『ちむどんどん』第69回 私は自分の力で幸せになる
いよいよ沖縄角力大会。暢子はお弁当作りに張り切る中、智は優勝したらプロポーズすると勝手に決めています。そして初戦相手の和彦はそれを知ってしまい、全力で止めようとするのですが……。
賢秀の役目は?
まずは賢秀でも。
だんだんとただのトラブルメーカーから、彼の劇中での役割が見えてきました。引っ掻き回し、わかりやすく問題点を見せてくる。朝ドラは15分でどれだけわかりやすくするかが求められる独特のコンテンツです。賢秀がわかりやすくコンパクトに問題を担当することで、本質に迫りやすくする。そんな技法です。
古典的とも言える。昔話の悪いおじいさん役ですね。アイヌの「パナンペとペナンぺ」もこのパターンだ。
プロポーズをしようと思っていた相手には、結婚を約束した相手がいました。残念、空振り! 相手の気持ちを確かめていればこんなことには……そう示されると。
賢秀は大仰に、馬鹿馬鹿しく、軽薄に、勝手にプロポーズをして失敗する男の役目を果たしました。そして和歌子とタケシが再会し、抱き合う浜辺の場面は青春ってかんじで。二人にとっては賢秀なんてお構いなしに、いい思い出となるのでしょう。
賢秀、どんどんよくなってきたなぁ。竜星涼さんはこれでまた大きく進みそう。
愛の苦悩
愛はいい子すぎるくらいに思える。けど、ちくっと智のプロポーズを暢子に明かしてしまうあたり。そしてあの切ない顔。和彦ががんばればがんばるほど心が傷つけられるところ。実にうまく出ていましたね。つらい!
あんなの見せられて病院に付き添いって、どうすればいいのよ。愛の憂いを帯びた表情だけで朝から大満足! 何もいうことなし! そのくらい圧巻でしたよ。飯豊さん、素晴らしい!
が……。
暢子の苦悶
暢子の全く嬉しそうでない顔もいい。
プロポーズのことを知ってから唖然としてしまって、否定するだけで必至になる。あの表情が素晴らしかった。黒島さんは明るい笑顔が似合うようで、曇った顔も素敵です。
そしてラストの場面は夕日が沈む海岸です。青春ってかんじ。ドラマならこういう夕日を浴びながら、プロポーズに感動することがお約束。そのセオリーをぶん投げて、全力で逃げる。まるでホラーのようで圧巻でしたよ。
幸せにするなんて言わないで、幸せは自分で掴む!
暢子はまだ自分の気持ちを言語化できないんですね。若いし、そうだろうなと。和歌子みたいに結婚願望が刷り込まれていればサラッと出てくる。ペラペラと出てくる。良子もそう。歌子もやっとそこへ到達できた。
けど暢子はここではっきりと示すしかない。混乱していてぐちゃぐちゃだ。
もし、恋愛テンプレ通りなら楽かもしれない。夕日でプロポーズを受け取るヒロインなんて手垢がついちゃってる。でも暢子は違う。
幸せにしてもらうんじゃなくて、自分で掴む! そう不器用に宣言する暢子はえらい。強い。
そして、ある層にとっては悪夢そのものでもあると思う。シチュエーションを全部用意したのに断る女なんて憎まれて当然かも。
それを描いたこのドラマは偉いと思います。
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