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発達障害とは当たり前のことができないのか?

 発達障害――という言葉が広まり、フィクションでも設定上そうだと思えるキャラクターが増えています。当事者としてここでぶちまけておきますと、そのせいかなんだかおかしなことも起きている。

 グレーゾーンそのものを否定するわけではありませんけど。
「書類仕事を忘れちゃう! もしかして私も発達障害?」
 と、バリバリに定型としか思えない人が言うとか。これはHSPもそうですね。
「HSPかなあ、私……」
 そう語る人が、こちらが出している何かのサインを頑なに見逃していたり、雑な決めつけをしてきたりすると、一体どいうことやらと思いたくもなります。でもまあ、そう指摘すると恨まれてはじかれるのはこちらなのでなんとも。

 そんなに気になるなら、ちゃんと医者にかかりましょうか。オンライン診療もありますよ。それが難しくとも、図書館に行けば専門的な書物があるから、そこを当たればよいのです。

 まちがっても、SNSで流れてきた真偽不明の情報や診断で自己診断しないようにしましょうか。

 発達障害なり、HSPなり。本気で悩んでいるとなれば、幼少期に異常だと言われたり、嫌な目に合っているんじゃないかとは思いますが。成人後もか。
 人生なんてそれぞれだから、素人としては何も言えません。繰り返しますが、専門家の診察を受けましょう。私は心理学専攻者の意見、専門書を用いた自分なりの調査、それから診察を経ております。

 おかげさまでよいこともありました。スティーブン・ピンカー、マイケル・バロン・コーエンをはじめ、研究者の出した本は有益で世界が広がったのです。

発達障害は当たり前ができないのではなく、当たり前の定義がちがう

 発達障害ライフハック系の本は、手に取ってみましたけれども。解決するどころか、むしろ苛立ちが増すことが多いので何とも言えません。こういうものを手にして、誤解した周囲からああだこうだ言われると思うと、ハッキリ申しますと迷惑千万でもあると。

 じゃあ、箇条書きで問題点をあげますよ。

◆当事者だろうが、本人とその周囲というケース数では、そもそも定義がしにくい
◆ジェンダー差がある。男性特有、女性特有の問題点まではなかなか共有しにくい
◆発達障害のみならず、ジェンダー、身体障害、貧困、エスニシティ……複合的な問題がある。マジョリティであり、高学歴、高収入の日本人男性から「借金してでも、発達障害ならばこのグッズを揃えよう!」と言われたところで、冗談はやめてくれとしか言いようがない。そういう社会的な強者が「こうすれば乗り越えられます!」と発信する有害性も考慮しましょうか
◆結局新手のビジネスチャンスじゃないのか、とりあえず発達障害とつけとけば売れるブームじゃないかという懸念はどうしたってある。当事者である以前に、キャラクター性やコネの有無、SNSフォロワー数で出版の可否が決まっていませんか?
◆「当たり前のことができない私たち!」まあ、いいんでしょうね、売り込むなら。でもいつまでそういうドジっ子テヘペロアプローチしてるんですか? プライドをへし折られるようで、はっきり言って不愉快極まりない
◆発達障害といえばADHDで、ズボラであることがデフォルト扱いですか。ASDとはちがうでしょうに。ASDはむしろ変なところでしつこくて細くて疎まれるからさ……まあ、私だけかもしれんけど

 なんだか無茶苦茶怒っている。我ながら無茶苦茶キレとる……いやだって、当たり前の定義が定型とちがうだけでしょう?

 発達障害については、心理学者の最新研究を読み、かつどうして少数でも我々が人類の中にいるか、その意義まで考えないとわからないこともあるでしょうに。ドジっ子アピールなんていりませんよ。

 要するに。
 我々人類が狩猟最終で生きてきたころ。ごく一握り、集団の生存に必要な者がいた。
 疑い深く、危険をものともせず、敏感ですぐに危機を察知し、孤独に耐え抜く。一人で斥候役をする、群れずに進めるものがいた。
 人類の進化とともに、そういう連中は「なんか変な奴だね」と除け者にされるようになった。それでもひとたび乱世が訪れれば、そういう連中は持ち前の図太さ、残虐さに心を麻痺させる特性を使い、生き延びてゆく。

 集団が生存するためには、脳構造がちょっとちがって、他の連中とちがうことができる奴らが必要だったってこと。そんな役割背負わされて災難といえばそうだけど。変えられないなら、受け止めていくしかない。

 けれども、その過程でテヘペロする必要性なんざ、私は感じませんけどね。

 というわけで、ADHDではなくASDとして、今まで気づかなかったけど実は特殊だったらしい特技でもメモしていきます。
 自分なりの思いつきでなく、一応、専門書の類を参考文献としては使いますよ。そういうところに細かくてしつこくて疎まれるASDですので。

ニューロティピカルとは

 最後に、定型発達とは何かという引用でも。普通ってそもそも一体、何でしょうね。

・ニューロティピカルは全面的な発達をし、おそらく出生した頃から存在する。
・非常に奇妙な方法で世界を見ます。時として自分の都合によって真実をゆがめて嘘をつきます。
・社会的地位と認知のために生涯争ったり、自分の欲のために他者を罠にかけたりします。
・テレビやコマーシャルなどを称賛し、流行を模倣します。
・特徴的なコミュニケーションスタイルを持ち、はっきり伝え合うより暗黙の了解でモノを言う傾向がある。しかし、それはしばしば伝達不良に終わります。
・ニューロティピカル症候群は社会的懸念へののめり込み、妄想や強迫観念に特徴付けられる、神経性生物学上の障害です。
・自閉症スペクトラムを持つ人と比較して、非常に高い発生率を持ち、悲劇的にも1万人に対して9624人と言われます。


 もうひとつ。ASDとして定型の善良なる皆様に言いたいことを、きっちりとまとめたような名文があったので抜粋します。

嵆康『山巨源に与うるの絶交書』
康白す、足下昔吾を頼川に称す。吾常に之を知言と謂えり。然れども経に怪しむ、此の意尚お未だ足下に熟悉せざるに、何に従りて便ち之を得たるやと。前年河東より還るに、顕宗阿都、足下の議して言を以てら代えんと説く。事行われずと雖も、足下の故より恋を知らざるを知る。足下傍通にして可多くして怪少なし。吾性を直にし中を狭くし、堪えざる所多し。偶々足下と根知るのみ。間足下の遷るを聞き、惕然として喜ばず。恐らくは足下包人の独割するを羞じ、尸祝を引き以て自ら助け、手ずから鸞刀を薦め之を擅脛に漫さ職漫さんことを。故に具さに足下の為に其の可否を陳べん。
超絶意訳:『グッバイ! 山巨源レター』
「官僚になったらいいじゃない!」と、作者の意向を無視してきたお節介に絶好を言い渡すぞ。

康がぶっちゃけて言いますわ。
穎川でなんか俺のこと話したそうですね。俺としては、俺のことをわかっている人の意見だと思いたかったんですけど。
でも不思議なんですよ。
どうしてあなたは、俺のことなんて全然知らないくせに、俺の本心を知ったつもりでドヤ顔してますか?
昨年河東から戻ったら、顕宗だの阿都だのが、あなたが俺を代役にするつもりらしいと聞きましたけどね。それは幸いにして実現しなかったけど、わかったんですよ。
あんた、俺のこと、何一つとして知らないんだな。
あなたは寛大で、森羅万象をご存知で、猜疑心ゼロですよね。でも俺は思うことに忠実で、許容範囲を狭めてるから、我慢できないことばかりですわ。
あんたとはたまたま知り合いになったから、つきあっただけだろ。
あんた栄転するってな、めでたいけど、気になることだらけだから伝えることにするわ。
あんたは料理人が一人で飯こさえてたら「かわいそー」とか場違いなお節介して、余計な助っ人に食材切らせたりする性格だよな?
そういうウザさは一体どうなのよ? ハッキリ言うからな、俺のあんたに思うところをさ。

(オチは訳だけで、ダメ出しを続けたあとでこうです)
俺の考えは以上! 本音ぶちまけたからどうでもいいよ。これでお別れな。あばよ。

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