『おちょやん』109 お母ちゃんに話して解決することもある

 前を向いているかどうか――そんな願いがこめられた『お父さんはお人好し』。一時間スペシャルを前にして、静子がお母ちゃんの家にやってきてしまいます。

聞いてえな、お母ちゃん

「聞いてえな、お母ちゃん」
 とりあえず入れた家でそう切り出す静子。なんでもほんまのお母ちゃんとお父ちゃんが、降板を願い出ているそうです。なんでもあのソ連亡命した小暮と同じく実家は医者で、ラジオ出演で成績が下がったことを問題視しているとか。
 ここの背後で栗子が封筒か何かを数えてます。そうそう、この年代のおばあちゃんは働き者で、内職とか、縫い物とか、いつも手を動かしていたんですね。今みたいにVODでドラマ見るとかできひんし。
 贅沢な悩みやなぁ、静子ちゃん。
 栗子も、千代も、学校になんて行けなかった。両立どころか、親に金づるにされて、金を儲けるように芸を仕込まれて。猿まわしといったらひどいけれども、そうして早くから働かされて。でも、そんだけ世の中よくなったちゅうことです。栗子や千代世代にも女医志願者はいて、散々妨害受けて、それでもなんとかしてきた先人がいます。
 静子がこの先女医になるとしたら、いろいろ大変でしょうね。親としてはむしろ医者の嫁にしたいのかもね。そういう静子の子孫が医大入試で差別を受ける。世の中少しづつよくなる! 何十年か後に、令和初期がドラマになって。ほんで未来の人たちが「令和はひどい時代やなぁ。今に生まれてよかったわ」と言えばええと思う。
 静子が出番を増やして欲しかったのは、役者としての実力を示すためか。千代はそう理解します。栗子が今日は泊まっていくよう、促すのでした。

そのころJOBKでは

 一方、NHK大阪では静子本物のご両親がやってきて降板させるよう頼み込みます。この関西の医者感。なんか数年前の朝ドラで医者を馬鹿にしとった気がする。おこられたんかな。まあそれはそれとして、ここで四ノ宮が降板に反対します。気合を入れて作っている。もう一度、お嬢さんの話を聞いてやって欲しいと。
 おっ? ええ正論やんか。こんなん、四ノ宮がしゃべるだけで笑うわ。
 久保田悠来さんは無茶苦茶顔がええわけで。そのかっこよさをうっすら自意識した喋り方をしてはる。しかし中身はええかっこしいでしょぼい。二枚目は芸能界ならぎょうさんいるから、そういうセコさとか、かっこ悪さを出してこそ個性になる。ええと思います。
 そしてご両親は、聞いて出ていくのですが。

月を見ながら話そうか

 千代は自宅前で月をじっと見ていて、その隣に静子がきます。千代はよそいって初めてうちんとこのよさがわかりますのやと話しかける。自然と腕組みができるようになっています。
 千代はほんまの家族にはなれないという。帰りを待っている人たちには、逆立ちしてもかなわへんと言う。テルヲから突き放されて、一平も灯子にとられた。負けっぱなしの人生かもしれないけれど。
 千代は、家出はやめて明日には帰り、親に自分の気持ちを伝えるように語ります。月を見上げることしかできひんと静子を抱き寄せ「明日もきっと晴れやなぁ」と語る千代。
 いつも晴れる明日を信じて生きてきた、前向きな千代。母を恋しく思い、ビー玉を見ていた少女が、こんなに大きな存在になりました。 
 春子は眠れず、布団に起き上がっています。そんな孫を栗子は気遣うのでした。

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2020年度下半期NHK大阪朝の連続テレビ小説『おちょやん』をレビューするで!週刊や!(前身はこちら https://asadrama.com/

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