『ゴールデンカムイ』#268 一本の毒矢
虎と狼は決裂します。キロランケに背を向けたウイルクは、アシリパの幸せを願っていると言い残したのです。誰かを戦わせ、安全なところにいるのではなく、茨の道を自分で選び、幸せを掴む人間になって欲しい。
ソフィアのように……。
アイヌのために戦うこと
アシリパは理解します。アイヌのために、自分の娘を先頭に立たせるべきだと思っていたのです。ノブレス・オブリージュ思想ですね。明治以降、日本の皇族華族にも広まっています。鯉登の父が我が子を危険に晒した発想の根底にもあります。
アシリパはアイヌを守ることを口にする。カムイも、言葉も、守らなくてはならない! アシリパに対しては、杉元や尾形も、山奥でひっそりと暮らせばいいということを思っていたり、口にしています。
けれども、それすら和人の男が抱く身勝手な理想だったのかもしれない。
滅びゆくものだから、穏やかに暮らして欲しい。そういう目線は、アイヌを語る上で批判は避けられないと私もやっと学んできたんですよね。昔はナコルルの環境を守りたい純粋さに疑念がなかったのですけれども。
でも、そういうおとなしいアイヌは結局“マジカル・ニグロ”ならぬ“マジカル・アイヌ”かもしれない。
決裂
そんなアシリパに、鶴見はそのカムイを守る戦いの顛末を伝えようとします。
鶴見は有古の父・シロマクルに接触します。最初の老人目撃者です。その老人が口を割らないと、アイヌはその孫と弟を殺すと脅し始めた。孫がチカパシに似ている。彼なのでしょう。彼も家族を疱瘡で失っています。意外なところで繋がってきました。今、チカパシが樺太にいるのはよいことなのか、どうなのか?
シロマクルは、そんな脅迫に嫌気がさして仲間と別れたと告げます。アイヌは殺しを厭うのに、彼らは変わってしまったと言える。
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