見出し画像

アシㇼパ和名表記の何が悪いのかピンとこない理由の推察

 最終回以来荒れ気味の『ゴールデンカムイ』。そして個人的にもっとも深刻な問題だと感じたのは、アシㇼパの現パロ和名問題です。

 もう、これ以上説明することはないと思えるほど、素晴らしいご意見がありますのでリンクを貼らせていただきます。るくんねさん、素晴らしい記事をありがとうございます。

アシㇼパさんの和名を使用する時に少し立ち止まって考えて欲しいことがある。 - 言葉は力 https://rukunne-ruretar.hatenablog.com/entry/2022/06/12/122456

 それでも話が通じない人には通じないかもしれない。それはなぜか? 私なりに考えました。

「二次創作」だから

 それは「二次創作」だから――これではないでしょうか。二次創作は一次、原作から変えることはお約束です。現パロ、女体化、年齢、動物化、そして性的嗜好。こうした要素を変えることが通用するからには、和名にすることもそのバリエーションだと考えてしまうと。

 そして2020年代ともなると、かつて二次創作にあった慎みというか、自虐的な姿勢はむしろ時代遅れになりました。明瞭明確に異性愛者とされていないのだから、同性愛者にしてもいいんじゃない? そんな理屈も通るし。ボーイズラブを必要以上に嫌悪したり、貶めることは差別的だとして時代遅れになりました。
 あるいは「ブロマンス規制をする中国じゃあるまいし!」とか。

 二次創作はもはや公然のものだし、公式もそこは認めるようなことをしています。ドンキホーテグッズやサンリオコラボカフェなんて、まさに二次創作を公式が展開するようなものを感じます。

攻撃されたと思うと、人は攻撃的になる

 二次創作のアレンジにケチをつけられた!
 攻撃された!

 そういう“不当な扱い”を受けたという感覚が、トリガーになっているのではないかと推察します。そしてそうなると過剰防衛気味になって、意見を受け付けなくなる。
 なまじ二次創作界隈は、「隠れていろ」とされた経験がある。本人が経験していなくても知識として知っていて、それが不完全であるがゆえに「二次創作への攻撃は不当」と雑に理論武装している可能性も考えられますね。

集団になると、気が大きくなる

 今回の騒動では、二次創作の某カップル界隈が集団になって行動していました。人間は集団になると気が強くなります。グループを作っていると得意げに吹聴してましたもんね。よくある現象です。

和人はアイヌに良いことをしたと無意識下で思っている

 アシㇼパの名前には「蝶」という文字が入っていて綺麗。「明日子」も綺麗。そんなファンタジックなコメントもありましたね。綺麗な名前を和人が与えたのに、拒むなんてどういうこと? そういう明治政府の目線のようなものがこの令和のご時世にまで見え、申し訳ないが興味深い事例だと思ったのです。

 北海道史は、こういうアイヌに施してやった目線が頻出する。アイヌ伝統模様と「フロンティア」という言葉を並べてしまうあたりに、そういう和人側の傲慢な意識がチラッと出てきてしまう。

 和名についてはいかに響きが綺麗だろうと、経緯を考えて否定することはあり得る。といったところで、話が通じないのでしょう。

 『ゴールデンカムイ』は、こういう和人にある「和人がアイヌに利益を与えた」というバイアス排除を意識していると思えます。杉元はしばしば「アシㇼパさんの知恵のおかげで助かった!」と明言するあたりからそれは感じるのです。

 自分たちはよいことをした側である。
 それなのに、攻撃された。

 こう思い、かつ集団になると、人は攻撃性が高くなります。そうなってしまうと、指摘しようが話が通じなくなり、戦争モードにスイッチが入ります。
 敵か味方か。そう二分し、攻撃に走る。攻撃することで満足を得て、仲間の賞賛を求める。仲間が誉めるとますます勇気が倍増し、新たな攻撃へ移ります。
 戦争モードになったものは、往々にして自軍のルールにのみ従う。今回の場合、二次創作同人ルールを過剰適用することは考えられます。そういう相手にレイシズムや歴史のことを話しても、聞く耳を持たない可能性は高い。罠か、嘘か? そう身構えて、何も聞こうとしない。
 こういうときは、まず相手に戦争はやめろと説得することが大事で、その場合はあえておにぎり(あたたかな心遣いや親切心のこと)を渡すような手順も必要かも。

実は鶴見もこのパターン

 こういう思考回路は鶴見にもあてはまる。

・良いことをしてやっているという思い込み
 
 有古はよいアイヌという語り口。彼はアイヌ兵の面倒を見ているし、自分には根底に善意があるとでも思っていそう。演じているだけかもしれませんが。
・攻撃された
 妻子をアイヌのウイルクに奪われたんだ!
・集団になっている
 第七師団の連中は、鶴見を褒め称えるばかりで、止めることはない。そりゃああやってうっとりした兵士を見ていれば、自分は無敵だと思い込んでも仕方ないでしょう。

 鶴見はそれでもカリスマ性もある美男だし、憐れむ要素はあるけれども。はたして。

 こうなったら一旦停戦に持ち込むしかない。さもなくば、相手の疲弊を待つしかない。停戦してルールを決めたらよいとは思いますが、難しいでしょう。

ここから先は

273字
『ゴールデンカムイ』アニメ、本誌、単行本感想をまとめました。無料分が長いので投げ銭感覚でどうぞ。武将ジャパンに掲載していました。歴史ネタでより楽しめることをめざします。

『ゴールデンカムイ』アニメ、本誌、単行本感想をまとめました。無料分が長いので投げ銭感覚でどうぞ。武将ジャパンに掲載していました。歴史ネタで…

よろしければご支援よろしくお願いします。ライターとして、あなたの力が必要です!