『虎に翼』第36回 すべての女が常に善良なわけがない

 昭和16年(1941年)12月――日本は真珠湾を攻撃し、米英に対し開戦しました。
 あの破滅への道のりが始まったのに、当時の日本には奇妙な楽観論が漂っていたのです。昭和17年(1942年)1月、直人と直治の兄弟は戦闘機の真似をして遊んでいます。ラジオからは日本軍連戦連勝とのニュースが流れています。

薄氷の上にある「順風満帆」

 寅子と優三も新婚らしく、二人で出掛けているとか。行き先は穂高のもと、結婚の報告でした。穂高は喜びつつも、寅子はともかく、優三の印象はあまり残っていなかったようです。穂高はこういうご時世にめでたい知らせはいいものだと言います。当時の鬱屈を、この飄々とした人も感じていたのでしょう。
 仕事はどうかと聞かれる寅子。結婚後、依頼も立て続けにあるそうです。婦人弁護士として頑張るようにと励ます穂高。ここで直言も軍事協力して順調と語られます。嫌な予感がしますね。穂高が何もかも順風満帆だと言います。確かにそうだとナレーターもいうものの、果たしてそうなのでしょうか。ここでよねの、逃げ道を手に入れると弱くなるという言葉と、優三のトラちゃんが好きだったという言葉が重なります。この虎は愛という巣を見出したようです。
 順風満帆が嘘くさいとわかるのは、猪爪家の食卓からわかります。既に米が足りず、カボチャでかさ増しをしています。上流階級のこの家でも既にこうなっています。寅子は自分の望んだものは全て手に入れたと思っているけれども、それは薄氷の上にあるのです。

 寅子は女性を救うべく、仕事に邁進しております。よねが隣で助手を務めております。今日の依頼人は離婚希望とのこと。妻子を放置し、借金ばかり作る夫に涙ぐむ妻。寅子が良い道を探すというと、あとでよねがあんなことを言っていいのかと問いかけます。女の側から離婚を成立されることは難しいと、理詰めで問いかけます。寅子は情がある。梅子を思い出しつつ、彼女を救うことが小さな一歩になると言います。よねはだいたい正しい見通しはいうものの、厳しく、悲観的で正面突破型。奇策を出す寅子が結果的に勝つこともしばしばあります。理想のコンビです。
 この裁判は思わぬ形で終わります。夫に赤紙が届いたのでした。
 轟に話すと、赤紙が来たらそうなるだろうと言います。本心はともかく、出征兵士の妻は晴れがましいものとして扱われます。よねは民事訴訟はどんどん減るという暗い見通しを語り、寅子と轟は誠心誠意進むのみだとまとめます。暑苦しい二人に呆れ気味のよねです。

女性の味方につくと決意を固め、裁判に挑む

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