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『おかえりモネ』第88回 パラレルワールドに超大型台風が迫る

 台風12号、接近中――東京には9月15日、日曜日に首都圏へ上陸します。
 ここで少し補足しておきますが、2019年に著しい被害をもたらしたのは「令和元年房総半島台風(19号)」であり、10月12日に上陸し被害が出ております。実際のできごととは少し変えて放送しています。
 首都圏で400ミリを超える雨が予測されています。ウェザーエキスパーツは対策室が設置され、野坂が交通班も計画運休の情報を掴んでいます。14日夜に上陸するまでのリードタイムをどうすべきか? そう朝岡が告げるのでした。

リードタイムをどうする?

 神野はJテレで、いかにして番組で台風を解説するか、気を引き締めています。大型で危険だと予測できる。ここは科学の領域ですけれども、問題は気持ちの問題です。雨が降っていないうちには警戒できない。14日夜には静岡から神奈川県西部に雨が降り始めるけれども、降ってから避難では遅い! どう伝えるか? ここでモネもアイデアを出すよう促されます。こういうことに強いと信頼されているのでしょう。リードタイムに何をすべきか?

二人の通話には“罠”がある

 モネは菅波に電話します。昨日もそうでしたけれども、この二人って会話が仕事のことばかり。愛してるよ、ちゅっちゅ♪……そういうことはやらない。でも気づいてましたか? ネットニュースで流される内容は、名前で呼んだとかキュンキュントークばかりだ!
 これぞ罠でしょう! といっても、騙されるのは劇中の誰かではなく、仕掛けられたのはあなたであり、私です。
 人間というのは、真面目な話とか。危機感を覚えるようなコトとか。耳に入ってこないんですよ。美男美女、しかも恋愛関係にある二人を見たらイチャラブしろという欲求が湧いてくる。
 この二人が話すところを聞いて、そこばかりに気が向くとすれば、それこそ「注意散漫!」ということになります。でも、このドラマは刑事ドラマでも乱世を舞台にした時代劇でもありませんからね。朝ドラだもん、イチャラブ需要を重視していると思いますよね? それぞ罠だと指摘したい。
 モネは五分だけと断った上で、菅波に“策”を求めます。
 どうすれば避難を促せる? どう伝える?
 菅波はあまり答えになってなっていないかもしれないと前置きしつつ、少し前に起こることを想像できるように伝えると言います。例えば、おじいちゃんが食事を取れなくなった。そうなると二、三週間後には栄養不足で起き上がれなくなる。人間は何が起きるかわかっていると安心する。行動できるようになる。
 全然違う話かもしれない、と菅波は言いますがモネはわかったと返します。
 菅波はこう励まします。医者と気象予報士は似ている、がんばって! モネは励まされます。
 本作特有の、わかりにくい問答をまたやらかしている!
 まず、先に述べたように恋愛関係の男女ですから「イチャラブしないのかな?」と見る側の気が逸れる。これが一つ目の罠です。
 次に、菅波は断言しない。あまり答えになっていないかもしれない、全然違う話かもしれない。そう言う。菅波は中身は相当濃い変人ですし、頭脳もシャープですが、あまり自信満々なふるまいをしません。医者、エリート、男、三十代。ここまで揃っていればドヤ顔で威張り、それこそSNSでイキリツイートを連発する野郎になりそうですが、彼はそうじゃない。でも人間って発言の中身より、押し出しの強さに参るもんですよ。菅波みたいな態度だと、むしろ騙される。
 そしてモネ。モネはそれこそ一を聞いて十を知るシャープな知性の持ち主ですが、そのことをやはりドヤ顔アピールしません。ぼーっとしているように見える。本作序盤では「何を考えているかわからない」とさんざん突っ込まれていた。いや、何も考えていないのではなく、考えが奥深すぎてわからないタイプなんだ。でも騙されますよね? 試験では要領悪かったから落ち続けたし、高卒だし、女だし、若いし。舐めてかかっちゃいけない。ね、騙されますよね?
 こういう十重二十重の罠があるので、朝ドラにしてはハイカロリーすぎて、みんな諸葛孔明の罠にかかったように倒れる。一体どういう朝ドラなんだ!

これから起こることを見せる

 モネは理解し、汐見湯の面々に泊まり込みになると告げ、スーツケースを引っ張りつつ出かけようとします。奈津と明日美も不安そう。能天気な明日美が怯えているということは、バッチリですよ! 明日美ってわかりやすい反応を持つタイプだから、明日美が狙い通りに動いていたら、モネたちがしていることはある程度正しいとわかる。
 モネと明日美は正反対のようで、明日美を見れば把握できることが多い。だから親友としてありだと思います! そういう利害関係で友情が続いているわけではないだろうけど。
 奈津は水と食糧を準備し、発電機も準備した。大事なものも二階にあげたと言います。

 モネは出社し、菅波の助言を生かします。少し前の事態を見せることはどうでしょう? 雨雲の発達を見せるのみならず、シュミレーターを使うのです。雨量が5ミリから始めて、50ミリに風速30メートルの絵を撮って見せる。歩行できなくなる。車で移動もできなくなる。朝岡もこれには納得しています。
 何が起こるか見せたら、イメージがしやすい。避難行動を促すことができる。
 避難行動を促せたかどうか? 汐見湯の反応でわかります。おじいちゃんとおばあちゃんに、奈津が大事なものを二階にあげたかと聞きます。ヒロ君があげたって! そう聞き奈津はうれしそう。船を動かした新次もそうでしたが、皆の危機は人を動かします。近所の皆さんも避難してきました。

 大雨特別警報が一都六県にでる異常事態です。気仙沼の永浦家でも、首都圏のニュースを見守っています。耕治は牡蠣棚は大丈夫かと心配していますが、龍己は早めに抜けると余裕ある態度を見せています。テレビでは神野が数十年に一度の規模、命を守行動を取るよう訴えているのでした。
 強烈な皮肉といえばそうです。首都圏の危機はトップニュースで、気仙沼の皆さんも心配する。でも気仙沼がこうなったとき、首都圏の人は気づいているのでしょうか?

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