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『おちょやん』65 家庭を作り、“お母ちゃん”になる

 千代はハナから聞いた話をします。
 昨日の回で、一平がどんなことをしたのかがわかりませんでした。その謎解きです。

あんたは一人やあらへん

 ハナの持参した稲荷を食ってられるかと突っぱねた初代。そこへ一平が、化粧をした顔で出てきます。母恋しさ、母の顔を忘れないように紅白粉を塗ったくったのです。父は笑うしかない。これも職業病というか、なくなったものを演じて取り戻したい欲求があるのでしょう。
 それを見て、初代もハナも笑うしかない。悲しいときに笑い飛ばす。そんな道頓堀の役者親子の姿がそこにはありました。
 
 そのあと、むしょうにホンが書きたくなって、初代は机に向かいます。一平が眠る横で、芝居にせなあかんかった。親子を舞台で演じてきたことを、一平は思い出しています。誰よりも名前を継いで喜ぶのはお父ちゃんのはず。誰よりも役者を継いで欲しいのはお父ちゃんのはずや。千代はそう訴えます。
 一平の目を涙がすっと流れる。
「なんやねん……なんやねんさっきから」
 そう俯いてしまう。千代は“お母ちゃん”みたいなものになりつつあるのか、素直に感謝もできないし、強がるしかない。 
 そして喪失と向き合ってしまう。
 父にも、母にも、二度と会えない。自分の家族はもうなくなってしまった。
 泣きじゃくる一平を千代は抱きしめます。恋人というよりも家族のようにそうする。
「生きるってしんどいなぁ。つらいなぁ。けどなぁ、あんたは一人やあらへん。うちがいてる」
 二人とも、家族の理想像を求めてきた。千代は弟。一平は母。会えない理想像を作り上げて憧れてきた。それを失い、現実に近くてキラキラしていないけれど、あたたかい家族の像も見つけ出しました。
 こう書くと感動的ですが、みつえと福助のようなハネムーン期がないことになります。少女漫画とかキュン死とか、そういうノリはないということになります。乙女ゲーの広告動画なんか見ていればわかりますけど、ともかくああいうキュンキュンしたノリをダラダラと引き伸ばせば、ある程度ヒットは稼げます。ハッシュタグつけてファンアート投稿して、いかに萌えたかSNSで表明するファン層がいる。そういう投稿を切り貼りするコタツ記事でもバンバン出せば、ウケるドラマはいっちょあがりやね。
 本作はそういうセオリーとは無縁で興味深い。ちゅうかぶっちゃけ好みやで。

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2020年度下半期NHK大阪朝の連続テレビ小説『おちょやん』をレビューするで!週刊や!(前身はこちら https://asadrama.com/

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