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それでも『ゴールデンカムイ』はまだ……

 『ゴールデンカムイ』と関係ないかもしれませんが。

日本のフィクションで満洲を扱うこと

 『ゴールデンカムイ』では鶴見の野望として出てきた満洲。鶴見個人をくじいても、結局は大日本帝国は満洲国を建設し、そこから破滅へ突き進むともいえるわけです。鯉登と月島も帝国軍人として関わらなかったとも言えない。

 ただ、あくまでそこでとどめたからよいといいますか。

 満洲こそ日本のフィクションで遊び半分に扱っていいとは思えない史実です。

阿片

 鶴見はケシの花を背負って、阿片のことをきっちりとにおわせています。二階堂が有坂から処方されていたのは覚醒剤で、ギャグっぽく描かれているけどあれはえげつない。日本人は死を賭した出撃に際してああした薬物を処方されたり、疲労を隠して働くために打たれたわけでして。

 その満洲と阿片を扱った漫画の広告がありました。嫌な予感しかしないけれども、無料の一話だけでも読みましたが。

 いや、バナーの時点でいけない。覚悟を持ったものだけがどんな時代でも生き残れるとか、そういう褒めるニュアンスで麻薬密売に手を染める主人公を喧伝するわけですが。
 麻薬密造と販売の“覚悟”ってなんですか? 『ゴールデンカムイ』の鶴見のケシの花は肯定的な描かれ方ではなかったぶんマシだと思いました。

 そして本編は、冒頭からして溥儀の皇后・婉容(えんよう)が糞便に塗れて死んだというつかみ。このコマで彼女は尻の割れ目が見え、そこから糞便が垂れ流されているアングルで描かれています。
 これが皇后を描くうえで必要なアングルなのでしょうか? 意図は理解できなくもありませんが、尊厳があまりになさすぎる。清朝は過去の遺物だからこういうことをしてよいのですか?

 それ以外にも考証も甘さが見えてなんとも。

 満洲でアヘン売り捌いていることにビカレスクロマンを見出すなんて、現代人からすれば一周回って「だれもやらねえことやっちまった!」気分かもしれないけれども。タブーにされたのはそれだけの理由があるわけでして。
 満洲国がらみにせよ『流転の王妃』あたりにとどまったことには理由があります。

 こういうフィクションを楽しむということは、日本は反省していないというスタンスを喧伝することにもなる。そういうフィクションを楽しむことには慎重になるべきでしょう。単行本を後で怒りとともに叩き売るのは嫌ではないですか? 楽しんだ時間は取り戻せないし。

 そうならないよう慎重になる必要もあるでしょうね。

 満洲だの、川島芳子だの。軽い気持ちでエンタメにしてよいとは思えません。するにせよ、最低限の敬意は必要でしょうに。
 タイトルはあえてあげません。打ち込むのも嫌ということもあるけれども。

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『ゴールデンカムイ』アニメ、本誌、単行本感想をまとめました。無料分が長いので投げ銭感覚でどうぞ。武将ジャパンに掲載していました。歴史ネタでより楽しめることをめざします。

『ゴールデンカムイ』アニメ、本誌、単行本感想をまとめました。無料分が長いので投げ銭感覚でどうぞ。武将ジャパンに掲載していました。歴史ネタで…

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