『おちょやん』52 おお福助、なんであんたは福富の息子なん?
ロミオとジュリエット状態となった二人。とはいえ、それも芝居茶屋として商売敵であったから。もう福富は楽器店やし、なんとかなるやろ。そう千代は楽観視していますが。果たして?
許されぬ密会は父同士も
シズは夫の宗助をこってり絞っています。福松とこっそり会っていることが問題なのだそうです。経営が傾いとるし、相談に乗ってもらっているとか。そういえばそんな場面がありましたね。シズはうちの目が黒いうちは許さへん、今度あったら離縁すると息巻いておりす。
それをかめ、千代、一平が立ち聞きしている。シズが出てきて一喝します。
「見せ物やあらへん!」
ヒエーッ!
それにしても、このドラマは女性が強いですね。この時代特有の、家を背負う婿を取った女性らしい強気があります。こういう強さはかえって第二次世界大戦後弱くなったところはありますわな。
親心をわからぬものの擬似家族
千代は親はこの幸せを願うもんと啖呵を切っておきながら、実は親心がわかりません。母の愛はわかるけど、父となるとわからん。それはそうでしょう。なんせあのテルヲというカスでは。
一平もわからん。親の都合で母と引き離され、友達もできないまま、無理矢理芸の世界に引き摺り込まれる。そんな父も早くに亡くなった。
わからんから書きたい。貧乏な母が子を三人育てる話を台本にしています。それを演じてみたい。鶴亀家庭劇は、家族を知らないものが先頭になって作る擬似家族なのです。
それなのに、千代が稽古もあるのにキューピッド役を引き受けおった。この時代なら“月下氷人”でもええかな。千代は何をしているのかと一平はもどかしい。そううつむいて書き物をする一平の横顔が、憂いを帯びて綺麗ですね。成田凌さんが選ばれた理由がわかりますわな。こういう翳りがある役でこそ映える顔ってありますわな。
さあどうする? でも千代の言い分もわかる。四年前に助けてくれたみつえに恩返ししたい。千代なりに、岡安で家族を作りたい気持ちはある。そういう心を通してこそ、劇も生々しくなるちゅう考え方もできますわな。それでも一平はぶっきらぼうに言います。
「あかんもんはあかん!」
「ドケチ!」
千代はすかさずそう返すわけですが。
でもこんなことしとったら、お互い、疑似家族として近くなりますよね。おっ? こうした二人は近づいていくのですね。
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『週刊おちょやん武者震レビュー』
2020年度下半期NHK大阪朝の連続テレビ小説『おちょやん』をレビューするで!週刊や!(前身はこちら https://asadrama.c…
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