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『虎に翼』第21回 直言は有罪なのか?

 猪爪直言、贈賄容疑で逮捕――猪爪家にはマスコミも押し寄せ、寅子は大学にすらいけなくなります。政財界を巻き込んだ事件は、日本中を騒然とさせます。内閣辞職にまで事態はエスカレートしました。大事件だけに、誰も直言の弁護を引き受けてくれません。そんな中、花岡と穂高が猪爪家にまでこっそりとやってきました。穂高は直言の弁護人をやらせて欲しいと訴えました。元教え子の直言を助けようというのです。

1945年への道

 出来の悪い朝ドラは、戦争が台風のように突如やってきたように描きます。しかし、今回は違う。戦争への嫌な道筋が辿れてきます。
 直言の弁護をして欲しいと梅子が夫に頼み込んだとき、横にいた息子は冷ややかに猪爪家を「国民の敵」と呼びました。マスコミの報道を読み、怒りを増幅させている民衆の姿もわかります。
 結局のところ、明治以降の日本経済は足腰が弱い。大不況から抜け出す道も見えてこない。だから政財官が汚らしく結びつき、甘い汁を啜ろうとする。そんな世の中に人々は苦しみを感じています。
 日本が南京を陥落させたとき、提灯行列を作って人々は祝いました。日本が真珠湾攻撃を仕掛けたとき、多くの人々がスッキリ爽快だと思いました。どうしてそんなことを思うのか? 前者は中国に対する加害意識が欠如している。後者は自国がどれほど無謀か理解できていない。
 あまりに停滞していた気持ちをガス抜きするために、戦争へと向かっていった不気味な事実はあります。ドラマに出ている人々がどうして戦争でああなってしまうのか。このあたりから読み取っていくことも大事でしょう。

 優三は穂高にお礼をいいます。彼では弁護士を見つけられなかったのです。お礼なら花岡に行って欲しいと穂高。授業後、花岡が提案したのだとか。刑事事件は専門外といえ、一肌脱ぐことにしたのです。
 ここで花岡が、優三を寅子の兄だと誤解しています。優三がただの書生だと訂正すると、寅子も優三さんは家族だといいます。ここでちょっと目が泳ぐ花岡。兄ならばよいとして、そうでない書生が同居とは! あの直道もうっとうしく主張していましたが、お嬢様と書生の恋はありがちではあります。寅子をめぐる恋の火花ですね。
 といっても、ここで考えたいのがこの二人の年齢と1935年という時系列です。高学歴とはいえ、戦争後半になると召集されかねない年齢です。しかも兵士はやはり二十歳前後が最盛期です。三十前後で召集されると色々と厳しいのです。
 ここで寅子がお礼をいい、自分にできることをするというと、穂高と花岡は学生の本分は学業だ、大学に来いといいます。

寅子、大学に通い出す

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