。2018年下半期ドラマは、戦争時でも仕事をくれる軍部を親切な扱いをしていましたが、そんなわけないんですよ。答え合わせはこのあと。それにこうして作ったものがどう使われるか理解したら、決して喜べるものでもありません。
 寅子はそんな工場にものを届けにきました。直言はお茶でも飲んでいけというものの、仕事の邪魔になるからと寅子は去ろうとします。すると優三が声をかけてきます。優三の表情は新婚の夫というより、恋する青年のものです。まだ寅子は憧れの存在なのだと伝わってくるようです。文学的な顔をしますよね。

恋に落ちる瞬間

 二人は冬の河原に座り、優三は近所の農家からいただいたものを食べようと言います。持ち帰っても全員分ないからと。美味しいものを食べれば気が晴れると優三。寅子は自分がそんなにしょんぼりした顔をしているかと問いかけます。寅子の疲弊に敏感な人間は二人います。優三と、よねです。
「すべてが正しい人間はいないから」
 そういい、寅子が社会的地位のために結婚したことを持ち出す優三。さらに続けてこう言います。
 寅子が高等試験に合格するか、あきらめるまで受験をしようと思っていました。もしもあのとき、寅子が不合格なら優三は諦めなかったと。彼は寅子に、勝手に自分の人生を委ねていたと言います。確かに迷惑ではある。寅子は勝手だと困惑します。優三は人には良い面と悪い面がある、だからこそ法律があると語ります。
 そしてここで、二人は手羽元にかぶりつきます。美味しそうに食べる二人。あれだけ美味しそうなものを食べていた二人が、今ではここまで素朴な食生活になりました。また嫌なことがあったら、二人でこうして美味しいものを食べようと語る優三。たかが鶏の足を、こんな寒々しい場所で食べても幸せなのです。
 優三は、寅子がずっと正しい人でいることの息苦しさを気遣います。よねもそんなことを言っていましたね。寅子は頼まれると断れないから苦労していると。敏感な相手は、寅子が大義名分に縛られた苦しみを理解できるのです。
 人が恋の落ちるのは突然だと、ナレーションが語ります。寅子は優三の優しさに惚れました。彼の肩に頭をのせ、微笑む顔は幸せに満ちています。

寅子の懐妊

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