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『ゴールデンカムイ』第28巻

 表紙は二階堂。病院での情景か、義手から箸が飛び出し、裏表紙には有坂閣下と謎の怪人がおります。死ぬ間際の人物が表紙になることが増えましたね。と、いうことは……次巻はあの人で、あの表紙の人は……。
 カバー下はアットゥシ。和人にも馴染み深いこれがやっと登場しました。
 この巻は巻頭のおまけ漫画がいつもより長く、かつかなり重要。金塊がそもそもどうして世に出たのか、その解説がかなり詳しく描かれております。

有古イポプテというアイヌ

 この巻は有古の生い立ちから。
 アイヌといっても色々いるわけです。私たちがまず思い浮かべる有名なアイヌの方というのは、社会活動をし、啓蒙することを選んだ人ではないかと思います。宇梶静江さんなんてご立派ですよね。
 そうではなく、ただ、アイヌであることにモヤモヤした感覚をもっていて、ただ、生きている人も当然いる。有古はそういう典型像なのでしょう。
 これは当然のこと。野田先生のインタビューを読んでもわかったことですが、アイヌを差別せず、フラットに生きてきた和人も北海道にはたくさんいる。アイヌだから何? そう思って生きてきた人もいる。そういう普通の人もちゃんと描いている作品なのだと思います。
 『アンという名の少女』シーズン3を見ていてもそんなことを感じますよね。黒人だろうと、先住民だろうと、人は人だとフランクに接する白人も当然いたわけで。それに対して「そんなことあるか! 当時の白人は全員差別したはずだ!」というのも何かちがうんですよね。
 差別はどうやって克服するかというと、色々な要素がある。一緒に暮らすうちに「こんなの差別してアホみたいだよね、同じ人間だろ」と馬鹿馬鹿しくなり、薄れていったこともたくさんあるのです。人間を性善説だけでくくるのも、性悪説だけでくくるのも、どっちも雑なんです。
 
 そんなありのままに生きていた有古が、アシリパという極めて意識が高いアイヌとであったことで、彼女を救うために立ち上がることからこの巻は始まります。ウイルクの狙いは当たった。アシリパは確かにジャンヌ・ダルクになった。周囲を鼓舞する力がある。でもそれは周囲に犠牲が出ることでもあって、アシリパはそのことが辛くてたまらないのです。
 でも、それも大事なのかもしれない。
 有古イポプテを撃って、目がキラキラしている月島をごらん。大義云々じゃない。洗脳されている。そうならないで心を痛めているアシリパはなんと健全なことか。ここでイポプテが死んでいたら、月島もそうならないと釣り合いが取れない気がしますが、マキリによって助かりました。
 そしてゲーム感覚で殺し合いを楽しんじゃう尾形。尾形はなまじリーチが長いし、ヴァシリと殺し合いでもするしかないから。こいつらは本当に人間としての心がぶっ壊れてます。

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『ゴールデンカムイ』アニメ、本誌、単行本感想をまとめました。無料分が長いので投げ銭感覚でどうぞ。武将ジャパンに掲載していました。歴史ネタでより楽しめることをめざします。

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