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『おかえりモネ』第85回 信頼できる人になりましょう

「ごめんね、急に」 
 奈津はせつせつと、傷ついた方がいいなんて言ってはいけないと神野を諭し始めたのです。

どんな人もいるだけでいい

 傷ついて動けなくなる人もいる。
 ハッピーに生きてきたことは素晴らしい。そういう力があるということだし、周りの人にも恵まれてきた。
 人は傷つく方がいいなんてことはない。
 中身に何もなくてもいい。
 どんな人でもいるだけでいい。
 そばにいるだけでいい。

 奈津はしみじみと、神野もモネもすごい人だと言います。でも、そうなれない人のことも時々思い出してくれるといいな。そう伝えてくるのです。
 思えばいたはずの存在である宇多川や、それに奈津のような人のことをドラマは扱ってこなかったかもしれない。朝ドラも、ヒロインが成功しないと「無意味……」と言われますよね。『純と愛』とか。いろんな人がいてもいいのに。ドラマへの向き不向きはそりゃあるでしょうけど。

信頼できる人になろう

 内田は朝岡に、抜擢の理由を尋ねています。ここで朝岡の理論が展開される。
 情報をどう伝えるか? 人間の情報処理能力には限界がある。好きな人、信頼できる相手の言うことならば信頼する。伝えることのできる人とそうでない人は出てきてしまう。
「信用される人になってください」
 そう朝岡は言います。これは重要なことだし、研究が進んできて見出した知見であるとも言える。
 何度も書いているんですけど【ハロー効果】です。コロナにうがい薬が効く! そういう無茶苦茶なことでもステータスがある人が言えば信じる層は絶対に出てくる。それを悪用したらいけませんよ。テレビ業界ならばこのへんのことは詳しいでしょう。知っているけど悪用しないという、そんなことをここのところ毎回毎回、このドラマは伝えてきます。

 そして神野は吹っ切れてきた。わかってきた。
 私は何もない。何もないなりに、考える。
 感覚ではなく思考だ! そんな自分の適性に覚醒しました。
 事情があって動けない人たちも私たちは見ている。その人たちのことを一生懸命考える。
 神野は【シンパシー】から【エンパシー】へ進化した! 【シンパシー】は実体験をもとに同情したり、想像すること。だから神野は「実体験でしんどいこと味わってないから駄目だなぁ」と酷いことを言った。
 でも【エンパシー】は、想像して、相手の立場になるのです。そうすれば相手に寄り添った言動ができる。賢い神野は奈津との会話でそこに気づいたのです。
 思考型の人間はめんどくさかったりするけど、それも強み。同じことを短所とするか、長所とするか? その違いだけです!

 そのあと、モネは中継が終わるとスタジオの神野を見ます。この日の予報で、神野は霜が降りてしまった農家の気持ちに寄り添い、ショックを受けた心を気遣いました。今までのキャピキャピしたかわいらしさではなく、落ち着いた表情です。
 モネは休憩している神野を励まします。観音様のよう、慈愛に満ちていた! 感じた、それだけ! モネはちょっと語彙力が独特ですね。神野は照れ臭そうに長浦さんに褒められても……と戸惑いつつ、「ありがとう」と返します。そしてこう言います。
「いい加減、敬語やめない?」
 そうそう。このドラマは敬語をやめない人がいる。モネ、菅波、朝岡です。彼らの個性があります。

あなたの投げたものを受け止めるから

 モネは菅浦の部屋にいます。もう26日だとハンズフリー通話で言っているモネ。これで登米に引っ越しできるのかと言います。そんなことさせるために鍵を渡したわけじゃないと菅波は返してきます。見られて困るものでもあるのかとモネが言うと、ないと菅波はキッパリ返します。それはそれでおかしいと、真正面から突っ込むモネ。まあ、二股はありえないけど。菅波ってめんどくさがりだから。
 菅波はモネが怒っていると困惑中。モネは仕事をしている人、頑張っている人にそんなことはしたくないと返します。でもモネは不満がある。先生に話したいことがたくさんあるのに。
 地元に帰って、自分ができることがしたい。でも、まだ何ができるのかわからない。そうモネが言うと、菅波がこれから会うと言い出します。15分だけでも会う。忙しいけど、すぐそこまで行く。片手間にはしないと菅波は言います。

 そして二人は顔を合わせる。謎の距離感があります。距離感の取り方が独特なんですよね。菅波はたくさん話したいことをちゃんと考えて答えると言います。
「先生はずるいです、わかってるんですか」
「わかってます」
 モネの訴えに返す菅波。時間がない、それは仕方ない。離れちゃっても大丈夫。そう言い切るけど、モネは不満です。鍵なんか渡すからずっと待ってたのに。会いたかったのに。ちょっとでも顔見ると嬉しいって言ってたのに。先生はもう行っちゃうから返す。モネはそう言い、サメのキーホルダーがついた鍵を投げます。
 もののキャッチが苦手な菅波だけど、ここはちゃんと取ります。
「投げないでください」
「本当、すみません」
 菅波は言います。結論から言うと大丈夫。あなたが投げるものは、僕は全部取る。そう菅波が言うと、モネが体を投げ出してきて抱きつくのでした。
 取れてよかった――そう思う二人です。

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